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アメリカ企業研究員の生活②:1〜2年目の様子

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私はアメリカの大学院(化学科・ケミカルバイオロジー専攻)を卒業し、2年半前からボストンにある中規模のバイオテックで働いています。前回の記事では、アメリカの企業研究員の1日の仕事の流れについて記事を書きました。今回は、入社してから1〜2年目の仕事の様子について私の経験を綴ります。

1. 採用から入社まで

アメリカの企業では通年採用が一般的なので、新入社員の入社日は人によって違います。そのため、選考の段階から人事担当者に希望の入社時期を尋ねられ、オファーをもらった後に最終調整という形になります。就活のスケジュールについては以前の記事でも詳しく触れましたが、企業は即戦力を必要としている場合がほとんどなので、オファーをもらってから数週間〜2ヶ月以内に入社することが一般的です。

就職にあたって引っ越しが必要になる場合には、会社から引っ越し費用が支給されます。引っ越しが必要かどうか・費用がどの程度必要かについては、選考の段階から人事担当者に尋ねられ、オファーをもらう際に支給額を提示されます。

2. 入社してから

入社の数日前になると、人事部から入社オリエンテーションの案内メールが届きました。通年採用なので、日本の企業ような入社式はありませんが、新入社員向けオリエンテーションは毎週月曜日に開かれており、各部署の概要や会社の基盤技術などの説明を受けました。オリエンテーション中には、他の新入社員と交流する機会も少し設けられていましたが、日本の新卒一括採用のような「同期」という概念がなく、新入社員の経験レベルや所属部署も様々なので、同じ日に入社したからといってその後交流が続くということはありませんでした。

自分のオフィスには、直属の上司と自分で連絡を取って出向きました。上司からチームメンバーを紹介してもらったり、研究室の中を見せてもらったりした後は、実験台やパソコンなどのセットアップを進めていきました。会社やチームによって違うのかもしれませんが、私の場合は直属の上司が常にミーティングなどで忙しく、コロナウイルスの影響でオフィスに来ることも少なかったため、周りの人に聞き回って自力でセットアップを進めていきました。

最初の数ヶ月は、チームメンバーと個別のミーティングを設けてそれぞれのプロジェクトについて学んだり、実験を手伝ったりしながら、手探りで自分の役割を見つけていきました。仕事に慣れて来ると、手伝っていたプロジェクトの実験をもっと任されるようになったり、新しいプロジェクトを与えられたりして、仕事がどんどん増えていきました。チームリーダーのスタイルにもよると思いますが、プロジェクトが流動的で、仕事を割り当てられるのを待つよりも、自分で周りを見渡して必要な仕事を積極的にやっていくという点が学生時代の研究とだいぶ違うと感じました。上司から与えられた「自分のプロジェクト」というものもありますが、プロジェクトの優先順位や締め切り、他のチームからのリクエストに応じていろんな仕事をこなさなければならないので、チーム全体のプロジェクトの進捗を把握し、柔軟に動くことが求められます。

3. 同僚の様子

私の会社で働く人は、年齢・性別・国籍・バックグラウンドがとても多様です。男女比はほぼ半々で、Director以上のポジションにも女性が多くいます。また、ボストンだからなのか外国人の割合が多く、職場の半数近くを占めています。外国人には、学部は母国の大学、大学院(修士or PhD)でアメリカの大学、というパターンの人が多いので、PhD課程からアメリカに来た私にとって、自分が特別だと感じることは特にありません。

役職は、PhD取得者と非取得者ではっきりと分かれていて、PhD取得者はScientistコース(Scientist→Sr. Scientist→Principal Scientist)、修士や学士のみの人はResearch Associateコース(Research Associate→Sr. Research Associate→Principal Research Associate)を進みます。Scientistには、プロジェクトを統括したり、新しい実験手法を開拓したりなど、より思考力が要る仕事が与えられます。一方で、Research Associateの仕事は実験作業がメインで、Scientistが統括するプロジェクトの補佐的な立場で仕事をすることが多いです。Research Associateは、経験を積んでランクアップしていくとScientistコースに上がれる可能性もあります。

役職において年齢が加味されることは無く、ポジションの序列は学位や経験を元に決められています。例えば、50~60代でもPhDを持っていなければ、Principal Research Associateとして実験作業をメインに働いている人が普通にいます。ただし、ポジションに序列はあってもチームメンバー間はフラットな関係で、皆対等に意見を言い合うことができます。

図1に、チームのメンバー構成の一例を示しています。あくまでもこれは一例ですが、チームのリーダーである (Sr.) Directorの下にScientistが複数いて、それぞれのScientistの下にResearch Associateがいる、というのが基本構造になっています。また、研究員以外にも、Research Operation Managerという役職があり、プロジェクトの進捗管理や事務手続きなどを専門に行っています。

図1. チームのメンバー構成の一例。

4. 企業の成長と環境の変化

私の会社は、創立してまだ10年程度と新しく、チームも会社全体も成長過程にあります。そのため、入社してから今まで、会社の規模が拡大し環境が変化していくのを経験しました。

まず大きな変化は、社員の数が増えるにつれて会社の組織構造が変化していったことです。同じ部門内に3つあったチームが7つに増え、部門全体も2つに分けられるなど、組織の枠組みが変化していきました。それに合わせてチームの役割も細分化されて行き、「うちのチームの仕事はここまでで、この先はあっちのチーム」というように、チームごとの棲み分けができていきました。会社の創業時期からいるメンバーによると、昔は分野の全然違うテーマを複数同時にやっていたのに、今はチーム間の境界線に配慮しなければならないため、自分がやれる範囲が狭まってしまったそうです。一方で、プロジェクトの方向性が定まってきたため、プロジェクトが頻繁に頓挫することが無くなったという良さもあるようです。

会社が成長するにつれて、スペース確保の問題も起きました。どのチームも、人員を増やしてプロジェクトの幅を広げたいため、チーム間で実験台やオフィススペースの取り合いが起きるようになりました。スペースプランニングの担当者が配置されたり、周辺の建物を借りてラボを増設したりすることで問題は緩和されましたが、こういった問題はボストンにある他のバイオ系企業でも頻繁に起こっているようです。バイオテックが密集しているケンブリッジ市周辺を歩くと、あちこちでバイオテックや製薬会社の建物が建設されているのを見かけます。ボストンが、世界最大のバイオテックの中枢として、どんどん拡大していく様子が感じられます。

5. おわりに

今回は、アメリカ企業研究員の生活について、1〜2年目の様子に焦点を当てて記事を書きました。バイオテックではプロジェクトのスピードが速く、入社して数年の間にもたくさんの経験をすることができました。特に、成長過程にある会社では、自分の後にも新入社員がどんどん入ってくるため、1年も経てばもう経験者として新しいメンバーの面倒を見たり、様々なプロジェクトを任されたりするようになります。2年半経ち、プロジェクトの流れは一通り分かるようになりましたが、常に新しいプロジェクトや共同研究が立ち上がるので飽きることなく仕事を楽しんでいます。

次回は、新入社員の採用プロセスについて記事を書こうと思います。

次回に続く

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アメリカの製薬企業の研究員。抗体をベースにした薬の開発を行なっている。
就職前は、アメリカの大学院にて化学のPhDを取得。専門はタンパク工学・ケミカルバイオロジー・高分子化学。

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