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医薬品

18F-FDG(フルオロデオキシグルコース)

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構造

グルコースの2位の水酸基を18フッ素で置換したものが18F-FDG(フルオロデオキシグルコース)。自然界に存在するフッ素は100%19Fのため、18Fは人工的に作られる。半減期は108分で、ほとんどが陽電子を放出して安定な18Oに変化する。この性質を利用して18F-FDGはPET(Positron Emission Tomography)診断に利用されている。

 

合成方法

上述のように18Fは天然に存在しないため、18Oの水に陽子を照射する。すると原子番号が一つ増え水素が脱離し、H18F=弗酸となる。このH18FをK18Fに変換しMannose triflateに反応させることで18F-FDGが合成される。

untitled2

K18Fの合成方法

FDG_synthesis

18Fの半減期は、108分しか無いので試薬の保存は効かない。そのため、自動合成装置を用いて病院で合成されているようである。

 

PET診断の原理

PET診断では、PETカメラと呼ばれる検出器で体内の18F-FDGの分布を調べます。18Fから放出された陽電子はすぐに周囲の電子と結合しγ線を放出します。このγ線の発生位置を検出するのがPETカメラの役割です。18F-FDGはグルコースと同様にグルコーストランスポーターを介して細胞内に取り込まれます。その後ヘキソキナーゼによりリン酸化を受けますが、グルコースと 異なりその後の代謝を受けないことから、リン酸化体として細胞内に滞留します。がん細胞の場合は、他の細胞よりも増殖スピードが早いためその分たくさんのグルコースを取り込みます。そのため、18F-FDGも多く取り込まれ、PETカメラによってがん細胞の位置を特定されます。

 

PET診断イメージ図

PET診断イメージ図

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外部リンク

 

 

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ただの会社員です。某企業で化学製品の商品開発に携わっています。社内でのデータサイエンスの普及とDX促進が個人的な野望です。

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