[スポンサーリンク]

化学書籍レビュー

植物たちの静かな戦い

[スポンサーリンク]

[amazonjs asin=”4759816712″ locale=”JP” title=”植物たちの静かな戦い―化学物質があやつる生存競争 (DOJIN選書71)”]

内容

植物がつくり出す化学物質によって,周りの植物の生育を妨げたり,逆に生育を促進したり,害虫を寄せつけないようにしたりする現象「アレロパシー」.たとえば,アカマツの木の下には雑草が生えにくく,マリーゴールドは害虫を寄せつけにくい.また,ナガミヒナゲシのような外来植物には,強いアレロパシーを示すものも多い.本書では,このようなアレロパシー現象の数々とその作用物質や働きを紹介しながら,農業や生態系への応用を見据える.植物の見方が変わること間違いなしの1冊.(化学同人のサイトより

【目次】
第1章 植物が身につけた化学戦略
第2章 生態系に影響するアレロパシーの発見
第3章 外来植物の静かな戦い
第4章 アレロパシーを農業に応用する
第5章 雑草どうしの静かな戦い
第6章 アレロパシーの強い植物を広範囲に利用する
第7章 未来の有用作物
第8章 植物の静かな戦い研究最前線
終 章  植物の進化とアレロパシー仮説

対象者

高校生以上

解説

植物は動物と違って動くことができないため、生育環境が悪くなっても逃げることができない。生き残るため、植物は動物とは異なる防衛手段を発達させた。それがアレロパシーである。アレロパシーとは、「植物が放出する化学物質がほかの生物に阻害的あるいは促進的な何らかの作用を及ぼす現象」のことを意味する。また、アレロパシーの作用物質は他感物質(アレロケミカル)と呼ばれる。

本書は、アレロパシーについてまとめた良書である。言葉の定義から始まり、どのようにして発見されたのか、どのような実験により証明されたのか、単離されたアレロケミカルの構造、どのように応用されているかなど幅広く紹介されている。例えば、第二章では病害虫の被害を受けにくく雑草に強い木であるグリシジアが段々畑の境界に土止めとして使われている例などが、第四章ではイネの根から発芽促進物質ストリゴールが放出されている例が、第五章ではヒガンバナの鱗茎にリコリンという有毒アルカロイド含まれているため、ネズミやモグラなどに捕食されないという例などが紹介されている。各章の話題は、とても身近に感じることができ、説明も論理的で非常に理解しやすい。

研究室に配属され研究を開始すると、時として非常に視野が狭くなってしまうことがある。例えば、ある天然物化合物の研究を行っていると、学会発表のイントロのスライドで生理活性を列挙することが多いが、生態系の中でその化合物がどのような影響を与えているかについて、ついつい忘れてしまいがちだ!

本書を読むと植物の生産するアレロパシー関連物質が生態系でどのような役割を持っているのか、どのようにして発見されたかのエピソードや、農業などにどのように応用されているのかが分かる。まさに、「化学本来の楽しさを思い出させてくれる」書籍であると感じた。本書を読んだ後で外を歩くと、ついつい植物に目がいってしまうようになる。

本書は、著者の前著「アレロパシー―多感物質の作用と利用 (自然と科学技術シリーズ)」の続きでもあるらしいが、前著を読んでいなくても十分に本書を楽しむことができる。

 

関連書籍

[amazonjs asin=”4540922254″ locale=”JP” title=”アレロパシー―多感物質の作用と利用 (自然と科学技術シリーズ)”]
Avatar photo

ゼロ

投稿者の記事一覧

女の子。研究所勤務。趣味は読書とハイキング ♪
ハンドルネームは村上龍の「愛と幻想のファシズム」の登場人物にちなんでま〜す。5 分後の世界、ヒュウガ・ウイルスも好き!

関連記事

  1. 化学者たちのネームゲーム―名付け親たちの語るドラマ
  2. 有機合成のナビゲーター
  3. 革新的医薬品の科学 薬理・薬物動態・代謝・安全性から合成まで
  4. まんがサイエンス
  5. できる研究者の論文生産術―どうすれば『たくさん』書けるのか
  6. 生涯最高の失敗
  7. 基礎から学ぶ機器分析化学
  8. 実験室の笑える?笑えない!事故実例集

注目情報

ピックアップ記事

  1. 研究リーダーがPJを成功に導く秘訣
  2. 味の素グループの化学メーカー「味の素ファインテクノ社」を紹介します
  3. レア RARE 希少金属の知っておきたい16話
  4. (-)-Cyanthiwigin Fの全合成
  5. 論説フォーラム「グローバル社会をリードする化学者になろう!!」
  6. ケムステニュース 化学企業のグローバル・トップ50が発表【2019年版】
  7. Grubbs第二世代触媒
  8. CAS Future Leaders Program 2022 参加者インタビュー
  9. 君には電子のワルツが見えるかな
  10. デミス・ハサビス Demis Hassabis

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2016年9月
 1234
567891011
12131415161718
19202122232425
2627282930  

注目情報

最新記事

その酸素、“本当にその場所”の値ですか? ニードル式酸素センサーを使ってみた!

突然ですが、「培養の再現性がなんか悪い」「同じ条件のはずなのに結果がズレる」といった経験はあ…

有機合成化学協会誌2026年4月号:activatable型分子プローブ・DMAPO触媒・カルビノールアニオン・アミコラマイシンの全合成・構造指向スクリーニング

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2026年4月号がオンラインで公開されています。…

第37回仙台シンポジウム参加登録開始のご案内

これまで「万有仙台シンポジウム」は、MSD生命科学財団の助成を受けて開催されてまいりましたが、同財団…

デイビッド・サーラ David Sarlah

デイビッド・サーラ(David Sarlah、1983年X月XX日–)は米国の有機化学者である。米国…

第13回慶應有機化学若手シンポジウム

概要主催:慶應有機化学若手シンポジウム実行委員会共催:慶應義塾大学理工学部・理工学研究科…

ラジカル機構で一挙に環化!光励起PdによるPAHの合成

可視光励起パラジウムを用いたアリールハライドと末端アルキンのラジカルカスケード環化を報告した。得られ…

【産総研・触媒化学研究部門】新卒・既卒採用情報

触媒部門では、「個の力」でもある触媒化学を基盤としつつも、異分野に積極的に関わる…

励起状態での配位結合解離を利用して二重CPLを示す分子を開発!

第701回のスポットライトリサーチは、名古屋大学 学際統合物質科学研究機構(IRCCS, 山口茂弘研…

化学・工学・情報系研究者も応募可能! 上原財団の研究助成が40周年で進化

上原記念生命科学財団の助成金をご存知でしょうか。私も2014年に本助成をいただき、その後、研究室を主…

【ナード研究所】新卒採用情報(2027年卒)

NARDでの業務は、「研究すること」。入社から、30代・40代・50代…と、…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP