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有機合成化学協会誌2017年11月号:オープンアクセス・英文号!

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今月もこの日がやってきました!有機化学合成協会が発行する有機合成化学協会誌の発行日!今月11月号はオープンアクセスの英文号になっています。

年に一度の号にふさわしく、著者の方々はとっても豪華な顔ぶれです。今回も、会員の方ならばそれぞれの画像をクリックすればJ-STAGEを通してすべてを閲覧することが可能です。それではご覧ください!

Total Synthesis of Palau’amine


難波康祐(徳島大学大学院医歯薬学研究部)、竹内公平、海原由香里、谷野圭持(北海道大学大学院理学研究院)

高度に官能基化された構造のPalau’amineを独自の合成戦略で合成した、独創的な全合成である。なかでもABDEの4員環骨格をカスケード反応によって、一挙に構築する反応には合成の華がある。今後の構造活性相関研究も期待される。

ケムステでもスポットライトリサーチで取り上げさせていだたいた研究です。記事:海洋天然物パラウアミンの全合成

Formal Total Synthesis of (–)-Taxol


宇津木雅之、岩本充広、平井 祥、河田発夫、中田雅久(早稲田大学大学院先進理工学研究科)

まだまだ見つかる新しい変換!タキソールの合成は発見の宝庫!早稲田大学の中田らによるタキソールの全合成には、全合成のエッセンスと複雑天然物の全合成ならではの「火事場のくそ力」が詰まっています。

Synthetic Studies on Heteropolycyclic Natural Products: Strategies via Novel Reactions and Reactivities

下川 淳福山 透(名古屋大学大学院創薬科学研究科)
計6種のアルカロイド、アルカロイドコア構造の精密化学合成に関する論文である。著者らのオリジナル反応やユニークな反応性に立脚した天然物合成であり、戦力立案のポイントなどが簡潔にまとめられている。

こちらも、研究の一部をケムステスポットライトリサーチで取り上げさせていただきました。併せて御覧ください。記事:脱芳香化反応を利用したヒンクデンチンAの不斉全合成

Enolate-Based Strategies to Construct gem-Difluoromethylene Compounds


網井秀樹(群馬大学大学院理工学府)

有機フッ素化合物合成の雄である網井研究室で開発されたエノラート法を基軸とするgem-ジフルオロメチレン化合物の合成に関する総説である。ジフルオロメチルケトン,イミン,アセテートの合成等価体として,ジフルオロエノールシリルエーテルとその誘導体を用いた斬新かつ有用な有機フッ素化合物反応の詳細が記載されている。

Cross-Coupling Reactions by Cooperative Metal Catalysis

仙波一彦中尾佳亮(京都大学大学院工学研究科)
二つが協力しながら自らの仕事を見事成し遂げた時、新しいモノが生まれる。

言うは易し行うは難しで、二つの金属触媒が確実に自分の仕事をこなし、さらに協力しなければ反応は全く進行しません。今回筆者らは、2つの金属として、銅/パラジウムおよび銅/ニッケルの組み合わせを選び、銅触媒をNHC配位子によって「固定」しました。そして、求核性の高いアルキンと銅を反応させ,パラジウム/ニッケル触媒により求電子剤と反応させることによって数々の新型クロスカップリング反応の開発に成功しています。

The Design of Environmentally-Benign, High-Performance Organocatalysts for Asymmetric Catalysis

坂本 龍丸岡啓二(京都大学大学院理学研究科)

有機触媒開発の雄である丸岡研究室で開発された様々な有機触媒に関する総説である。丸岡触媒®として現在広く普及し、また工業プロセスにも用いられている四級アンモニウム塩のみならず、ビナフチル型第二級アミン触媒、さらには有機硫黄ラジカル触媒を用いた斬新かつ有用な不斉反応の詳細が記載されている。

有機硫黄ラジカル触媒に関してはケムステでも取り上げさせていただきました。記事:有機硫黄ラジカル触媒で不斉反応に挑戦

Oxide-Supported Palladium and Gold Nanoparticles for Catalytic C–H Transformations

石田玉青(首都大学東京都市環境学部)、Zhenzhong Zhang、村山美乃、徳永 信(九州大学大学院理学研究院)

本総合論文では、担持パラジウムおよび金触媒による数々のC-H官能基化反応(シクロヘキサノンの酸化、脱カルボニル化、アリル位酸化、ワッカー酸化、ホモカップリング)が紹介されている。固体触媒構造の精密制御により、多様な形式のC-H活性化過程が可能となった。本論文では、当該分野の先導的研究者でもある著者の研究成果がわかりやすく纏められ、読み応えのある、大変興味深いものとなっている。

A Synthetic Challenge to the Diversity of Gangliosides for Unveiling Their Biological Significance

安藤弘宗、河村奈緒子、今村彰宏、木曽 真、石田秀治(岐阜大学応用生物科学部)

最高峰の糖脂質合成がここにある!グリコシル化反応を単なるエーテル結合形成反応などと侮るなかれ。世界を見渡しても、シアル酸を含む糖鎖・糖脂質の合成でこのグループ以上の実績を有する研究室は存在しない。そこには歴史に裏付けられた糖鎖合成のための有機合成化学が存在する。

Constrained Peptides in Drug Discovery and Development

Douglas R. Cary、大内政輝、Patrick C. Reid、舛屋圭一(ペプチドリーム株式会社

ペプチド創薬の分野で世界をリードするPeptiDream社の研究者によって執筆された論文です。本論文ではペプチド創薬の歴史、最近の潮流、競合技術との比較が分かり易く述べられており、著者らが開発してきた最新のペプチド創薬プラットフォームシステムが紹介されています。

Phosphole P-Oxide-Containing π-Electron Materials: Synthesis and their Use for Fluorescence Imaging

山口茂弘深澤愛子多喜正泰名古屋大学WPI-トランスフォーマティブ生命分子研究所

典型元素固有の効果を巧みに活かすことにより、有用な機能性分子を創り出すことができる。その一つとして、リンオキシド(P=O)を導入したπ電子系の合成と蛍光イメージングへの展開を紹介する。電子求引性に富んだP=Oの導入とπ骨格の平面固定化により、超耐光性ともいえる特性を付与でき、超解像STED顕微鏡の3Dイメージングを実現する蛍光色素の開発に成功した。

巻頭言:Status of Industrial Researchers

今月号の巻頭言は、米国メルク社プロセス化学研究所上級主席研究員の安田 修祥 博士による巻頭言です。”Status of Industrial Researchers”と題して、日本企業と米国企業における研究者の立場の違いや、昨今世間を賑わせている労働者の過労死問題について、企業研究者としてのご意見を述べてくださっています。

安田博士はちょうど先日筆者の大学にも講師として来てくださり、プロセス化学やメルク社の歴史、企業研究者とはどのような仕事かについて熱く講演してくださいました。筆者も一緒に聴きに行った学生も、安田さんの語られる化学の美しさに感動し、また研究者としてのあり方に深く感銘を受け、ご講演が聴けて本当に貴重な経験をしたと思っております。巻頭言から安田博士の哲学を感じることができます。みなさんもぜひお読みください!

安田 修祥 博士

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博士(理学)。大学教員。娘の育児に奮闘しつつも、分子の世界に思いを馳せる日々。

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