[スポンサーリンク]

化学書籍レビュー

ノンコーディングRNA 〜 RNA分子の全体像を俯瞰する〜

[スポンサーリンク]

[amazonjs asin=”4759817255″ locale=”JP” title=”ノンコーディングRNA: RNA分子の全体像を俯瞰する (DOJIN BIOSCIENCE SERIES)”]

概要

大規模トランスクリプトーム解析が可能になり,ゲノムには莫大な種類のノンコーディングRNAが含まれていることが明らかになった.その後,これらのRNAはさまざまな仕組みで遺伝子発現を制御している実態が解き明かされた.生命の複雑さは,RNAによる高度な遺伝子制御ネットワークによって支えられていたのだ.現在のRNA研究に関する最新知見を基礎から解説.(化学同人のサイトより)

目次

PART I Classical ncRNA
1.tRNA
2.rRNA
3.snRNA
4.snoRNA
5.その他の安定低分子ncRNA(バクテリアも含む)

PART II Small ncRNA
6.miRNA
7.piRNA
8.クロマチン関連small RNA
9.動物発生とsmall RNA
10.植物発生とsmall RNA
11.繊毛虫のゲノム再編成
12.疾患とsmall RNA
13.miRNAによる病態診断
14.核酸医薬とsmall RNA
15.RNA分子種の進化

PART III Long ncRNA
16.トランスクリプトーム解析
17.ncRNA判定法(リボソームプロファイリング)
18.RNA化学修飾
19.RNA構造モチーフ
20.RNA結合タンパク質
21.ncRNAの生合成経路
22.ncRNAによるエピジェネティクス制御
23.エンハンサーRNA
24.arcRNAと核内構造
25.サーキュラーRNA
26.デコイncRNA
27.遺伝子量補償とncRNA
28.ncRNAによる発生制御
29.ncRNAと疾患
30.long ncRNAの進化と種特異性

対象

大学生・大学院生

内容

近年、ケミカルバイオロジー分野の研究が盛んとなり、生物学者との共同研究を行っている化学者も多いと思います。共同研究者の研究を正しく理解するためにも最新の生物学の研究を正しく理解することは重要だと考えます。その一つの例としてノンコーディングRNA (以下、ncRNA)が挙げられます。
20 世紀以降、RNA は様々な生命現象を特異的に制御する因子として再認識されています。数千種類のマイクロ RNA がヒトゲノムの 60% もの mRNA に塩基対形成よって結合し、その発現を制御することがわかってきました。一方、数万種とも言われる様々な長鎖ノンコーディングRNA (以下、ncRNA) がゲノムのいたるところから生み出され、クロマチンのエピジェネティック制御、制御因子のデコイ、核内構造体骨格など多岐にわたる機能を果たしていることが徐々にわかってきていますが、その全貌はまだまだベールに包まれたままです。ncRNA は比較的最近研究が盛んになった分野であるため、学部レベルの生物では数種類の ncRNA しか登場しないため、全容の把握が困難です。

本書は ncRNA の発見の経緯から最新の研究動向までをまとめた本です。 30 の章から構成されており、各章がそれぞれ 4〜8 つの項目で構成されています。各章の初めに Summary があるので全体像の把握が容易であり、読み進めていく途中で混乱することもないです。また各章の 1 つ目の項目は発見の経緯・背景を説明しているため興味を持って読み進めることができます。各章の最後の項目には、参考文献が記載されております。古い文献だけではなく 2015 年に発表された論文まで引用されているため、実際に研究している方にとっても使いやすいと思います。

ncRNA と言うと疾患との関連や遺伝子工学との結びつきの深い miRNA や si RNA が連想されると思いますが、一般には ncRNA として認知されていないものも多く存在します。 例えば、第1章で扱われている tRNA は高校生でも知っているものですが、ncRNA としての役割はあまり知られていないと思います。tRNA はタンパク質合成において遺伝暗号とアミノ酸を結びつけるアダプター分子として働くことは広く知られています。一方で、飢餓状態に陥った時に翻訳・転写を制御するシグナル分子として機能することは高校レベルの生物学ではあまり知られていないように思います。第1章では、細胞壁の形成や細胞死制御などの tRNA のタンパク質合成以外の機能を紹介しています。

ヒト以外にも動物(9章)、植物(10章)の ncRNA 研究や、核酸医薬(14章)、合成生物学(19章)など応用研究についても紹介されています。全部で355ぺージと分厚い本ですが、前述したように読みやすく、また巻末に専門用語の解説も付いているため、生物学を専門としないヒトにもオススメの一冊となります。

関連書籍

[amazonjs asin=”4758103518″ locale=”JP” title=”実験医学増刊 Vol.33 No.20 ノンコーディングRNAテキストブック〜最新の医学・創薬研究、方法論とマイルストーン論文200報”]
Avatar photo

ゼロ

投稿者の記事一覧

女の子。研究所勤務。趣味は読書とハイキング ♪
ハンドルネームは村上龍の「愛と幻想のファシズム」の登場人物にちなんでま〜す。5 分後の世界、ヒュウガ・ウイルスも好き!

関連記事

  1. 2009年7月人気化学書籍ランキング
  2. 海の生き物からの贈り物
  3. 有機化学命名法
  4. 化学装置~化学業界のリーディングマガジン~
  5. モビリティ用電池の化学: リチウムイオン二次電池から燃料電池まで…
  6. 未来を拓く多彩な色素材料
  7. 有機化学の理論―学生の質問に答えるノート
  8. シュライバー・アトキンス 無機化学 (上)・(下) 第 6 版

注目情報

ピックアップ記事

  1. 第22回 化学の複雑な世界の源を求めてーLee Cronin教授
  2. 万有製薬、つくば研究所を閉鎖
  3. ビールに使われている炭水化物を特定する方法が発見される
  4. 【早期申込特典あり|Amazonギフト5000円】第2弾!研究者向け研究シーズの事業化を学べるプログラムの応募を受付中 ★交通費・宿泊費補助あり
  5. 有機合成化学協会誌2018年12月号:シアリダーゼ・Brook転位・末端選択的酸化・キサンテン・ヨウ素反応剤・ニッケル触媒・Edoxaban中間体・逆電子要請型[4+2]環化付加
  6. 第四回 分子エレクトロニクスへの展開 – AP de Silva教授
  7. 谷口 透 Tohru Taniguchi
  8. (+)-ミンフィエンシンの短工程不斉全合成
  9. 【技術者・事業担当者向け】 マイクロ波がもたらすプロセス効率化と脱炭素化 〜ケミカルリサイクル、焼成、乾燥、金属製錬など〜
  10. 製薬系企業研究者との懇談会

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2016年11月
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
282930  

注目情報

最新記事

リサイクル・アップサイクルが可能な植物由来の可分解性高分子の開発

第694回のスポットライトリサーチは、横浜国立大学大学院理工学府(跡部・信田研究室)卒業生の瀬古達矢…

第24回次世代を担う有機化学シンポジウム

「若手研究者が口頭発表する機会や自由闊達にディスカッションする場を増やし、若手の研究活動をエンカレッ…

粉末 X 線回折の基礎知識【実践·データ解釈編】

粉末 X 線回折 (powder x-ray diffraction; PXRD) は、固体粉末の試…

異方的成長による量子ニードルの合成を実現

第693回のスポットライトリサーチは、東京大学大学院理学系研究科(佃研究室)の髙野慎二郎 助教にお願…

miHub®で叶える、研究開発現場でのデータ活用と人材育成のヒント

参加申し込みする開催概要多くの化学・素材メーカー様でMI導入が進む一…

医薬品容器・包装材市場について調査結果を発表

この程、TPCマーケティングリサーチ株式会社(本社=大阪市西区、代表取締役社長=松本竜馬)は、医…

X 線回折の基礎知識【原理 · 基礎知識編】

X 線回折 (X-ray diffraction) は、原子の配列に関する情報を得るために使われる分…

有機合成化学協会誌2026年1月号:エナミンの極性転換・2-メチル-6-ニトロ安息香酸無水物(MNBA)・細胞内有機化学反応・データ駆動型マルチパラメータスクリーニング・位置選択的重水素化法

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2026年1月号がオンラインで公開されています。…

偶然と観察と探求の成果:中毒解毒剤から窒素酸化物を窒素分子へ変換する分子へ!

第692回のスポットライトリサーチは、同志社大学大学院理工学研究科(小寺・北岸研究室)博士後期課程3…

嬉野温泉で論文執筆缶詰め旅行をしてみた【化学者が行く温泉巡りの旅】

論文を書かなきゃ!でもせっかくの休暇なのでお出かけしたい! そうだ!人里離れた温泉地で缶詰めして一気…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP