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ケミカルバイオロジー

平井 剛 Go Hirai

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平井剛は、ケミカルバイオロジー応用を志向した擬天然物創製を研究している、日本の有機合成化学者である。九州大学大学院薬学研究院 教授。
第35回ケムステVシンポ「有機合成が拓く最先端糖化学」講師

経歴

2002 東北大学大学院理学研究科 博士課程修了(平間正博教授)
2002 東北大学多元物質化学研究所 助手(袖岡幹子教授)
2004 理化学研究所 研究員(袖岡幹子主任研究員)
2010 理化学研究所 専任研究員(袖岡幹子主任研究員)
2013 理化学研究所環境資源科学研究センター 兼務
2016 九州大学大学院薬学研究院 教授(現職)

受賞歴

2010年 第22回(2009年度)有機合成化学協会 「セントラル硝子研究企画賞」
2010年 第54回日本薬学会関東支部奨励賞
2010年 Asian Core Program Lectureship Award
2014年 有機合成化学奨励賞
2014年 GLYCOTOKYO2014奨励賞
2014年 Thieme Chemistry Journal Award 2015, Thieme Chemistry – Georg Thieme Verlag
2017年 長瀬振興研究奨励賞, 公益財団法人 長瀬科学技術振興財団

研究業績

研究テーマ1:擬複合糖質の開発

1)C-グリコシド型の擬複合糖質

糖鎖や複合糖質の機能は多岐に渡り、依然未解明部分が多い。平井先生は、糖鎖が生体内で分解されてしまうことに着目し、代謝耐性をもつアナログ(擬複合糖質)を開発し、ケミカルバイオロジー応用することを目指している。切断されるOグリコシド結合をCグリコシド結合に置き換えて分解耐性を獲得するとともに、糖鎖コンフォメーションの制御等を狙ってさらにF原子を導入したCHF-グリコシドを考案した。本分子設計を糖脂質であるガングリオシドGM3に適用し、CH2グリコシド1)CF2グリコシド2)よりも、CHFグリコシド(特に(S)-CHFグリコシド)が高い活性を示すことを実証した3)。本分子設計概念を、他の糖鎖・糖脂質に展開するため、近年アノマー位ラジカルを利用する「直接Cグリコシル化」法の開発を展開している4),5),6)

2)新規光親和性標識基の開発

光親和性標識法は、分子間相互作用を解明する強力な方法であり、ケミカルバイオロジー領域で多用されている。平井先生は、弱い糖タンパク質相互作用解析に適用できる、疎水性が低くコンパクトな光反応性基として、チエニル基置換型α-ケトアミドを見出した7)。近年、新たな光反応性基がいくつか見出されているが、ケト基励起型の光反応性基は約50年前のベンゾフェノンの発見以来となる。また最近、アルキン部を導入したminimalistプローブの開発にも成功した8)

C-グリコシド型擬複合糖質以外にも、平井先生は、糖加水分解酵素に対して阻害活性を示す擬複合糖質や、天然型複合糖質の生物活性を向上させる擬複合糖質など、ケミカルバイオロジー研究に利用可能な分子群の開発も展開している。

研究テーマ2:天然物を起点とした生物活性分子創製

1)Physalinを起点とするNF-kB阻害剤

ホオズキ成分physalin Bのユニークな右側構造の生物機能を見出すため、平井先生は、DEFGH環部のみを抜き出した分子を着想し、この合成を独自に見出したドミノ型反応を駆使して達成した9),10)。ホオズキから単離した天然物と合成化合物を用い、NF-κB活性化(炎症などに関与)阻害に対する構造作用機序相関研究を展開した。その結果、Bn-DEFGHが中程度の阻害活性を示し、天然物同様NF-κBタンパク質の核移行とDNA結合を阻害することを見出した11)。このことから、DEFGH環部に疎水基を導入した擬天然物が非ステロイド型NF-κB阻害剤となると考え、天然物physalin Bの活性に匹敵するAd-DFGHの開発に成功し、その過程で超効率的合成法を見出した12)

2)全立体異性体合成によるSpectomycin、RK460の構造活性相関研究

天然物spectomycinおよび人工分子RK460の構造活性相関研究を志向し、これら化合物の立体異性体をすべて合成するための合成方法論を開発した13)Spectomycinに関しては、Pd触媒を用いるホウ素化-分子内アリルホウ素化反応と、ベンジル位直接酸化法によって全異性体全合成を達成した。これらの合成から、それぞれの活性発現に重要な構造的要素を明らかにした14)

3)RK-682を起点とするタンパク質脱リン酸化酵素(プロテインホスファターゼ)阻害剤

RK-682は、両特異性プロテインホスファターゼであるVHR等の阻害剤として見出されていたが、酵素選択性、細胞膜透過性の改善が求められていた。平井先生は、RK-682を基に設計した「中性構造のリン酸基模倣分子」をコア構造とする目的志向型ライブラリーを構築し、その中からVHR選択的阻害剤RE-12CDC25A/B選択的阻害剤RE-44を見出した15),16),17),18)。また、共有結合型阻害剤を創製し、RE-44のユニークな阻害形式を明らかにした。RE-12およびRE-44は現在富士フイルム和光純薬()より市販されている(RE-12RE-44)。

 

名言集

美味しいものは糖と油(脂質)でできている
(学部生などへの研究説明時によく言っていること)

関連文献

  1. Watanabe T, Hirai G, Kato M, Hashizume D, Miyagi T, Sodeoka M. Synthesis of CH2-linked alpha(2,3)sialylgalactose analogue: on the stereoselectivity of the key Ireland-Claisen rearrangement. Org. Lett. 200810, 4167–4170.
  2. Hirai G, Watanabe T, Yamaguchi K, Miyagi T, Sodeoka M. Stereocontrolled and convergent entry to CF2-sialosides: synthesis of CF2-linked ganglioside GM4. J Am Chem Soc. 2007, 129, 15420–15421. 
  3. Hirai G, Kato M, Koshino H, et al. Ganglioside GM3 Analogues Containing Monofluoromethylene-Linked Sialoside: Synthesis, Stereochemical Effects, Conformational Behavior, and Biological Activities. JACS Au. 2021, 1, 137–146. 
  4. Kiya N, Hidaka Y, Usui K, Hirai G. Synthesis of CH2-Linked α(1,6)-Disaccharide Analogues by α-Selective Radical Coupling C-Glycosylation. Org. Lett. 2019, 21, 1588–1592.
  5. Hidaka Y, Kiya N, Yoritate M, Usui K, Hirai G. Synthesis of CH2-linked α-galactosylceramide and its glucose analogues through glycosyl radical-mediated direct C-glycosylation. Chem. Commun. 2020, 56, 4712–4715. 
  6. Takeda D, Yoritate M, Yasutomi H, et al. β-Glycosyl Trifluoroborates as Precursors for Direct α-C-Glycosylation: Synthesis of 2-Deoxy-α-C-glycosides. Org. Lett. 2021, 23, 1940–1944.
  7. Ota E, Usui K, Oonuma K, et al. Thienyl-Substituted α-Ketoamide: A Less Hydrophobic Reactive Group for Photo-Affinity Labeling. ACS Chem. Biol. 2018, 13, 876–880.
  8. Moriyama T, Mizukami D, Yoritate M, et al. Effect of Alkynyl Group on Reactivity in Photoaffinity Labeling with 2-Thienyl-Substituted α-Ketoamide. Chem. Eur. J. 2022, 28, e202103925.
  9. Ohkubo M, Hirai G, Sodeoka M. Synthesis of the DFGH ring system of type B physalins: highly oxygenated, cage-shaped molecules. Angew. Chem. Int. Ed. 2009, 48, 3862–3866.
  10. Morita M, Hirai G, Ohkubo M, et al. Kinetically controlled one-pot formation of DEFGH-rings of type B physalins through domino-type transformations. Org Lett. 2012, 14, 3434–3437.
  11. Ozawa M, Morita M, Hirai G, et al. Contribution of Cage-Shaped Structure of Physalins to Their Mode of Action in Inhibition of NF-κB Activation. ACS Med. Chem. Lett. 2013, 730–735.
  12. Yoritate M, Morita Y, Gemander M, et al. Synthesis of DFGH-Ring Derivatives of Physalins via One-Pot Construction of GH-Ring and Evaluation of Their NF-κB-Inhibitory Activity. Org. Lett. 2020, 22, 8877–8881.
  13. Mikame Y, Yoshida K, Hashizume D, et al. Synthesis of All Stereoisomers of RK460 and Evaluation of Their Activity and Selectivity as Abscisic Acid Receptor Antagonists. Chem. Eur. J. 2019, 25, 3496–3500.
  14. Nomura Y, Thuaud F, Sekine D, et al. Synthesis of All Stereoisomers of Monomeric Spectomycin A1/A2 and Evaluation of Their Protein SUMOylation-Inhibitory Activity. Chemistry. 2019, 25, 8387–8392.
  15. Tsuchiya A, Asanuma M, Hirai G, et al. CDC25A-inhibitory RE derivatives bind to pocket adjacent to the catalytic site. Mol. Biosyst. 2013, 9, 1026–1034.
  16. Thuaud F, Kojima S, Hirai G, et al. RE12 derivatives displaying Vaccinia H1-related phosphatase (VHR) inhibition in the presence of detergent and their anti-proliferative activity against HeLa cells. Bioorg. Med. Chem. 2014, 22, 2771–2782.
  17. Hirai G, Tsuchiya A, Koyama Y, et al. Development of a Vaccinia H1-related (VHR) phosphatase inhibitor with a nonacidic phosphate-mimicking core structure. ChemMedChem. 20116, 617–622.
  18. Tsuchiya A, Hirai G, Koyama Y, et al. Dual-Specificity Phosphatase CDC25A/B Inhibitor Identified from a Focused Library with Nonelectrophilic Core Structure. ACS Med. Chem Lett. 2012, 3, 294–298.

関連書籍

関連動画

第35回 ケムステVシンポ(coming soon !!)

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有機合成を専門とする教員。将来取り組む研究分野を探し求める「なんでも屋」。若いうちに色々なケミストリーに触れようと邁進中。

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