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次なる新興感染症に備える

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前回述べたとおり、ネイチャー・パブリッシング・グループ(NPG)の出版している日本語の科学まとめ雑誌である「Natureダイジェスト」から個人的に興味を持った記事を定期的に紹介していきたいと思います*。

なお、本記事のタイトルは今月号(11月号)の特集記事のタイトルです(画像出典:Natureダイジェスト)。

 

世界最悪のニュース

2014年7月、エボラウィルスに感染したリベリア人男性が空路でナイジェリアのラゴスに到着したことが判明したとき、世界中の公衆衛生の専門家は息をのんだ

Natureに掲載された”How to beat the next Ebola”(DOI:10.1038/524022a)の翻訳記事から。丁度1年前に起こった、エボラ出血熱のアウトブレイクの状況から紹介しています。ラゴスはアフリカ最大の国際空港。つまり、エボラが国際線の乗客から世界に拡散してしまうという危惧がありました。そのため、記事中でも「エボラ」「ラゴス」の2単語が入ったニュースは「世界最悪のニュース」と評されています。

 

「エボラ」「ラゴス」の2単語が入った新聞(出典:CTV News 2014年7月)

「エボラ」「ラゴス」の2単語が入った新聞(出典:CTV News 2014年7月)

 

「喉元過ぎれば熱さを忘れる」とはよく言うもの。あれほど世界を恐怖に陥れたエピデミック(大流行)も既に忘れていた人も多いことでしょう。個人的にはScience誌に2014年に発表されたエボラ出血熱に関する論文(DOI: 10.1126/science.1259657)において、その著者5人がすでにエボラ出血熱に感染し亡くなっていたということに衝撃を受けたのを覚えています(追悼記事)。感染症は空気感染がもっとも広まりやすいのは周知のとおりであり、最近では、韓国で死者も出した中東呼吸器症候群(MERS)コロナウィルスでしょうか。最も身近なものは新型インフルエンザウィルスです。

記事では、これら新興感染症の脅威と、その対策(ワクチン、治療薬など)について詳しく記載しています。

 

ごくありふれた物質が最高温度で超伝導

(出典:Nature )

(出典:Nature ダイジェスト)

 

硫化水素(H2S)を超高圧下におくと、マイナス70℃という”高温”で超伝導状態となる」という驚くべき発見に関する記事 (DOI: 10.1038/nature.2015.18191)。高温といっても、マイナス70℃と思う人もいるかもしれませんが、高温超伝導と呼ばれる範囲が–200〜–100℃程度であるので、とっても”高温“。

液体窒素の沸点以下(マイナス195℃以下)をクリアし、現在の最高温度は–110℃程度。それを一挙に40℃も更新。ドライアイス(約マイナス80℃)でつくれる超伝導物質ということで、本研究は分野外の筆者にとっても非常にインパクトのあるものでした(高圧が必要なのでそう簡単にはつくれませんが)。

記事では、この研究を報告したドイツのマックスプランク研究所Mikhail Eremets以外の研究チームによって実験的に再現できることが重要であることを述べてます。

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Mikhail Eremets

この再現実験に取り組んでいる日本の研究者が大阪大学の清水克哉教授。「圧(お)してダメならもっと圧(お)せ!」を合言葉に、極限超高圧という圧力で物質がどういう性質をもつのか?変わるのか研究しています。

その圧力はなんと100万気圧以上。全く想像できませんね。いろいろな化学反応を試してみたい衝動に駆られました。

 

ギリシャの研究費事情

2015年7月、実質的なデフォルト(債務不履行)によりギリシャの銀行は一斉に営業を停止しました。そもそも国が借金でクビが回らなくなるという状況は現状の日本ではあまり想像ができませんね(近い将来可能性はありますが…)。

そんな時、基本的に国から研究助成をうけている研究者はどうなるのでしょうか?そんなギリシャの研究者たちの研究費事情について書かれた記事です(DOI: 10.1038/524273a

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記事によると、いうまでもなく大変であった様子。論文のリバイスの為に、実験を行おうとしても、実験キットが購入できない。ギリシャ国外への送金ができないからだ。外国に知り合いがいれば、なんとかお願いしてできますが、通常は困難な状況。著名なレーザー物理学者で、ギリシャの研究相であるCostas Fotakisにインタビューする形の記事となっています。

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Costas Fotakis(出典:WiRE 2014 CONFERENCE)

 

その他ー執筆者インタビュー

実は今月号のNatureダイジェストには筆者のインタビューも掲載されています。定期的にNatureおよびNature関連誌は執筆者にインタビューを行っており、今回幸運にも選んでいただきました。Nature Chemistryからは初のインタビューだそうです。本インタビュー記事は購読していなくても無料でみられるので、興味がある方は御覧ください。(記事:「プログラム合成」で、究極の構造多様性を征服する)。ちなみに、聞き手はケムステ読者ならおそらくご存知の佐藤健太郎さんです。

取材の時に折角とってもらったのに使われなかった写真から1枚

取材の時に折角撮影してもらったが使用されなかった写真から1枚

 

学生への購読のススメ。教員の授業雑談としても

さて、今回もNatureダイジェストの一部の内容について紹介しましたが、前回も記載したとおり、異分野英語に悩まされずに日本語で読めるのが利点です。寝る前のひとときにもスラっと読むことができました。

前回は、研究者の研究の”タネ”をみつけるために有効だと述べましたが、分野の壁に縛られそうになっている学生さんにもオススメです。もちろん目の前の研究テーマに没頭するのはありですが、”学んで生きる”学生さんは将来の無限の可能性を消すことなく、幅広い科学を学ぶべきだと思います。

また、大学教員の皆様には教材としての利用もよいのではないでしょうか。自分の経験から、教科書に載っていない先生の「雑談」をお今でもよく覚えています。「化学で考えるとどうなるか?」と、記事を題材にして語ってみるのも一興だと思います。興味のある方はぜひ購読を!

 

*本記事はNatureダイジェストの内容を筆者が個人的な感想を含めて紹介したものであり、記事自体の内容とは異なります。

 

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Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

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