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茨城の女子高生が快挙!

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Rebirth of a Dead Belousov-Zhabotinsky Oscillator

Onuma, H.; Okubo, A.; Yokokawa, M.; Endo, M.; Kurihashi, A.; Sawahata, H. J. Phys. Chem. A, 2011115, 14137-14142. DOI: 10.1021/jp200103s

茨城県立水戸第二高等学校の数理学同好会に所属していた女子高生らの発見がJournal of Physical Chemistry A誌に掲載されるという快挙を成し遂げました。

水戸第二高等学校はスーパーサイエンスハイスクール(SSH)にも指定されており、理系の教育に力をいれておられるようです。本研究内容は日本化学会関東支部主催の第26回(2009)化学クラブ研究発表会などでも報告されていましたので、既にご覧になった方も多いのではないでしょうか。また、この結果を2010年度日本物理学会のJr.セッションにて発表したところ、テキサス大学オースチン校のペトロスキー教授に論文の執筆を勧められたそうです。

さて、どのような研究かといいますと、Belousov-Zhabotinsky反応(BZ反応と呼ばれる色が周期的に変化する化学振動反応に関するものです。BZ反応は見た目の面白さから化学実験の題材として人気があります。この化学振動が「どのようにして起こるのか」はよく文献に書かれていますが、「どのようにして止まるのか」は詳しい記述が無く、この問題について探求した実験です。

今回の彼女たちの発見は、一度振動反応が止まったかのように見えた反応系を放置しておいたところ、5-20時間後にまた振動が復活したという観察から始まっています。論文のタイトルは直訳すると、”死んだBZ反応の復活”でして、このあたりのセンスには脱帽してしまいます。

振動の止まり方としては、振幅が徐々に小さくなるというより、突然プツッと停止するということを観察しており、臭素酸ナトリウムとマロン酸の初期濃度によって、振動停止後、低電位を維持する還元定常状態(図中赤いグラフ)と高電位に遷移する酸化定常状態(図中青いグラフ)に落ち着く場合があることを見いだしています。また、様々な濃度で実験を行ったところ、一旦振動が停止した後、定常状態を経て再び振動が起こる濃度があることを発見しました(図中黒いグラフ)。一つ目の振動と二つ目の振動は異なった振る舞いをしているのが特徴的です。

2015-09-01_02-28-28

図1. BZ反応の酸化還元電位(真ん中黒い部分が復活したBZ反応を表している)(文献より引用)

発見の経緯が大変ユニークで、新聞などの報道によると、週末に実験して振動反応が止まってしまったところで、なんと実験をほったらかしてカラオケに行ってしまい、次の週の月曜日に学校へ来てみたら液の色が変わっていたとのことです。このようなセレンディピティーから重要な発見が生まれたというのは、フレミングによるペニシリンの発見を始め枚挙に暇がないので驚きには値しませんが、カラオケに行ったことで起こったというのが女子高生らしいエピソードですね。

また、最初はScience誌に投稿したようですが、残念な結果だったようです。彼女たちは皆それぞれ大学に進学しているようなので、今後もなにか化学に携わってもらって、次こそはScience誌に挑戦してもらいたいです。またできれば今度は日本化学会でぜひお目にかかりたいものです。

さて、このニュースを見て思い出したのですが、レオンスターウォーズ新三部作、最近ではブラックスワンアカデミー賞を受賞したハリウッド女優のナタリーポートマンも高校生の時の化学実験が論文になっています[1]。こちらはJournal of Chemical Educationという雑誌に掲載されておりまして、糖の酵素による分解時の水素発生を効果的に演示する方法を開発したという内容です。系内にベンジルビオロゲンという酸化還元色素を加えておき、水素の発生に伴い色素が還元されて紫色を呈するようになることを利用するというものです。ただし大学の教員、研究機関の研究員も共著者になっていることから、彼らの指導を受けたものと思われます。

いずれにしても才女たちが化学に興味を持ってくれるのは同じ化学好きとして嬉しい限りです。

 

参考文献

  1.  Portman, N.; Hurley, I.; Woodward, J. J. Chem. Edu. 1998, 75, 1270. doi:10.1021/ed075p1270

 

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有機合成化学が専門。主に天然物化学、ケミカルバイオロジーについて書いていきたいと思います。

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