[スポンサーリンク]

一般的な話題

MEDCHEM NEWS 30-4号「ペプチド化学」

[スポンサーリンク]

 

日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS 、今回は 2021年11月よりオープンアクセス化された 30-4 号 202011月発行)の紹介です。本号ではペプチド化学特集が組まれています。一大モダリティであるペプチド関連創薬に携わる方には是非読んでいただきたい特集です。
各項目のタイトルおよび画像から該当記事へ飛べます (新しいタブで開きます) ので、隅々までご覧ください。

■ 巻頭言

患者満足度の向上のために:PMDAの新たな取り組み

藤原 康弘*
*独立行政法人医薬品医療機器総合機構 理事長

本号の巻頭言は、PMDA の藤原康弘理事長よりご寄稿いただきました。医薬品等の迅速審査やレギュラトリーサイエンスの推進など患者さんの満足度アップに向けた PMDA の取り組みが紹介されています。

■ 創薬最前線

アカデミア創薬を牽引するAMED創薬ブースターとDISCについて

近澤 和彦*, 寺坂 忠嗣**, 德井 太郎***
*国立研究開発法人日本医療研究開発機構 創薬事業部
**国立研究開発法人日本医療研究開発機構 創薬事業部 創薬企画・評価課
***第一三共RDノバーレ株式会社

AMED では、大学などアカデミアの基礎研究から生み出された研究成果の創薬実用化を積極的に支援しています。DISC は、国内製薬企業から集められた大規模な化合物ライブラリーの提供とハイスループットスクリーニングの実施を支援する産学連携のユニークなコンソーシアムです。DISC の支援によりアカデミア創薬にチャンレンジしてみたい研究者の方は、ぜひご一読ください。

■ WINDOW

人工知能(AI)創薬の最前線と海外製薬企業からの視線

田中 大輔*
*Exscientia株式会社

Exscientia 社の AI 創薬プラットフォームならびにその実用例の紹介になります。AI 技術の活用により、既存標的の構造最適化のみならず、新たな創薬コンセプトの創出も実現可能となったことを実感できます。AI をどうやって活用し新たな医薬品を提供できるか、創薬の探索研究を進めている方には有用な内容となっていますので、ぜひご一読ください。

■ ESSEY 特集:創薬の未来を拓くペプチド化学の新展開

ペプチド化学特集にあたって

林 良雄*
*東京薬科大学 薬学部 薬品化学教室

本号の特集は「創薬の未来を拓くペプチド化学の新展開」。緒言は、東京薬科大学 林 良雄 先生による「ペプチド化学特集にあたって」です。ペプチド創薬を支える最新のペプチド合成化学に関する 編の研究をご紹介。古くて新しいペプチド化学にまだまだ発展の可能性を感じます。

化学選択的ライゲーション反応を利用したペプチド・タンパク質合成の現状

大高 章*
*徳島大学 大学院医歯薬学研究部

Native Chemical Ligation (NCL) 法は、ペプチドチオエステルと N末端システインペプチド等を無保護の縮合できる方法で、今では 150 残基を超えるタンパク質の合成が可能となりました。本稿では、NCL 法の基礎から、Ser/Thr ライゲーション、KAHA ライゲーションに至るまでが概説されています。タンパク質の化学合成に興味をお持ちの方は、ぜひご一読下さい。

糖タンパク質の化学合成

岡本 亮*, 真木 勇太*, 梶原 康宏*
*大阪大学 大学院理学研究科 化学専攻/基礎理学プロジェクトセンター

タンパク質は生体内で糖鎖が付与されることがあり、この糖鎖修飾によってタンパク質の安定性や活性が変化する例が知られています。しかしながら、修飾される糖鎖は混合物であることから、糖鎖修飾の研究は複雑になります。本稿では、単一の糖鎖を付与したタンパク質を化学合成する取り組みが紹介されています。

マイクロフロー合成法を駆動力とするペプチド合成の革新

布施 新一郎*
*名古屋大学 大学院創薬科学研究科

近年中分子創薬の隆盛で特殊ペプチドが注目を集めている中、マイクロフロー合成法を駆使したアミド化反応の開発に関する興味深い成果がわかりやすく紹介されています。ペプチド創薬に技術革新をもたらす次なる一手として大いに注目されます。

ペプチド化学合成

山本 尚*
*中部大学 先端研究センター 分子性触媒研究センター

ラセミ化、保護・脱保護、原子効率の低さなどの従来のリニア合成法におけるペプチド合成の問題点を克服し、自在の場所でライゲーション可能な短段階・収束型のルイス酸法によるペプチド合成法の開発に関する論文です。山本先生曰く「Merrifield の呪縛からの解放」、ぜひご一読ください。

■ SEMINAR

相分離生物学で考える創薬の視点

白木 賢太郎*
*筑波大学 数理物質系

相分離生物学は、細胞内のさまざまな生命現象を解釈する新しい分野です。本稿では、タンパク質の液-液相分離の基本的な性質が紹介されています。さらに、アルツハイマー病との関連が議論されているアミロイドβの形成過程について、液相分離の視点から考察されています。

■ COFFEE BREAK

糖尿病ケアアプリ「TOMOCO」開発秘話

眞部 史朗*
*田辺三菱製薬株式会社 デジタルトランスフォーメーション部

本稿では、医薬品開発を主とする老舗製薬会社が「楽しく生活習慣改善に取り組めるアプリを作ろう」をコンセプトに糖尿病ケアアプリを開発した裏話を紹介しています。新しい価値創造に大切なものは何かを考えさせられる COFFEE BREAK になると思います。ぜひご一読ください。

■ REPORT

学術シンポジウムをオンラインで開催してわかったこと

瀧川 紘*
*京都大学 大学院薬学研究科 薬品合成化学分野

新型コロナウイルスの影響によりオンライン学会がかなり一般的になりましたが、いざ運営するとなると大変な苦労を伴います。本稿では、オンライン学会創生期に薬学会年会シンポジウムをケムステVシンポとして開催し、大成功させた経験談が記されています。1,000 人規模のオンライン学会を低コストで開催できる大変優れた方法が紹介されています。

・第 7 回 ケムステVシンポ 会告記事はコチラ
・第 7 回 ケムステVシンポ 動画アーカイブ (YouTubeケムステチャンネル) はコチラ
ケムステチャンネルへのご登録をお願いします!

紹介記事作成者からのひとこと

毎回異なる切り口で良質な話題を提供している MEDCHEM NEWS、今回も読み応えのある記事が盛り沢山です。創薬化学に関する定期刊行誌って意外と少ないというか、ほぼ無いも同然なんですよね。そんな中のレアな雑誌である MEDCHEM NEWS は創薬化学を志す学生・院生にぜひとも読んでいただきたいです。特に今回オープンアクセスとなった 30-4 号はアカデミアの記事が多いので、比較的読みやすいかと思います。またこれより以前のバックナンバーもオープンアクセス化されておりますので、どんどん閲覧し産・官・学のさまざまな取り組みについて学んでみてはいかがでしょうか。2021年11月29日 (月) からは 2年に一度のメディシナルケミストリーの国際学会「AIMECS 2021」が開催されます。ぜひ合わせて創薬化学にどっぷり浸ってみてください。

MEDCHEM NEWS 紹介記事バックナンバー

MEDCHEM NEWS 30-3号

関連書籍

[amazonjs asin=”4840745641″ locale=”JP” title=”メディシナルケミストリー用語解説310″]

本号の「BOOKS紹介」より

[amazonjs asin=”4840752451″ locale=”JP” title=”くすりに携わるなら知っておきたい! 医薬品の化学”] [amazonjs asin=”475981390X” locale=”JP” title=”生命機能に迫る分子化学 (CSJカレントレビュー)”]
Avatar photo

DAICHAN

投稿者の記事一覧

創薬化学者と薬局薬剤師の二足の草鞋を履きこなす、四年制薬学科の生き残り。
薬を「創る」と「使う」の双方からサイエンスに向き合っています。
しかし趣味は魏志倭人伝の解釈と北方民族の古代史という、あからさまな文系人間。
どこへ向かうかはfurther research is needed.

関連記事

  1. 【技術者・事業担当者向け】 マイクロ波がもたらすプロセス効率化と…
  2. タミフルの効果
  3. 【Vol.1】研究室ってどんな設備があるの? 〜ロータリーエバポ…
  4. 有機レドックスフロー電池 (ORFB)の新展開:高分子を活物質に…
  5. 電気化学と金属触媒をあわせ用いてアルケンのジアジド化を制す
  6. 「同時多発研究」再び!ラジカル反応を用いたタンパク質の翻訳後修飾…
  7. 私がケムステスタッフになったワケ(5)
  8. 第29回 ケムステVシンポ「論文を書こう!そして…」…

注目情報

ピックアップ記事

  1. ラジカル重合の弱点を克服!精密重合とポリマーの高機能化を叶えるRAFT重合
  2. イグノーベル賞2022が発表:化学賞は無かったけどユニークな研究が盛りだくさん
  3. ポリメラーゼ連鎖反応 polymerase chain reaction(PCR)
  4. 有機化学美術館へようこそ―分子の世界の造形とドラマ
  5. 有合化若手セミナーに行ってきました
  6. 治療応用を目指した生体適合型金属触媒:② 細胞外基質・金属錯体を標的とする戦略
  7. 上田 実 Minoru Ueda
  8. スティーブン・ジマーマン Steven C. Zimmerman
  9. 青色LED励起を用いた赤色強発光体の開発 ~ナノカーボンの活用~
  10. 学会会場でiPadを活用する①~手書きの講演ノートを取ろう!~

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2021年11月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930  

注目情報

最新記事

アクリルアミド類のanti-Michael型付加反応の開発ーPd触媒による反応中間体の安定性が鍵―

第622回のスポットライトリサーチは、東京理科大学大学院理学研究科(松田研究室)修士2年の茂呂 諒太…

エントロピーを表す記号はなぜSなのか

Tshozoです。エントロピーの後日談が8年経っても一向に進んでないのは私が熱力学に向いてないことの…

AI解析プラットフォーム Multi-Sigmaとは?

Multi-Sigmaは少ないデータからAIによる予測、要因分析、最適化まで解析可能なプラットフォー…

【11/20~22】第41回メディシナルケミストリーシンポジウム@京都

概要メディシナルケミストリーシンポジウムは、日本の創薬力の向上或いは関連研究分野…

有機電解合成のはなし ~アンモニア常温常圧合成のキー技術~

(出典:燃料アンモニアサプライチェーンの構築 | NEDO グリーンイノベーション基金)Ts…

光触媒でエステルを多電子還元する

第621回のスポットライトリサーチは、分子科学研究所 生命・錯体分子科学研究領域(魚住グループ)にて…

ケムステSlackが開設5周年を迎えました!

日本初の化学専用オープンコミュニティとして発足した「ケムステSlack」が、めで…

人事・DX推進のご担当者の方へ〜研究開発でDXを進めるには

開催日:2024/07/24 申込みはこちら■開催概要新たな技術が生まれ続けるVUCAな…

酵素を照らす新たな光!アミノ酸の酸化的クロスカップリング

酵素と可視光レドックス触媒を協働させる、アミノ酸の酸化的クロスカップリング反応が開発された。多様な非…

二元貴金属酸化物触媒によるC–H活性化: 分子状酸素を酸化剤とするアレーンとカルボン酸の酸化的カップリング

第620回のスポットライトリサーチは、横浜国立大学大学院工学研究院(本倉研究室)の長谷川 慎吾 助教…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP