[スポンサーリンク]

世界の化学者データベース

ウィリアム・リプスコム William N. Lipscomb Jr.

[スポンサーリンク]

 

ウィリアム・ヌン・リプスコム Jr.(William Nunn Lipscomb Jr.、1919年12月9日-2011年4月14日)は、アメリカの有機化学者・無機化学者である。1976年に「ボランの化学構造の研究」の業績にてノーベル化学賞を受賞(画像:The Guardian)。

経歴

オハイオ州のクリーブランドに生まれる。

1941 ケンタッキー大学化学科 卒業
1946 カリフォルニア工科大学 博士号取得(Linus Pauling教授)
1946 ミネソタ大学に勤務
1959 ハーバード大学 教授
1990 ハーバード大学 名誉教授

 

受賞歴

1937 Bausch and Lomb honorary science award
19xx ACS Award for Distinguished Service in the Advancement of Inorganic Chemistry
19xx Peter Debye Award
1946 Sullivan Medallion (Kentuckey University)
1965 Distinguished Alumni Centennial Award (Kentuckey University)
1971 the Abbott and James Lawrence Professorship
1971 the George Ledlie Prize
1976 ノーベル化学賞

 

研究概要

ホウ素化合物の化学結合に関する研究

特にボラン(BH3)の構造解明に果たした寄与は歴史的なものである。

ボランは単量体として存在しているのではなく、二量体のジボラン(B2H6)として存在している。これはボランの空軌道がそのまま存在するよりも、ヒドリドによって埋められている方が有利だからである。

Lipscombは絶対零度近くの極低温におけるX線結晶構造解析技術を用いて、各種ボロヒドリド化合物の構造を推定し、三中心二電子結合(three centered two electron bond)と呼ばれる化学結合の存在を実証した。

この考え方は後の非古典的カルボカチオンや金属クラスターの構造化学を理解するために不可欠な示唆を与えるものであった。そのインパクトの大きさが評価され、彼には1976年のノーベル化学賞が授与された。

 

コメント&その他

1. 曽祖父、祖父、父はいずれも物理学者。母は家政婦。
2. 音楽にも才能を示し、ミネアポリス市立楽団の主席クラリネット奏者を努め、またボストン交響楽団でも演奏を行っていた。

 

名言集

 

関連動画

“The Life and Work of Linus Pauling (1901-1994): A Discourse on the Art of Biography.”

 

関連文献

[1] Orbituary: Nature 2011, 473, 286.

 

関連書籍

[amazonjs asin=”0841237360″ locale=”JP” title=”Structures and Mechanisms: From Ashes to Enzymes (Acs Symposium Series)”]

 

外部リンク

Avatar photo

Green

投稿者の記事一覧

静岡で化学を教えています。よろしくお願いします。

関連記事

  1. ドナルド・トゥルーラー Donald G. Truhlar
  2. 有賀 克彦 Katsuhiko Ariga
  3. ヴィクター・アンブロス Victor Ambros
  4. トーマス・レクタ Thomas Lectka
  5. 伊藤 幸裕 Yukihiro Itoh
  6. トーマス・ホイ Thomas R. Hoye
  7. グレッグ・バーダイン Gregory L. Verdine
  8. 吉田善一 Zen-ichi Yoshida

注目情報

ピックアップ記事

  1. 偶然生まれた新しい青色「YInMnブルー」の油絵具が日本で限定発売される
  2. 【追悼企画】不斉酸化反応のフロンティアー香月 勗
  3. カシノナガキクイムシ集合フェロモンの化学構造を解明
  4. 電池で空を飛ぶ
  5. (+)-マンザミンAの全合成
  6. ビール好きならこの論文を読もう!
  7. 逆生合成理論解析という手法を開発し、テルペン系類縁天然物 peniroquesine の難解な生合成機構の解明に成功
  8. GRE Chemistry 受験報告 –試験当日·結果発表編–
  9. 第97回 触媒化学融合研究センター講演会に参加してみた
  10. 第46回―「分子レベルの情報操作を目指す」Howard Colquhoun教授

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2011年5月
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031  

注目情報

最新記事

有馬温泉で鉄イオン水溶液について学んできた【化学者が行く温泉巡りの旅】

有馬温泉の金泉は、塩化物濃度と鉄濃度が日本の温泉の中で最も高い温泉で、黄褐色を呈する温泉です。この記…

HPLCをPATツールに変換!オンラインHPLCシステム:DirectInject-LC

これまでの自動サンプリング技術多くの製薬・化学メーカーはその生産性向上のため、有…

MEDCHEM NEWS 34-4 号「新しいモダリティとして注目を浴びる分解創薬」

日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、新たにオープン…

圧力に依存して還元反応が進行!~シクロファン構造を活用した新機能~

第686回のスポットライトリサーチは、北海道大学大学院理学研究院化学部門 有機化学第一研究室(鈴木孝…

第58回Vシンポ「天然物フィロソフィ2」を開催します!

第58回ケムステVシンポジウムの開催告知をさせて頂きます!今回のVシンポは、コロナ蔓延の年202…

第76回「目指すは生涯現役!ロマンを追い求めて」櫛田 創 助教

第76回目の研究者インタビューは、第56回ケムステVシンポ「デバイスとともに進化する未来の化学」の講…

第75回「デジタル技術は化学研究を革新できるのか?」熊田佳菜子 主任研究員

第75回目の研究者インタビューは、第56回ケムステVシンポ「デバイスとともに進化する未来の化学」の講…

第74回「理想的な医薬品原薬の製造法を目指して」細谷 昌弘 サブグループ長

第74回目の研究者インタビューは、第56回ケムステVシンポ「デバイスとともに進化する未来の化学」の講…

第57回ケムステVシンポ「祝ノーベル化学賞!金属有機構造体–MOF」を開催します!

第57回ケムステVシンポは、北川 進 先生らの2025年ノーベル化学賞受賞を記念して…

櫛田 創 Soh Kushida

櫛田 創(くしだそう)は日本の化学者である。筑波大学 数理物質系 物質工学域・助教。専門は物理化学、…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP