[スポンサーリンク]

元素

マグネシウム Magnesium-にがりの成分から軽量化合物材料まで

[スポンサーリンク]

最近の携帯機器のフレームから、豆腐のにがり、さらには便秘薬まで、幅広く使われているマグネシウム化合物。古くから知られている利用法と、最新の利用状況までをみていきましょう。

マグネシウムの基本物性データ

分類 金属、ミネラル
原子番号・原子量 12 (24.3050)
電子配置 3s2
密度 1738kg/m3
融点 648.8℃
沸点 1090℃
硬度 2.5
色・形状 銀白色・固体
存在度 地球3万2000ppm、宇宙 1.074 x 106
クラーク数  1.93%(8位)
発見者 ハンフリー・デービー(1808年)
主な同位体 24Mg (78.99%), 25Mg(10.00%), 26Mg(11.01%)
用途例 マグネシウム合金(Mg-Li, Mg-Al, Mg-Zn)、クロロフィルの構成成分、にがり(MgCl2)、歯磨き粉の研磨剤(MgO)、超伝導物質(MgB2)、グリニャール試薬(RMgBrなど)、便秘薬(Mg(OH)2
前後の元素 ナトリウムマグネシウムアルミニウム

海水に多く含まれる元素

180年にイギリスのデービーによって発見されたマグネシウムは、アルミニウムやチタンなどと同様に比較的新しい金属です。エーゲ海に面するマグネシア地方(MagNesia)でマグネシウム鉱石(滑石)がよくとれることから命名されました。余談になりますが、同様にこの地方で産出された黒い石(軟マンガン鉱)はマンガン(manganese)、磁石の原料となった酸化物はマグネット(magnet)と命名されています。

2016-06-22_21-56-45

マグネシウム、マンガン、マグネットのふるさと

 

ハンフリー・デービー

2016-06-22_19-03-20

1778-1829年 イギリスの化学者。6つの元素、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、ストロンチウム、カルシウム、バリウムを発見した。単独の元素発見数No.1の化学者である。電磁誘導の法則、電気分解の法則などを発見したファラデーは彼の弟子で、デービーの最大の功績はファラデーを見出したことであると言われている。

マグネシウムは地球上で8番目に多い元素で、鉱石だけでなく海水中からも得ることができます。およそ800トンの海水から約1トンのマグネシウムを抽出可能であることから、非常に豊富な金属であることがわかるでしょう。

軽量で硬いマグネシウム合金(Mg-Li, Mg-Al, Mg-Zn)

マグネシウムは、実用金属として最も軽い材料で、比重はアルミニウムの3分の2、鉄の4分の1です。また比強度や比剛性が、アルミニウムや鉄などよりも優れています。

2016-06-22_22-13-23

マグネシウム金属の特徴

 

現在、マグネシウム合金はその特徴を活かし、自動車のホイールやステアリングカラムから円陣のクランクケースまで、さらにはポータブルプレイヤー、携帯電話、ノート型パソコン、デジタルカメラといった携帯製品へと、用途が拡大しています。

2016-06-22_22-20-43

 

豆腐に不可欠なにがり

豆腐作りに不可欠なにがり(海水から塩を採取した残りの液体)には、塩化マグネシウム(MgCl2が12〜21%ほど含まれており、これが豆腐の凝固剤の役割を果たしています。それ意外にもにがりには、臭化マグネシウム(MgBr2)、硫酸マグネシウム(MgSO4)など、マグネシウム化合物が豊富に含まれています。

2016-06-22_22-29-38

豆腐をつくるにがりの主成分

 

クロロフィルの構成成分

クロロフィル(葉緑素)とは、植物の葉緑体やシアノバクテリアに含まれる光合成に関与する緑色色素です。この中心元素として、マグネシウムが含まれています。そのため、マグネシウムが欠乏するとクロロフィルを編成できず、植物の生育の減退、収穫量の減量につながります。

2016-06-22_22-45-43

新しい超電導物質として

二ホウ化マグネシウムは(MgB2は2001年1月に青山学院大の秋光純教授が発見した超伝導物質で、超伝導臨界温度が金属間化合物として世界最高の39ケルビン(K)を記録しました。産業分野で超電導体として広く使われているニオブ(Nb)合金が液体ヘリウムで約4Kにまで冷やす必要があるのに比べ、冷却が安価で容易です。さらに、炭素などの不純物を添加することで安定になり、ニオブ合金に比べ同等かそれ以上の特性を示すため、超伝導磁石や送電線、高感度の磁気センサーなどへの応用が考えられています。

2016-06-27_16-25-02

 

有機合成の反応剤:グリニャール試薬

エーテル系*溶媒中ハロゲン化アルキル(R–X)と金属マグネシウム(Mg)を混合させることにより、グリニャール試薬(RMgX)を得ることができます。1912年にノーベル化学賞を受賞したフランスの化学者ヴィクトル・グリニャール(Victor Grignard)によって開発されたこの試薬は、強い求核性*と強塩基性*により反応性に富むため、現在でも実験室や工業用途でもよく用いられています(グリニャール反応)。

2016-06-27_16-36-51

[amazonjs asin=”B00799X19W” locale=”JP” title=”マグネシウム文明論 石油に代わる新エネルギー資源 (PHP新書)”]
Avatar photo

webmaster

投稿者の記事一覧

Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

関連記事

  1. 原子量に捧げる詩
  2. 交響曲第6番「炭素物語」
  3. 元素紀行
  4. ベリリウム Beryllium -エメラルドの成分、宇宙望遠鏡に…
  5. 日本発元素がついに周期表に!!「原子番号113番」の命名権が理研…
  6. 酸素 Oxygen -空気や水を構成する身近な元素
  7. テオ・グレイ Theodore Gray
  8. 周期表を超えて~超原子の合成~

注目情報

ピックアップ記事

  1. 原野 幸治 Koji Harano
  2. 化学者のためのエレクトロニクス講座~5Gで活躍する化学メーカー編~
  3. 【速報】2022年ノーベル化学賞は「クリックケミストリーと生体直交化学」へ!
  4. ナノチューブを引き裂け! ~物理的な意味で~
  5. 今年も出ます!サイエンスアゴラ2014
  6. ノーベル化学賞田中さん 富山2大学の特任教授に
  7. 有機ナノ結晶からの「核偏極リレー」により液体の水を初めて高偏極化 ~高感度NMRによる薬物スクリーニングやタンパク質の動的解析への応用が期待~
  8. 室温で緑色発光するp型/n型新半導体を独自の化学設計指針をもとにペロブスカイト型硫化物で実現
  9. 土釜 恭直 Kyoji Tsuchikama
  10. 田辺三菱 国内5番目のDPP-4阻害薬承認見通し

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2016年6月
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
27282930  

注目情報

最新記事

ACS Publications主催 創薬企業フォーラム開催のお知らせ Frontiers of Drug Discovery in Japan: ACS Industrial Forum 2025

日時2025年12月5日(金)13:00~17:45会場大阪大学産業科学研究所 管理棟 …

【太陽ホールディングス】新卒採用情報(2027卒)

■■求める人物像■■「大きな志と好奇心を持ちまだ見ぬ価値造像のために前進できる人…

欧米化学メーカーのR&D戦略について調査結果を発表

この程、TPCマーケティングリサーチ株式会社(本社=大阪市西区、代表取締役社長=松本竜馬)は、欧米化…

有馬温泉でラドン泉の放射線量を計算してみた【化学者が行く温泉巡りの旅】

有馬温泉は、日本の温泉で最も高い塩分濃度を持ち黄褐色を呈する金泉と二酸化炭素と放射性のラドンを含んだ…

アミンホウ素を「くっつける」・「つかう」 ~ポリフルオロアレーンの光触媒的C–Fホウ素化反応と鈴木・宮浦カップリングの開発~

第684回のスポットライトリサーチは、名古屋工業大学大学院工学研究科(中村研究室)安川直樹 助教と修…

第56回ケムステVシンポ「デバイスとともに進化する未来の化学」を開催します!

第56回ケムステVシンポの会告を致します。3年前(32回)・2年前(41回)・昨年(49回)…

骨粗鬆症を通じてみる薬の工夫

お久しぶりです。以前記事を挙げてから1年以上たってしまい、時間の進む速さに驚いていま…

インドの農薬市場と各社の事業戦略について調査結果を発表

この程、TPCマーケティングリサーチ株式会社(本社=大阪市西区、代表取締役社長=松本竜馬)は、インド…

【味の素ファインテクノ】新卒採用情報(2027卒)

当社は入社時研修を経て、先輩指導のもと、実践(※)の場でご活躍いただきます。…

味の素グループの化学メーカー「味の素ファインテクノ社」を紹介します

食品会社として知られる味の素社ですが、味の素ファインテクノ社はその味の素グループ…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP