[スポンサーリンク]

化学者のつぶやき

ChemDrawの使い方【作図編③:表】

[スポンサーリンク]

これまでに基本機能作例①:反応スキーム作例②:触媒サイクルの書き方を紹介してきました。

今回は『表(Table)』をChemDrawで綺麗に書く方法を紹介します。

 

よくある失敗:改行コードを入れてしまう

科学には対照実験がつきもの。明確に記すには、表組みで見せることが必要です。

しかしながら、最初から綺麗な表が書ける人は多くありません。特に経験の浅い学部生・修士院生などは、どうやっても綺麗に書けないやり方で組んでしまっています。よく見かけるのが下図のパターン上のような作例です。勿論情報量はちゃんとあるのですが、なんだか落ち着かないですよね。

ChemDraw_HowTo_30

初心者が一番やりがちなマチガイは、各テキストボックスに「改行」を入れ込んだうえで作ってしまうというものです。例をもとに説明してみましょう。

ChemDraw_HowTo_32

各テキストボックスには改行コードを入れ込むことが出来ます。これで複数行を並べてしまえば、なんとなくちゃんとした表になってくれそうです(左)。

普通のテキストであれば問題ないのですが、ChemDrawの場合は事情が特殊です。上付き・下付き文字修飾を施してしまうと行間が狂ってしまうのです(右)。化学式を並べることが多いため、本当に良く起こります。これはソフトの仕様なので、今のところどうしようもありません。

そもそも改行コードでの行送りは、行間をコントロールすることも非常に難しいです。適当にゆとりを持たせて見栄えの良い表組みにすることが、そもそも難しいやり方といえます。

解決法と作例

以上を踏まえた上での解決法ですが、至極シンプルです。要は全ての項目を別々のテキストボックスで書き、あとで整列させれば良いだけです。

ここで大活躍するのが『Ctrl+Shift+ドラッグ』。垂直・水平位置を保ったままコピペ先を選べる機能です。非常に便利なので覚えておきましょう。
では具体的な作り方です。

①まずは罫線を適当にコピペで作ります。

横幅・間隔などはあとから変えることが出来ますので、とりあえず適当で構いません。

ChemDraw_HowTo_34
②つづいて1行目を書き入れます。

既に述べたとおり、各項目を別々のテキストボックスに分割して書くのがポイントです。1つにまとめてスペースなどで間隔を作ろうとするのはNG。後々困ることになります。各ボックスの整列は、右クリックメニューの『Align』から行ってください。

ChemDraw_HowTo_35

③1行目のテキストボックス達を必要数コピペします。

『Shiftキー+クリック』でまとめて選択し、そのあと『Ctrl+Shift+ドラッグ』です。なるべく等間隔に見えるようコピペしてみてください。

ChemDraw_HowTo_36

④各テキストボックスの内容を必要に応じて書き換えます。

上付き/下付き処理も適宜施します。テキストボックスが分離されているので、他の項目に影響を与えることはありません。

ChemDraw_HowTo_37

⑤各要素をAlign機能で配列させます。

左/中央/右揃えそれぞれありますが、見やすいものを適切に選んでください。複数選択は同様に『Shift + クリック』で。

ChemDraw_HowTo_38

⑥位置の微調整と飾り付けを行います。

これは多分に好みですが、やっておくと明らかに良いこともあります。
たとえばentry欄の2aという文字は、主役の数字がでこぼこして見えないように少し右に寄せています。comment欄はそのままだと罫線から右にはみ出してしまうので、中に詰めました。バランスを取るためyield欄も動かしました。

ChemDraw_HowTo_39

この辺りのデザインセンスは個々人に大きく依存するようですが、整ったものを作るだけなら経験を積めばなんとかなる部分も沢山あり、存外難しくありません。諦めてしまう必要は無く、ポイントをもれなく押さえるだけで大丈夫です。

慣れないうちはデザインセンスのある先生や先輩達に見てもらい、フィードバックを貰うのが一番よいと思います。

⑦これで見事完成!です。

ChemDraw_HowTo_31

研究は見た目じゃない!中身こそが重要だ!・・・そういった意見もごもっともなのですが、昨今においてその大半は『見やすい作図が自分で出来ないことの言い訳』にしか聞こえないように感じます。

綺麗な図表・汚い図表それぞれでプレゼンされたとして、研究が同程度に素晴らしかったとしましょう。人はどっちを評価するでしょうか?これは火を見るよりも明らかで、人間心理として仕方ないともいえるでしょう。先端領域では誰もがギリギリの差で勝負をしているので、そんな”ちょっとしたところ”でものごとの成否が決まることも珍しくないように思えます。

無理して凝ったものを作る必要はありませんが、努力で身につけられる『見やすい図表の作り方の基本』ぐらいは早めに押さえておきたいところですね。

関連書籍

Avatar photo

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. 日本語で得る学術情報 -CiNiiのご紹介-
  2. 映画「分子の音色」A scientist and a music…
  3. アブラナ科植物の自家不和合性をタンパク質複合体の観点から解明:天…
  4. SNS予想で盛り上がれ!2020年ノーベル化学賞は誰の手に?
  5. ミツバチに付くダニのはなし
  6. 「無保護アルコールの直截的なカップリング反応」-Caltech …
  7. 大学生向け”オイシイ”情報の集め方
  8. Excelでできる材料開発のためのデータ解析[超入門]-統計の基…

注目情報

ピックアップ記事

  1. 超分子化学と機能性材料に関する国際シンポジウム2018
  2. クレーンケ ピリジン合成 Kröhnke Pyridine Synthesis
  3. ヒバリマイシノンの全合成
  4. 【化学×AI・機械学習クラウド】実験科学者・エンジニア自身が実践するデータサイエンス/データケミカル株式会社
  5. サンギ、バイオマス由来のエタノールを原料にガソリン代替燃料
  6. ポンコツ博士の海外奮闘録⑩ 〜博士,中和する〜
  7. 【速報】2017年のノーベル生理学・医学賞は「概日リズムを制御する分子メカニズムの発見」に!
  8. 四置換アルケンのエナンチオ選択的ヒドロホウ素化反応
  9. Evonikとはどんな会社?
  10. 花王の多彩な研究成果・研究支援が発表

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2015年5月
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031

注目情報

最新記事

2024年の化学企業グローバル・トップ50

グローバル・トップ50をケムステニュースで取り上げるのは定番になっておりましたが、今年は忙しくて発表…

早稲田大学各務記念材料技術研究所「材研オープンセミナー」

早稲田大学各務記念材料技術研究所(以下材研)では、12月13日(金)に材研オープンセミナーを実施しま…

カーボンナノベルトを結晶溶媒で一直線に整列! – 超分子2層カーボンナノチューブの新しいボトムアップ合成へ –

第633回のスポットライトリサーチは、名古屋大学理学研究科有機化学グループで行われた成果で、井本 大…

第67回「1分子レベルの酵素活性を網羅的に解析し,疾患と関わる異常を見つける」小松徹 准教授

第67回目の研究者インタビューです! 今回は第49回ケムステVシンポ「触媒との掛け算で拡張・多様化す…

四置換アルケンのエナンチオ選択的ヒドロホウ素化反応

四置換アルケンの位置選択的かつ立体選択的な触媒的ヒドロホウ素化が報告された。電子豊富なロジウム錯体と…

【12月開催】 【第二期 マツモトファインケミカル技術セミナー開催】 題目:有機金属化合物 オルガチックスのエステル化、エステル交換触媒としての利用

■セミナー概要当社ではチタン、ジルコニウム、アルミニウム、ケイ素等の有機金属化合物を“オルガチッ…

河村奈緒子 Naoko Komura

河村 奈緒子(こうむら なおこ, 19xx年xx月xx日-)は、日本の有機化学者である。専門は糖鎖合…

分極したBe–Be結合で広がるベリリウムの化学

Be–Be結合をもつ安定な錯体であるジベリロセンの配位子交換により、分極したBe–Be結合形成を初め…

小松 徹 Tohru Komatsu

小松 徹(こまつ とおる、19xx年xx月xx日-)は、日本の化学者である。東京大学大学院薬学系研究…

化学CMアップデート

いろいろ忙しくてケムステからほぼ一年離れておりましたが、少しだけ復活しました。その復活第一弾は化学企…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP