[スポンサーリンク]

スポットライトリサーチ

1つの蛍光分子から4色の発光マイクロ球体をつくる

[スポンサーリンク]

第53回のスポットライトリサーチは、筑波大学院数理物質科学研究科 物性・分子工学専攻 博士課程1年の岡田大地さんにお願いしました。岡田さんが所属する山本研究室では、π共役分子や生体分子からなる超分子ナノ構造体の構築と、それらの光電子機能やエネルギー変換に関する研究を行っています。今回紹介する成果は、複数の発光パターンを持つポリマー球体の合成に関するものであり、ACS Nanoおよびプレスリリースに報告されました。

“Color-Tunable Resonant Photoluminescence and Cavity-Mediated Multistep Energy Transfer Cascade”
Daichi Okada, Takashi Nakamura, Daniel Braam, Thang Duy Dao, Satoshi Ishii, Tadaaki Nagao, Axel Lorke, Tatsuya Nabeshima, and Yohei Yamamoto, ACS Nano 2016, 10, 7058. DOI: 10.1021/acsnano.6b03188

また、研究室の主宰者である山本洋平先生から、本論文の第一著者である岡田さんについて、以下のようにコメントをいただいています。

「岡田大地君は、ダンスとバスケと筋トレが大好きな、マッチョ系の学生です。研究に関しても持ち前の体力を存分に発揮し、気づかないうちに実験結果をだしているという凄腕の持ち主です。研究者としての資質は十分持ち合わせていると思うので、今後の成長を大きく期待しています。」

Q1. 今回のプレス対象となったのはどんな研究ですか?簡単にご説明ください。

単一の蛍光色素を用い、緑、黄、橙、赤の発光色を示すマイクロサイズのポリマー球体を作成しました。この特殊な発光パターンは、色素分子の初期濃度の違いにより、色素の凝集状態が変化することで生じます。またこのポリマー球体で生じた発光は球体内部に閉じ込められ、自己干渉により光が共鳴し、特異な発光スペクトル(“ささやきの回廊”発光)を示します。そこで、球体同士を連結し、一端を光励起したところ、光エネルギーが接点を介して隣の球体に伝わり、発光波長が変換されることを見出しました。原理的には、共振器内部に閉じ込められた光による共鳴エネルギー移動(FRET)といえますが、通常のFRETは移動距離が10 ナノメートル程度であるのに対し、光を共振器内部に閉じ込めることで数マイクロメートル(数百倍!)にわたり光エネルギーを伝えることができます。

岡田大地fig1

Q2. 本研究テーマについて、自分なりに工夫したところ、思い入れがあるところを教えてください。

発光色の異なる球体を望みの配列で連結するマニピュレーション操作に、一番思い入れがあります。数ミクロンの球体の微小操作は静電気との戦いで、一つの配列を作るのに数時間かかることもありましたし、数時間かけて作製した連結構造が、最後の最後で壊れてしまうこともあり、とても苦労しました。この実験は、ドイツの共同研究先に一ヶ月間訪問して行いました。初めてのドイツで、いろいろなトラブルに直面しましたが、最終的には納得のいく結果が得られました。

岡田大地fig2

Q3. 研究テーマの難しかったところはどこですか?またそれをどのように乗り越えましたか?

マニピュレーターによる球体操作も難しかったのですが、そもそも多色発光自体、実験を進めている中で偶然見つかったもので、はじめはなぜ同一の蛍光色素から異なる発光が生じるのかが分かりませんでした。また、選択的にそれぞれの発光色を示す球体を作成するための手法の探索にも時間を費やしました。様々な析出法を試み、析出条件を細かく調べることで、最終的に望みの発光色を示す球体の選択的な作製方法を見つけました。

 

Q4. 将来は化学とどう関わっていきたいですか?

社会的に影響力があるような研究に携わっていきたいです。自分の専門分野に限らず、多くの研究分野に興味をもち、自分の知識と経験をどんどん増やして、将来の科学の発展のために生かしていきたいです。また、何より研究を楽しむことを大事に、元気に活発に研究に取り組んでいきたいと思います。

 

Q5. 最後に、読者の皆さんにメッセージをお願いします。

もしどこかで私を見ることがありましたら、「読んだよ!」と声かけて頂けたらとても嬉しいです。偶然見つけた普段とは違う変化や、興味深い現象など、運的な要素での発見というのは、研究を行う上で非常に大切なことだと思います。そのようなきっかけを見逃さず、一度食い付いたら離さない、これが私が山本研究室で学んだことです。エキサイティングな研究を目指して、共に邁進しましょう!

関連リンク

 

研究者の略歴

岡田大地fig3岡田 大地 (おかだ だいち)

所属 筑波大学院数理物質科学研究科 物性・分子工学専攻 博士後期課程1年

日本学術振興会特別研究員 DC1

研究テーマ:蛍光性ポリマー球体によるフォトニック材料の創生

略歴 : 1992年岐阜県多治見市生まれ。2014年筑波大学応用理工学類を卒業後、同年筑波大学院数理物質科学研究科 物性・分子工学専攻(山本研究室)に入学。2016年に博士前期課程を修了し、同年博士後期課程へ進学。

Orthogonene

投稿者の記事一覧

有機合成を専門にするシカゴ大学化学科PhD3年生です。
趣味はスポーツ(器械体操・筋トレ・ランニング)と読書です。
ゆくゆくはアメリカで教授になって活躍するため、日々精進中です。

http://donggroup-sites.uchicago.edu/

関連記事

  1. サイエンス・コミュニケーションをマスターする
  2. 鉄触媒での鈴木-宮浦クロスカップリングが実現!
  3. 「オプジーボ」の特許とおカネ
  4. 禅問答のススメ ~非論理に向き合う~
  5. インフルエンザ対策最前線
  6. 高効率な可視-紫外フォトン・アップコンバージョン材料の開発 ~太…
  7. 唾液でHIV検査が可能に!? 1 attoモル以下の超高感度抗体…
  8. シクロファン+ペリレンビスイミドで芳香環を認識

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. マルチディスプレイを活用していますか?
  2. 光照射によって結晶と液体を行き来する蓄熱分子
  3. ヘリウム新供給プロジェクト、米エアプロダクツ&ケミカルズ社
  4. シラフルオフェン (silafluofen)
  5. 「フラストレイティド・ルイスペアが拓く革新的変換」ミュンスター大学・Erker研より
  6. ヘキサニトロヘキサアザイソウルチタン / Hexanitrohexaazaisowurtzitane (HNIW)
  7. ジェフ・ボーディ Jeffrey W. Bode
  8. ケムステ記事ランキングまとめ
  9. 第3のエネルギー伝達手段(MTT)により化学プラントのデザインを革新する
  10. ククルビットウリル Cucurbituril

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

注目情報

注目情報

最新記事

有機合成化学協会誌2021年1月号:コロナウイルス・脱ニトロ型カップリング・炭素環・ヘテロ環合成法・環状γ-ケトエステル・サキシトキシン

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2021年1月号がオンライン公開されました。あ…

第137回―「リンや硫黄を含む化合物の不斉合成法を開発する」Stuart Warren教授

第137回の海外化学者インタビューはスチュアート・ウォーレン教授です。ケンブリッジ大学化学科に所属し…

吉岡里帆さん演じる「化学大好きDIC岡里帆(ディーアイシーおか・りほ)」シリーズ、第2弾公開!

印刷インキや有機顔料世界トップシェアのDIC株式会社は、2021年1月より、数々のヒット作に出演し、…

第14回ケムステVシンポ「スーパー超分子ワールド」を開催します!

ケムステーションをご覧の方々、あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます…

【日産化学】新卒採用情報(2022卒)

―ぶれずに価値創造。私たちは、生み出し続ける新たな価値で、ライフサイエンス・情報通信・環境エ…

高分子鎖デザインがもたらすポリマーサイエンスの再創造|オンライン R2

詳細・お申込みはこちら日時令和3年 2月18日、25日(木) 基礎編        …

化学者のためのエレクトロニクス講座~電解で起こる現象編~

化学者のためのエレクトロニクス講座では半導体やその配線技術、フォトレジストやOLEDなど、エレクトロ…

超合金粉末の製造方法の改善に機械学習が試行される

NIMS は、機械学習を適用することで、航空機エンジン用材料として有望な Ni-Co 基超合金の高性…

Chem-Station Twitter

PAGE TOP