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ケミカルバイオロジー

吉田 優 Suguru Yoshida

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吉田 優(よしだ すぐる)は、日本の化学者。専門は、有機合成化学、ケミカルバイオロジー。2026年現在、東京理科大学先進工学部生命システム工学科 教授。第34回ケムステVシンポ「日本のクリックケミストリー」講師。
ORCID No. 0000-0001-5888-9330。
研究室 HP: https://s-yoshida-lab.online

経歴

2004年3月  東京大学理学部化学科 卒業(指導教員 奈良坂紘一 教授)
2006年3月  東京大学大学院理学系研究科化学専攻 修士課程修了(指導教員 奈良坂紘一 教授)
2009年3月  京都大学大学院工学研究科材料化学専攻博士後期課程修了 博士(工学)取得(指導教員 大嶌幸一郎 教授)
2008年4月  日本学術振興会・特別研究員 (DC)
2009年4月  日本学術振興会特別研究員PD
2009年4月  九州大学先導物質化学研究所 博士研究員(研究室主宰者 友岡克彦 教授)
2009年12月  ハワイ大学マノア校 博士研究員(Prof. M. A. Tius)
2010年4月  東京医科歯科大学 (現・東京科学大学) 生体材料工学研究所 助教(研究室主宰者 細谷孝充 教授)
2015年7月  東京医科歯科大学 生体材料工学研究所 准教授(研究室主宰者 細谷孝充 教授)
2017年8月〜2019年7月  文部科学省 研究振興局 学術調査官(兼任)
2017年10月〜2021年3月  早稲田大学先進理工学部 非常勤講師(兼任)
2021年4月  東京理科大学先進工学部 准教授(研究室主宰者)
2021年4月  東京理科大学先進工学部 教授

受賞

2012年  有機合成化学協会ADEKA研究企画賞
2013年  日本ケミカルバイオロジー学会 第8回年会 ポスター賞
2015年  日本化学会第95春季年会 若い世代の特別講演賞
2015年  第15回 天然物化学談話会奨励賞
2016年  東京医科歯科大学 優秀研究賞
2017年  日本化学会 第66回 進歩賞
2019年  Thieme Chemistry Journals Award
2019年  平成31年度科学技術分野の文部科学大臣表彰 若手科学者賞
2022年  長瀬研究振興賞
2022年  宇部興産学術振興財団 第62回学術奨励賞
2022年 BCSJ賞
2025年   BCSJ賞

研究内容

有機化学の可能性をまだまだ大きく拡げられるはず。新しい次の一歩で、周辺の研究分野にも革新をもたらす強い力が有機化学にあるはず。ライフサイエンス研究を加速する手法や分子の開発を念頭に、有機合成化学やケミカルバイオロジーにおける新手法の開発に関して幅広く研究しています。特に、多彩な元素の特性を引き出す独自のアプローチで、個別の課題解決だけでなく有機化学や多様な関連分野に革新をもたらす新技術の創出を目指しています。

1. クリックケミストリー制御法の創成
クリック反応は、2分子を信頼して連結するために役立つ手法です。吉田研では、クリック反応を制御して利用するための基盤技術の開発や、クリック反応を繰り返し利用することで、シンプルな出発原料の組み合わせにより、多様性を一挙に増大させられる合成手法の開発に取り組んでいます。

◇ クリック反応性官能基の保護法
アジドとアルキンから、五員環のトリアゾール環を形成する反応は、クリック反応を代表する変換です。これまでに、アジドや環状アルキンのクリック反応性を抑える保護法を開発してきました1, 2。これらの保護法を利用した有機合成手法に加え、クリック反応に利用できる様々な官能基を保護する手法の開発に取り組んでいます。

◇ 集積型クリック反応
クリック反応に関する独自の知見を駆使することで、クリック反応を繰り返し行う多成分集積法を開発しています。これまでに、アジド基に加え、アルキンやアクリル酸アミドといった多彩な官能基の反応性に注目し、クリック反応の繰り返しによって、シンプルな出発原料を組み合わせ、多様性に富んだ生成物を効率的に合成する手法を開発してきました3。

◇ 新規クリック反応の開拓
ヘテロ元素の特性に注目し、新しいクリック反応の開発にも取り組んでいます。これまでに、チオフェンジオキシドの環状アルキンに対する高い反応性を見いだしました4。これをアジド基と組み合わせることで、3種の環状アルキンを順に混ぜるだけで集積できる手法の開発にも成功しました。また、かさ高く電子不足な芳香族アジドを利用すると、ホスフィンとの反応で生じるアザイリドが極めて高い安定性を示すことを見つけました5。この反応が、生細胞中でも進行することも明らかにできています。

2. 短寿命化学種を利用した有機合成化学の新展開
有機化学は長い歴史の中で発展してきましたが、従来法では合成困難な分子が未だに数多く存在します。生物活性化合物の創製研究などにでも、合成自体がボトルネックとなる場合が少なくありません。従って、新たな分子変換技術は、創薬研究等を加速するための切り札になる重要な研究課題です。これに対して、吉田研では、高反応性のアラインやカチオン性中間体を経ることで、高難度な分子変換の実現を目指しています。

◇ アラインの変換
置換基が密集した場合をはじめ、合成が容易でないベンゼン類は未だに多く、課題は山積しています。これに対して、高歪み分子であるアラインを中間体として用いる合成化学を発展させ、従来法ではアクセスしにくかった多置換ベンゼン類の簡便合成法を開発してきました6, 7。さらに、アラインに関する一連の研究で培った知見をもとに、シクロヘプチンなどの短寿命環状アルキンを利用した合成化学も研究しています。

◇ C–F結合の切断を経る変換
トリフルオロメチル基は、炭素–フッ素結合が強固で、幅広い条件下で安定な官能基です。最近、トリフルオロメチル基の炭素–フッ素結合を1つだけ、選択的に変換できる手法の開発に成功しました。この高難度分子変換の鍵は、オルト位のヒドロシリル基から、シリルカチオンを発生させるデザインです。しかも、このケイ素部位は、引き続く変換にも有用な官能基です。このコンセプトのもと、従来法では難しい有機フッ素化合物合成を可能にする新手法を開発できました8。また、カチオン性中間体を経て、トリフルオロメチル基の炭素–フッ素結合を3つとも切断しながら、ケトン類を合成する手法の開発にも成功しました9。

◇ 硫黄-酸素結合の求電子的活性化を利用した変換
硫黄-酸素結合の求電子的活性化を利用した変換の開発に取り組んでいます。例えば、スルフィン酸エステルの求電子的活性化を経る、アリルスルホキシド類の新規合成法の開発に成功しました10。この変換の中間体である、アルコキシスルホニウム中間体を単離できることも明らかにしています。さらに、この中間体の還元によって、アリルスルフィド類も簡便合成できるようになりました。

3. 典型元素を利用した新しい有機合成手法の開発

硫黄やリンなどの第3周期元素を含んだ化合物を効率的に合成する新手法の開発に取り組んでいます。また、硫黄やリンを有する化合物合成に役立つ、有用なビルディングブロック(合成素子)も開発しています。このような反応開発を通して、まだ見ぬ構造・骨格の分子の簡便合成法により、多彩な元素を自在に配置した生物活性化合物の開発につながる研究を行っています。

◇ 有機金属化学にもとづく含硫黄化合物の合成法
チオスルホナートを利用することで、スルフィド類を合成する効率的かつ実用的な手法の開発に取り組んでいます。特に、悪臭を伴うことなく、アリールおよびアルケニルスルフィドを簡便合成できる手法を開発してきました。これまでに、銅やロジウムを触媒として用いる芳香族スルフィド合成法の開発に成功しています11。この触媒反応やアリールリチウム中間体を経た手法により、チオスルホナートを用いてチオキサントンを効率的に合成できることを明らかにしてきました12。末端アルキンとの反応によるアルキニルスルフィド合成法の開発にも成功しています。また、スルフィン酸エステルを基質としたクロスカップリング反応の開発にも取り組んでいます13。

◇ 有機リン化合物の簡便合成のための新規ビルディングブロックの開発
クリックケミストリーなどにおける、有機リン化合物を活用した変換だけでなく、有機リン化合物の合成に役立つ手法開発にも取り組んでいます。多様性に富んだ構造の有機リン化合物の精密合成を可能にする手法を開発しています14。さらに、こういった合成化学的な切り口での研究を通して、有機リン化合物の新たな特性を引き出してきました。

コメント

「アイディア」に名前を書き込むことはできませんが、研究内容から「この仕事をしているのは吉田研の学生さんだな」と楽しんでもらえるような、ちょっと変わった切り口での研究を、理科大葛飾キャンパスから発信していきたいと思っています。

関連文献

  1. a) T. Meguro, *S. Yoshida, K. Igawa, K. Tomooka, *T. Hosoya, Org. Lett. 2018, 20, 4126. https://doi.org/10.1021/acs.orglett.8b01692
    b) T. Aimi, T. Meguro, A. Kobayashi, *T. Hosoya, *S. Yoshida, Chem. Commun. 2021, 57, 6062. https://doi.org/10.1039/D1CC01143J
  2. a) *S. Yoshida, Y. Hatakeyama, K. Johmoto, H. Uekusa, *T. Hosoya, Am. Chem. Soc. 2014, 136, 13590. https://doi.org/10.1021/ja507660x
    b) *S. Yoshida, T. Kuribara, H. Ito, T. Meguro, Y. Nishiyama, F. Karaki, Y. Hatakeyama, Y. Koike, I. Kii, *T. Hosoya, Chem. Commun. 2019, 55, 3556. https://doi.org/10.1039/C9CC01113G
    c) K. Adachi, T. Meguro, Y. Sakata, K. Igawa, K. Tomooka, T. Hosoya, *S. Yoshida, Chem. Commun. 2020, 56, 9823. https://doi.org/10.1039/D0CC04606J 
    d) N. Makio, T. Kuribara, K. Adachi, Y. Hatakeyama, T. Meguro, Y. Sakata, K. Igawa, K. Tomooka, T. Hosoya, *S. Yoshida, Chem. Commun. 2020, 56, 11449. https://doi.org/10.1039/D0CC05182A
  3. a) H. Takemura, S. Goto, T. Hosoya, *S. Yoshida, Chem. Commun. 2020, 56, 15541. https://doi.org/10.1039/D0CC07212E
    b) H. Takemura, G. Orimoto, A. Kobayashi, T. Hosoya, *S. Yoshida, Org. Biomol. Chem. 2022, 20, 6007. https://doi.org/10.1039/D2OB00151A
  4. a) T. Meguro, *S. Yoshida, *T. Hosoya, Chem. Lett. 2017, 46, 1137. https://doi.org/10.1246/cl.170426 
    b) T. Meguro, Y. Sakata, T. Morita, T. Hosoya, *S. Yoshida, Chem. Commun. 2020, 56, 4720. https://doi.org/10.1039/D0CC01810D
  5. a) T. Meguro, N. Terashima, H. Ito, Y. Koike, I. Kii, *S. Yoshida, *T. Hosoya, Chem. Commun. 2018, 54, 7904. https://doi.org/10.1039/C8CC00179K 
    b) N. Terashima, Y. Sakata, T. Meguro, T. Hosoya, *S. Yoshida, Chem. Commun. 2020, 56, 14003. https://doi.org/10.1039/D0CC06551J
  6. Matsuzawa, T. Hosoya, *S. Yoshida, Chem. Sci. 2020, 11, 9691. https://doi.org/10.1039/D0SC04450D
  7. Selected examples:
    a) T. Kobayashi, T. Hosoya, *S. Yoshida, J. Org. Chem. 2020, 85, 4448. https://doi.org/10.1021/acs.joc.0c00172 
    b) Y. Nakamura, Y. Sakata, T. Hosoya, *S. Yoshida, Org. Lett. 2020, 22, 8505. https://doi.org/10.1021/acs.orglett.0c03106 
    c) H. Nakajima, Y. Hazama, Y. Sakata, K. Uchida, T. Hosoya, *S. Yoshida, Chem. Commun. 2021, 57, 2621. https://doi.org/10.1039/D0CC08373A 
    d) M. Minoshima, K. Uchida, Y. Nakamura, T. Hosoya, *S. Yoshida, Org. Lett. 2021, 23, 1868. https://doi.org/10.1021/acs.orglett.1c00279 
    e) T. Kobayashi, T. Hosoya, *S. Yoshida, Bull. Chem. Soc. Jpn. 2021, 94, 1823.  https://doi.org/10.1246/bcsj.20210149

  8. a) *S. Yoshida, K. Shimomori, Y. Kim, *T. Hosoya, Chem., Int. Ed. 2016, 55, 10406. https://doi.org/10.1002/anie.201604776
    b) Y. Kim, K. Kanemoto, K. Shimomori, T. Hosoya, *S. Yoshida, Chem. Eur. J. 2020, 26, 6136. https://doi.org/10.1002/chem.202001315
    c) R. Idogawa, Y. Kim, K. Shimomori, T. Hosoya, *S. Yoshida, Org. Lett. 2020, 22, 9292. https://doi.org/10.1021/acs.orglett.0c03529 
    d) R. Idogawa, A. Kobayashi, Y. Kim, K. Shimomori, T. Hosoya, *S. Yoshida, Chem. Commun. 2022, 58, 3521. https://doi.org/10.1039/D1CC06761C
  9. Ikeda, T. Matsuzawa, T. Morita, T. Hosoya, *S. Yoshida, Chem. Eur. J. 2020, 26, 12333. https://doi.org/10.1002/chem.202001816
  10. a) A. Kobayashi, T. Matsuzawa, T. Hosoya, *S. Yoshida, Chem. Commun. 2020, 56, 5429. https://doi.org/10.1039/D0CC02253E
    b) A. Kobayashi, T. Matsuzawa, T. Hosoya, *S. Yoshida, Chem. Lett. 2020, 49, 813. https://doi.org/10.1246/cl.200285
  11. a) *S. Yoshida, Y. Sugimura, Y. Hazama, Y. Nishiyama, T. Yano, S. Shimizu, *T. Hosoya, Chem. Commun. 2015, 51, 16613. https://doi.org/10.1039/C5CC07463K
    b) K. Kanemoto, Y. Sugimura, S. Shimizu, *S. Yoshida, *T. Hosoya, Chem. Commun. 2017, 53, 10640. https://doi.org/10.1039/C7CC05868C
    c) K. Kanemoto, *S. Yoshida, *T. Hosoya, Chem. Lett. 2018, 47, 85. https://doi.org/10.1246/cl.170907 
    d) K. Kanemoto, *S. Yoshida, *T. Hosoya, Org. Lett. 2019, 21, 3172. https://doi.org/10.1021/acs.orglett.9b00875
  12. a) K. Mutsuura, Y. Sakata, K. Uchida, T. Hosoya, *S. Yoshida, Chem. Lett. 2020, 49, 753. https://doi.org/10.1246/cl.200190
    b) A. Kobayashi, T. Matsuzawa, T. Hosoya, *S. Yoshida, Chem. Lett. 2021, 50, 1624. https://doi.org/10.1246/cl.210293
  13. Suzuki, K. Kanemoto, Y. Nakamura, T. Hosoya, *S. Yoshida, Org. Lett. 2021, 23, 3793. https://doi.org/10.1021/acs.orglett.1c01292
  14. a) Y. Nishiyama, Y. Hazama, *S. Yoshida, *T. Hosoya, Org. Lett. 2017, 19, 3899. https://doi.org/10.1021/acs.orglett.7b01796
    b) Y. Nishiyama, T. Hosoya, *S. Yoshida, Chem. Commun. 2020, 56, 5771. https://doi.org/10.1039/D0CC02039G

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創薬化学者と薬局薬剤師の二足の草鞋を履きこなしていた、四年制薬学科の生き残り。現在は私大薬学部教員として実験に邁進中。
薬を「創る」と「使う」の双方からサイエンスに向き合っています。
しかし趣味は魏志倭人伝の解釈と北方民族の古代史という、あからさまな文系人間。
どこへ向かうかはfurther research is needed.

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