[スポンサーリンク]

ケムステしごと

アミン化合物をワンポットで簡便に合成 -新規還元的アミノ化触媒-:関東化学

[スポンサーリンク]

アミン化合物は医薬品、農薬などの生理活性物質をはじめ、ポリマーなどの工業材料に至るまで様々な化学物質に含まれる重要な化合物です。

これらを合成する方法として、カルボニル化合物からワンポット一段階でアミンを得る還元的アミノ化反応が知られていますが、これらに使用するヒドリド試薬による還元や固体触媒による水素化は工業的使用に問題が残ります。

例えばNaBH3CN, NaBH(OAc)3, pyridine-borane等のヒドリド還元剤には毒性を持つものが多くあり、当量還元剤であるが故廃棄物量が多いことや爆発性の問題もありました。

また、パラジウムや白金などの固体触媒による水素化は耐圧容器を必要とするため設備上の制約があり、ニトロ基やシアノ基などの官能基が損なわれる問題がありました。さらに、第一級アミンの合成となると、実用性が高い簡便な方法はほとんど知られていないのが現状でした。以上のように、還元的アミノ化反応は古くから知られている重要な反応ではあるものの、環境調和性や安全性に配慮し、操作性に優れた方法はあまり知られておらず、改良の余地が残されていました。

このような状況の中、当社は実用性に優れた水素移動型の還元的アミノ化触媒、すなわちピコリンアミドを配位子にもつCp*イリジウム錯体(Ir-PA cat.)、および8-キノリノールを配位子にもつCp*イリジウム錯体(Ir-QN cat.)を見出しました。

現在、5種類のIr-PA触媒と2種類のIr-QN触媒を製品化し、試薬として販売しています。

当社で製品化している還元的アミノ化触媒

 

これらの触媒は配位飽和な18電子錯体であり、水や空気に対して安定です。このため触媒を仕込む際には大気中で秤量が可能であり、その他特別なテクニックを必要としない。取り扱い容易なギ酸、またはギ酸塩を水素源とし、穏和な条件で触媒反応を実施できることから、通常の反応釜で反応が行えるメリットがあります。

Ir-PA触媒とIr-QN触媒はそれぞれ合成可能なアミンの種類が異なり、Ir-PA触媒は第一級アミンの合成に、Ir-QN触媒は第二級アミンや第三級アミンの合成に適しています(スキーム1)。

Ir-PA触媒を用いる第一級アミンの合成では、基質、ギ酸アンモニウム、溶媒(多くの場合、メタノールが有効)、および酢酸(基質によってはギ酸も使用可)を混合し、60℃から溶媒の沸点に合わせて加熱攪拌すれば良い。

Ir-QN触媒を用いる第二級、第三級アミンの合成では、基質、溶媒(各種溶媒が使用可)、およびギ酸を混合し、30℃から60℃程度で加熱攪拌すれば良い。

注意点として、水素源がギ酸であることから反応の進行に伴って二酸化炭素が放出されるため、密閉系での反応は避ける必要があります。

スキーム1

 

カルボニル化合物の種類に応じてこれらの触媒を使い分けることによって最適な結果が得られます。

例えば、第一級アミンを合成する場合は、最初に幅広い基質適応性を示すIr-PA1触媒の使用を推奨します。副反応が少なく良好な収率で第一級アミンが得られた場合は、次にIr-PA触媒の中で最も高活性なIr-PA2触媒を、カルボニル基近傍が立体的にかさ高く第一級アミンの収率が低い場合はIr-PA2触媒およびIr-PA3触媒を、アルコール体の副生が多い場合はIr-PA4触媒やIr-PA5触媒をそれぞれ使用することにより、第一級アミンの収率を効果的に向上させることが可能になります。

官能基許容性も高く、ハロゲン基、シアノ基、ニトロ基等の官能基を損なうことが無い。具体例をあげると、アセトフェノンは、Ir-PA2触媒存在下、基質/触媒モル比 (S/C) = 10,000の条件で速やかに反応し、収率90%で1-フェネチルアミンを与えます(スキーム2)。

スキーム2

 

また、カルボニル近傍が嵩高い2’-ブロモアセトフェノンは、Ir-PA3触媒存在下で2’-ブロモフェネチルアミンを効率的に与えます(スキーム3)。第二級、第三級アミン合成においては、最初にIr-QN1触媒を使用し、副反応が少ないようであれば、より高活性なIr-QN2触媒を次に使用することで、目的のアミンを効率的に取得することができます。

スキーム3

 

我々の開発した還元的アミノ化触媒は、高活性かつ簡便に使用できる触媒です。当社は大量供給体制を整えているため、研究開発のみならず、工業的生産にも対応できます。目的化合物を合成するツールの一つとして活用いただければ幸いです。

この製品に関するお問い合わせ

関東化学株式会社

本社:東京都中央区日本橋室町2-2-1

電話:03-6214-1090 FAX:03-3241-1047 メールはこちら

関連記事

webmaster

投稿者の記事一覧

Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

関連記事

  1. 始めよう!3Dプリンターを使った実験器具DIY:3D CADを使…
  2. 第99回日本化学会年会 付設展示会ケムステキャンペーン Part…
  3. 留学せずに英語をマスターできるかやってみた(1年目)
  4. “関節技”でグリコシル化を極める!
  5. 第27回 国際複素環化学会議 (27th ISHC)
  6. 触媒的syn-ジクロロ化反応への挑戦
  7. いざ、低温反応!さて、バスはどうする?〜水/メタノール混合系で、…
  8. 自動車排ガス浄化触媒って何?

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. 秋山・寺田触媒 Akiyama-Terada Catalyst
  2. 2,2,2-トリクロロエトキシカルボニル保護基 Troc Protecting Group
  3. 光で形を変える結晶
  4. どろどろ血液でもへっちゃら
  5. iPadで計算化学にチャレンジ:iSpartan
  6. 出光・昭和シェル、統合を発表
  7. 光で脳/神経科学に革命を起こす「オプトジェネティクス」
  8. 【書籍】アリエナイ化学実験の世界へ―『Mad Science―炎と煙と轟音の科学実験54』
  9. メガネが不要になる目薬「Nanodrops(ナノドロップス)」
  10. 海底にレアアース資源!ランタノイドは太平洋の夢を見るか

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2018年1月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293031  

注目情報

最新記事

最新の電子顕微鏡法によりポリエチレン分子鎖の向きを可視化することに成功

第583回のスポットライトリサーチは、東北大学大学院 工学研究科 応用化学専攻 陣内研究室の狩野見 …

\脱炭素・サーキュラーエコノミーの実現/  マイクロ波を用いたケミカルリサイクル・金属製錬プロセスのご紹介

※本セミナーは、技術者および事業担当者向けです。脱炭素化と省エネに貢献するモノづくり技術の一つと…

【書籍】女性が科学の扉を開くとき:偏見と差別に対峙した六〇年 NSF(米国国立科学財団)長官を務めた科学者が語る

概要米国の女性科学者たちは科学界のジェンダーギャップにどのように向き合い,変えてきたのか ……

【太陽ホールディングス】新卒採用情報(2025卒)

■■求める人物像■■「大きな志と好奇心を持ちまだ見ぬ価値造像のために前進できる人…

細胞代謝学術セミナー全3回 主催:同仁化学研究所

細胞代謝研究をテーマに第一線でご活躍されている先生方をお招きし、同仁化学研究所主催の学術セミナーを全…

マテリアルズ・インフォマティクスにおける回帰手法の基礎

開催日:2023/12/06 申込みはこちら■開催概要マテリアルズ・インフォマティクスを…

プロトン共役電子移動を用いた半導体キャリア密度の精密制御

第582回のスポットライトリサーチは、物質・材料研究機構(NIMS) ナノアーキテクトニクス材料研究…

有機合成化学協会誌2023年11月号:英文特別号

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2023年11月号がオンライン公開されています。…

高懸濁試料のろ過に最適なGFXシリンジフィルターを試してみた

久々の、試してみたシリーズ。今回試したのはアドビオン・インターチム・サイエンティフィ…

細胞内で酵素のようにヒストンを修飾する化学触媒の開発

第581回のスポットライトリサーチは、東京大学大学院 薬学系研究科 有機合成化学教室(金井研究室)の…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP