[スポンサーリンク]

世界の化学者データベース

ジョアン・スタビー JoAnne Stubbe

[スポンサーリンク]

ジョアン・スタビー (JoAnne Stubbe、1946年6月11日-)は、アメリカの有機化学者、生化学者である。米マサチューセッツ工科大学教授(写真:MIT Chemistry)。

経歴

19xx ペンシルバニア大学 学士号取得
1961 カリフォルニア大学バークリー校 博士号取得
1971 カリフォルニア大学ロサンゼルス校 博士研究員
1972 ウィリアムスカレッジ 助教授
1977 イェール大学 助教授
1980 ウィスコンシン大学 助教授
1987 マサチューセッツ工科大学 教授

 

受賞歴

1993 Arthur C. Cope Scholar Award
1996 Richards Medal from northeastern section of ACS
1997 F.A. Cotton Medal
1997 Alfred Bader Award in Bioinorganic or Bioorganic Chemistry of the American Chemical Society
1998 F.A. Cotton Medal for Excellence in Chemical Research of the American Chemical Society
2004 Repligen Award
2005 John Scott Award
2009 National Medal of Science
2009  ACS Nakanishi Prize
2010 ベンジャミンフランクリンメダル
2010 ウェルチ化学賞
2010 Murray Goodman Memorial Prize
2014 Penn Chemistry Distinguished Alumni Award
2015 American Chemical Society Remsen Award
2017 Pearl Meister Greengard Prize
2018 クラリベイト・アナリティクス引用栄誉賞
2020 Priestley Medal

 

研究概要

リボヌクレオチド還元酵素の反応機構の解明

リボヌクレオチド還元酵素(RNR)は、RNAの基本構造であるリボヌクレオチドを、DNAの基本構造であるヌクレオチドへと還元する酵素である(図1a)。RNRは、あらゆる生物の細胞内に存在し、DNAの修復・複製に関わるため非常に重要である。[1] Stubbe教授は、RNRの反応機構の解明に長年取り組んでおり、RNRがフリーラジカル機構によって還元反応を行うことを発見した。

RNRは、図1bのような全体構造をとると考えられており、基質が結合する活性部位・ラジカル発生部位・アロステリック作用因子(effector)の結合部位を持つ。特に興味深いのは、ラジカル発生部位のチロシン(Y122・)から活性部位のシステイン(C439)までの距離が、35オングストローム以上もあることである。反応性の高いフリーラジカルがそのような長い距離をどうやって移動するのか。Stubbe教授は、非天然アミノ酸導入や分光法を駆使し、ラジカル電子の移動を詳細に調べた。

図1. (a) RNRによる酵素反応。(b) RNRの全体構造。(図はStubbe Groupのページより)

彼女は、Y122・からC439の間に存在する芳香族アミノ酸を、非天然の類縁体に置き換えることで、フリーラジカルがそれらのアミノ酸を通って移動していくことを示した。例えば、チロシンを、電子供与・求引性置換基の付いた類縁体(NH2–Y, F–Yなど)に置き換えることで、部位特異的に還元電位やpKaを変化させることができる(図2a)。彼女は、このような手法でアミノ酸の特性を体系的に変え、ストップト・フローUV-visや電子スピン共鳴(EPR)などの分光法でラジカル移動を追跡することにより、以下の機構を示した。(i) ラジカル電子は特定の芳香族アミノ酸(Y122•, [W48?], Y356, Y731, Y730, C439)を通って可逆的に移動する(図2b)、(ii) ラジカル移動はプロトン移動と共役して起こる(PCET)、(iii) 基質や作用因子によってY122・からC439の間におけるラジカル移動が制御されている(アロステリック効果)。

図2. (a) 非天然のチロシン類縁体。(b) チロシンラジカル(Y122・)から活性部位へのラジカル移動経路。[2]

コメント&その他

研究室HPのトップにあるかわいい犬のイラストは、愛犬がモデルとのこと。名前はDr. McEnzyme Stubbe。(enzyme = 酵素) メンバー紹介欄にも載っていて、ポジションは”Top dog”となっている。残念ながら2017年に亡くなってしまったが、新しいメンバーとしてProf. Wendell Stubbeが”Professor Emeritus of Puptide Chemistry”として迎えられた。

名言集

 

関連動画

関連論文

  1. Stubbe, J.; Nocera, D. G.; Yee, C. S.; Chang, M. C. Chem. Rev. 2003103, 2167. (DOI: 10.1021/cr020421u)
  2. Minnihan, E. C.; Nocera, D. G.; Stubbe, J.
Acc. Chem. Res. 2013, 46, 2524. (DOI: 10.1021/ar4000407)

関連書籍

 

外部リンク

cosine

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。現在国立大学教員として勤務中。専門は有機合成化学、主に触媒開発研究。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

webmaster

webmaster

投稿者の記事一覧

Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

kanako

kanako

投稿者の記事一覧

大学院生。化学科、ケミカルバイオロジー専攻。趣味はスポーツで、アルティメットフリスビーにはまり中。

関連記事

  1. 日本国際賞―受賞化学者一覧
  2. リチャード・ラーナー Richard Lerner
  3. クリストフ・レーダー Christoph Rader
  4. 吉田善一 Zen-ichi Yoshida
  5. サム・ゲルマン Samuel H. Gellman
  6. ベンジャミン・フランクリンメダル―受賞化学者一覧
  7. マックス・プランク Max Planck
  8. スティーヴン・バックワルド Stephen L. Buchwal…

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. 岸義人先生来学
  2. 富士写、化学材料を事業化
  3. フッ素のゴーシュ効果 Fluorine gauche Effect
  4. シャピロ反応 Shapiro Reaction
  5. イオン交換が分子間電荷移動を駆動する協奏的現象の発見
  6. ニーメントウスキー キノリン/キナゾリン合成 Niementowski Quinoline/Quinazoline Synthesis
  7. その電子、私が引き受けよう
  8. 「鍛えて成長する材料」:力で共有結合を切断するとどうなる?そしてどう使う?
  9. リチウムイオン電池の特許動向から見た今後の開発と展望【終了】
  10. 化学メーカー研究開発者必見!!新規事業立ち上げの成功確度を上げる方法

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

注目情報

注目情報

最新記事

分子の対称性が高いってどういうこと ?【化学者だって数学するっつーの!: 対称操作】

群論を学んでいない人でも「ある分子の対称性が高い」と直感的に言うことはできるかと思います。しかし分子…

非古典的カルボカチオンを手懐ける

キラルなブレンステッド酸触媒による非古典的カルボカチオンのエナンチオ選択的反応が開発された。低分子触…

CEMS Topical Meeting Online 機能性材料の励起状態化学

1月28日に毎年行われている理研の無料シンポジウムが開催されるようです。事前参加登録が必要なので興味…

カルボン酸に気をつけろ! グルクロン酸抱合の驚異

 カルボン酸は、カルボキシ基 (–COOH) を有する有機化合物の一群です。カルボン…

第138回―「不斉反応の速度論研究からホモキラリティの起源に挑む」Donna Blackmond教授

第138回の海外化学者インタビューはドナ・ブラックモンド教授です。2009年12月現在、インペリアル…

Ru触媒で異なるアルキン同士をantiで付加させる

Ru触媒を用いたアルキンのanti選択的ヒドロおよびクロロアルキニル化反応が開発された。本反応は共役…

化学系必見!博物館特集 野辺山天文台編~HC11Nってどんな分子?~

bergです。突然ですが今回から「化学系必見!博物館特集」と銘打って、私が実際に訪れたいちおしの博物…

有機合成化学協会誌2021年1月号:コロナウイルス・脱ニトロ型カップリング・炭素環・ヘテロ環合成法・環状γ-ケトエステル・サキシトキシン

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2021年1月号がオンライン公開されました。あ…

Chem-Station Twitter

PAGE TOP