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有機合成化学協会誌2023年1月号:[1,3]-アルコキシ転位・クロロシラン・インシリコ技術・マイトトキシン・MOF

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有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2023年1月号がオンライン公開されました。

すいません、執筆が遅くなってしまいました。1月が終わってしまいました。。例年通りですが、1月の大学は非常にバタバタしております。

有機合成化学協会誌は今月号も充実の内容です。

キーワードは、「[1,3]-アルコキシ転位・クロロシラン・インシリコ技術・マイトトキシン・MOFです。

今回も、会員の方ならばそれぞれの画像をクリックすればJ-STAGEを通してすべてを閲覧することが可能です。

巻頭言 読書をしよう、自分の頭で考える機会を持とう!

今月号の巻頭言は、京都工芸繊維大学分子化学系清水 正毅 教授による寄稿記事です。ものすごく首肯しながら読んでしまいました。
自分も含め、もっともっと考える習慣が必要だと感じます。個人的には、「考える」というのは自分の頭だけを必要とするとてもコスパのいい趣味に思えるのです。教授が薦めている読書習慣およびその方法も武器にしつつ、研究者としてレベルアップしていきましょう。

銅触媒によるNアルコキシアニリン誘導体の[1.3]-アルコキシ転位反応

中村 達*

2021年度有機合成化学協会企業冠賞 日産化学・有機合成新反応/手法賞

*東北大学大学院理学研究科巨大分子解析研究センター(兼)化学専攻

本総合論文では、合成が容易、かつ長期間の保存も可能なN-アルコキシアニリン誘導体に対し、カチオン性銅触媒を作用させることにより、[1,3]-アルコキシ転位が高効率的に進行することを見出し、その研究に至った経緯や、反応機構の解明を行うことで、基質適用範囲の拡大と合成化学的応用について述べられている。

ニッケルならびにパラジウム触媒によるクロロシランの選択的分子変換

永縄友規*、亀尾 肇、中島裕美子*

*産業技術総合研究所触媒化学融合研究センター

**大阪公立大学理学研究科化学専攻

安価なポリクロロシランへ有機基を選択的に導入する、シンプルだからこそ難しい本反応の実現に向けて、著者らは「電子豊富なニッケルあるいはパラジウム触媒」と「電子不足なルイス酸」との巧みなコンビネーションを活用し、これを達成しました。著者らの最近の成果、是非、ご一読下さい。

有機合成とインシリコ技術の融合によるレニン阻害薬とO-GlcNAcase阻害薬の新規リード化合物の創製

多和田倫子*

*武田薬品工業株式会社 リサーチ ニューロサイエンス創薬ユニット

有機合成とインシリコ技術の両輪が上手く回ると、ここまできれいな創薬研究が展開できます。レニン阻害剤とO-GlcNAcase阻害剤の開発に傾けたこだわり、「愛」が描かれています。

マイトトキシンのWXYZA’B’C’D’E’F’環部の合成

梅野圭太郎、大石 徹*

*九州大学大学院理学研究院化学部門

独自の手法である α-シアノエーテル法によるフラグメントのカップリングと続く環形成反応を鍵とし、未踏分子であるマイトトキシンのWXYZA’B’C’D’E’F’環部の初の合成を実現されています。複雑な骨格が巧みに作り上げられていきます。ぜひ、ご一読ください。

ガス貯蔵・分離材料を指向した多孔性配位高分子の開発

菅又 功1、白井昭宏1,2、箕浦真生1*

1*立教大学理学部化学科

2日本曹達株式会社

近年のエネルギー・社会問題を背景に、クリーンなエネルギー源である水素の活用が盛んに研究されています。その中でも、水素を安全に取り扱うことのできる水素貯蔵材料の開発はとても重要です。本総合論文は、立教大学の菅又先生、白井先生、箕浦先生らが行っている金属有機構造体(Metal-organic Frameworks)をもちいた水素貯蔵材料の開発について解説しています。

Review de Debut

今月号のReview de Debutは1件です。オープンアクセスです。

歪んだ低分子アルカロイド herquline 類の全合成 (北里大学薬学部薬品製造化学教室)李 大葵

Message from Young Principal Researcher (MyPR):真理の探求 

今月号のMyPRは、神戸薬科大学薬学部波多野 学 教授による寄稿記事です。新しい価値の創造とは何か、考えさせられます。

感動の瞬間:天命を待って人事を尽くす

奈良先端科学技術大学院大学の垣内喜代三 教授による寄稿記事です。2021年3月に行われた最終講義にも関わる、感動の内容です。オープンアクセスですのでぜひ。

これまでの紹介記事は有機合成化学協会誌 紹介記事シリーズを参照してください。

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博士(理学)。大学教員。娘の育児に奮闘しつつも、分子の世界に思いを馳せる日々。

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