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アカデミア有機化学研究でのクラウドファンディングが登場!

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読者の皆さんの中には、既にご覧になった方もいらっしゃるかも知れません。

有機化学アカデミック研究をテーマとした、本邦初のクラウドファンディング@academistが立ち上がっています。学習院大の諸藤達也先生によるチャレンジです(ブログ記事)。

有機化学はやや小難しくて地味な話が多い都合、クラウドファンディングはなかなか難しそうな印象がありました。そういう中でのこういうチャレンジは、筆者としても応援すべきであると心から思いましたので、ささやかではありますが支援させていただきました(ケムステとは無関係に!)

そして僅か1日未満で、目標額の50万円をacademist史上最速で達成されたようで、本当におめでとうございます!若手化学者たちに勇気と希望を与えてくれる達成かと思います。

科研費は意外と面倒くさい

筆者個人は、「研究費源の多角化」「『選択と集中』のカウンター」として、クラウドファンディングスキームは有望な一つになると考えています。

有機化学分野の皆さんもこういう資金集め法は当然知ってるはずなんですが、真剣にやる人が今まで現れなかったわけです。しかし一番最初に飛び込む人が現れたら、次々にフォロワーが現れるはず。いわゆるファーストペンギンは常に偉いのです。イチローも凄いですが、やっぱり最初の野茂が居てこそ、というのと同じです。

こういう流れを促進したかったというのが最大の支援理由です。

今の公的研究費獲得スキームって、書類業務や付帯業務が額面に比して多すぎる気がしています。こんなこと書いてしまって干されないかが心配ですが、最近ほとほとうんざりしてるので書いてしまいます。

税金原資なので使途制限がそれなりにあるのはまぁ仕方ないところなのでしょうが、それに伴う事務チェックが最近は相当厳しくて大変です。加えて支援額は昔より減る一方。とくに若手に対しては年々厳しさが増しています(若手Aは消滅しましたね!)。

大きめの研究費が「選択と集中」されてしまい、限られた大御所にしか行き渡らなくなっている趨勢を踏まえると、大半のラボは小額研究費を多数組み合わせて運営するしか手がありません。

しかし公的研究費を一つ獲得すると、それに付帯する報告書がもれなく一つくっついてきます。小額だろうが高額だろうが関係ありません。科研費だと種別が違うと、それぞれ別書式にまとめる必要があります。単発科研費だけでは研究できない額であることが明らかにも関わらず、上手く切り分けて報告書を作らねば成りません。内容をうまく解釈して作文することが必要です。加えてボスの取ってるグループ研究費の報告書も、一人では執筆分量が賄いきれないので、必然的に中間管理職との分担執筆になります。ボスのつくったインフラがあってこそ研究できてる事実も間違いないので、やらねばならない一つです。最近のグローバル化趨勢で、「英語で書いてね!(はぁと)」というオマケまで付くことも。誰が読むんですかねこれ。Google翻訳が大活躍ですマジ最高。報告書提出フォームの横に翻訳ボタンつけてくれないっすかね。おっと、AMED報告書のリマインドメールまで来ましたよ・・・これも結構ガチな書類が要ります。ついでに財団助成の報告書もあります(こちらは緩いものが多くてまだマシです)。

報告書は研究内容を理解できていない事務員に投げるわけにいきませんから、研究者が自ら書かねばなりません・・・・さてさて、自分はいったい何ページ・何セットの報告書を、4月中に書かねば成らないのでしょうか???

4月の新人対応時期にこんなことをやっていると、研究など出来たものではないのは想像に難くないかと思います。仕事を超速で終わらせうるタイピングスキルと速読スキルを身につけてなければ、筆者は今頃、鬱になっていたかもしれません。

研究加速に役立つはずのお金が、研究アイデアを出すために使われるべき「ゆとりある時間」を奪っている現実をひしひしと感じています。自分の時給を踏まえると、書類業務にどれだけの給料を使っているのか、考えるだに恐ろしい話です。こんなんで生産性向上とか働き方改革がどーたらこーたらなど、議論する段階ですらないようにも思えています。

研究に使ってくれればそれで良い資金、無いものねだりでしょうか?

  • 研究費個々の小額化・多機関化 → いつも申請書と報告書を書いている
  • 基盤資金がへって競争資金が増えた → いつも申請書を書いている
  • 単発研究費では運営できないので組み合わせ取得が必要 → 沢山申請書と報告書を出す必要がある
  • 額面当たりの事務コスト・義務的事項が増えている → 報告書に加えてシンポジウム開催とかキックオフとか共同研究義務とかまで付帯するものも
  • 小額だと事務員を雇えない → 現場研究者の時間がなくなる
  • 使途制限にかなりうるさいものがある → エビデンス集めの事務コストが余分にかかる

このあたりが、公的研究費の美味しくない感をいろいろ醸し出している要因に思えています。誰が悪いわけでも無く、完全に構造的問題です。

違反するとサクッと応募資格が止められる昨今、使用ルール厳守が前提となっています。補助金が事務コストを上げてしまい、肝心の本業スピードを下げてしまったり、本筋にリソースが十分回せないことがある・・・特に若く小さなグループや、ヒエラルキーが強く上司が投げる仕事を断れない環境でそんなことが起きがちだろうことは、想像に難くありません。研究者の自由な発想を支援するはずの公的研究費は、そのための事務コストを負えるそれなりの機関所属じゃないと、そもそも活用できない制度といえるかもしれません。真の画期的成果は大抵小規模から始まるはずなのに、どうにもそれとは対極たる配分策へと全体としてシフトしている、と感じられて止まないのは筆者だけでしょうか?

制度設計側の頭のいい人は、新しい仕組みをムリヤリ立ち上げて現場に押しつけるばかりじゃなくて、付帯業務を減らす方向に頭を使っていただけないでしょうか。究極的には説明責任さえ果たせればいいはずなので、その最低ラインを素晴らしい頭脳を持ってして攻めていただけないものでしょうか。若手でも大きな研究費をとれ、事務作業を一点集約できる仕組みにならないものでしょうか・・・

こういう現状を踏まえますと、研究費をクラウドファンディングで集めることの利点がいよいよもって見えやすいです。税金原資より使い勝手がいいですし、付帯する事務作業も少なめです。なにより若手にもチャンスがある支援者の顔が見えることも一つの良い点で、報告書もモチベーションを持って書けると思います。

ただ、もちろん誰でもがやれるスキームではないと思います。分かりやすい説明力、エンタメ力、知名度など、研究以外の資質も相応に必要でしょう。準備も普通に大変だと思います。額面も今のところそこまで大きくはできないと思います。書類だけで研究費が貰える科研費スキームのほうが、心理的によほど楽な応募形式ではありますね。

とはいえ、自由に使える資金というのは、自由な研究をやるにはとても重要です。自分にとって向いていると思えるならば、こういった資金集め法もトライ価値はあるでしょう。イノベーティブな研究には多様性が必要です。今回のファーストペンギンに続き、方々で新たな研究費獲得スキームが考案されていくことを、切に願っています。

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cosine

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博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

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