[スポンサーリンク]

世界の化学者データベース

ダン・シェヒトマン Daniel Shechtman

[スポンサーリンク]

 

ダニエル・シェヒトマン(Daniel Shechtman, 1941年1月24日(イスラエル・テルアビブ生)-)はイスラエルの物理学・無機・物理化学者である。イスラエル・テクニオン工科大学教授。「準結晶の発見」により2011年ノーベル化学賞を受賞した。

 

経歴

1966 イスラエル・テクニオン工科大学 卒業

1972 イスラエル・テクニオン工科大学大学院 博士課程修了

1975-現在 イスラエル・テクニオン工科大学に勤務

1981-1983 ジョンズ・ホプキンス大学 訪問研究員(Sabbatical)

1992-1994 NIST 客員教授(Sabbatical)

2004- アイオワ州立大学 客員教授

 

受賞歴

2011 ノーベル化学賞

2008 European Materials Research Society (E-MRS) 25th Anniversary Award

2002 EMET Prize in Chemistry 2000 Muriel & David Jacknow Technion Award for Excellence in Teaching

2000 Gregori Aminoff Prize of the Royal Swedish Academy of Sciences.

1999 ウルフ賞物理部門

1998 イスラエル物理学賞

1993 Weizmann Science Award 1990 Rothschild Prize in Engineering 1988 New England Academic Award of the Technion

1988 International Award for New Materials of the American Physical Society

1986 Physics Award of the Friedenberg Fund for the Advancement of Science and Education

 

研究概要

準結晶(quasicrystal)の発見

quasicrystals.png

1982年、米国ジョン・ホプキンス大学で訪問研究員として滞在中、Al-Mn合金から正20面体に相当する対称性を持つ電子線回折像を発見した。これは結晶でもアモルファスでもなく第三の構造であると彼には直感された。[1][2]

1984年に論文をまとめあげ発表したのち、この固体構造は通常の結晶学の常識に当てはまらない対称性を持つものとして、“準結晶”と名付けられた。これが後にノーベル化学賞の受賞対象となった。

この発見の後、Al-Mn合金だけでなく、様々なものが準結晶構造を有することが発見され、現在でも毎年300?600以上の関連論文が出版され続けている。

 

note_daniel.png1982年4月8日 ダン・シェヒトマン博士が準結晶を発見した際のノート。ノートには「10 Fold ???」と記載されており、発見時の驚きがよくわかる。

refquasicrystals.png準結晶に関連した発表論文数(青色)[3]

コメント

1. ノーベル賞は、化学賞というより、物理学賞の候補者としてみなされていた。ノーベル賞の前哨たる1999年ウルフ賞を受賞時は、物理部門での受賞だった。専門も化学というわけではなく、むしろ物性物理である。論文もほとんど物理関係の雑誌に投稿している。しかし分野の区分は瑣末な問題であり、受賞対象となった研究が純粋物理、純粋化学でなければならない理由はどこにもない。ノーベル賞に値するほどの研究は、分野を飛び越えてサイエンスたりえるべきで、準結晶がそれに資するすばらしい発見であることには疑いがない。

2. 発表当時は結晶学の根本を覆す発見であったため、受け入れられずかなりの批判にあっている。かのライナス・ポーリングも「準結晶などあるはずがない、あるのは”科学者もどき(quasi-scientist)”だけだ」と痛烈なコメントを残した。シェヒトマンの所属機関長は「もういちど結晶学の教科書を勉強しなおしたらどうだ?」とまで彼に言った。

3. 妻は大学教授、4人の子供たちのうち3人は博士号取得。

 

参考文献

[1] Shechtman, D.;  Blech, I.; Gratias, D.; Cahn, J. W. Phys. Rev. Lett. 1984, 53, 1951. DOI: 10.1103/PhysRevLett.53.1951

[2]  Shechtman,D.;  Blech I. Metallurgical Transactions 16A, 1985, 1005.

[3] Steurer, W.; Deloudi, S.  Acta Cryst. 2008. A64, 1. DOI: 10.1107/S0108767307038627

 

関連動画

ダニエル・シェヒトマン教授へのインタビュー(2010年1月)

ダニエル・シェヒトマン教授Technological Entrepreneurship courseを語る。

Avatar photo

webmaster

投稿者の記事一覧

Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

関連記事

  1. トム・メイヤー Thomas J. Meyer
  2. 檜山爲次郎 Tamejiro Hiyama
  3. 陰山 洋 Hiroshi Kageyama
  4. ジョン・ハートウィグ John F. Hartwig
  5. ブルース・ギブ Bruce C. Gibb
  6. リチャード・ヘンダーソン Richard Henderson 
  7. ペイドン・ヤン Peidong Yang
  8. モウンジ・バウェンディ Moungi G Bawendi

注目情報

ピックアップ記事

  1. 大日本住友製薬が発足 業界5位、将来に再編含み
  2. 【緊急】化学分野における博士進学の意識調査
  3. ゴードン会議に参加して:ボストン周辺滞在記 Part II
  4. ケムステイブニングミキサー2015へ参加しよう!
  5. プロペランの真ん中
  6. 「さくら、さくら」劇場鑑賞券プレゼント結果発表!
  7. 田辺三菱 国内5番目のDPP-4阻害薬承認見通し
  8. (-)-ウシクライドAの全合成と構造決定
  9. ChemDrawの使い方 【基本機能編】
  10. サムスン先端研恐るべし -大面積プリンタブルグラフェンの合成-

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2011年10月
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31  

注目情報

最新記事

Host-Guest相互作用を利用した世界初の自己修復材料”WIZARDシリーズ”

昨今、脱炭素社会への実現に向け、石油原料を主に使用している樹脂に対し、メンテナンス性の軽減や材料の長…

有機合成化学協会誌2025年4月号:リングサイズ発散・プベルル酸・イナミド・第5族遷移金属アルキリデン錯体・強発光性白金錯体

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2025年4月号がオンラインで公開されています!…

第57回若手ペプチド夏の勉強会

日時2025年8月3日(日)~8月5日(火) 合宿型勉強会会場三…

人工光合成の方法で有機合成反応を実現

第653回のスポットライトリサーチは、名古屋大学 学際統合物質科学研究機構 野依特別研究室 (斎藤研…

乙卯研究所 2025年度下期 研究員募集

乙卯研究所とは乙卯研究所は、1915年の設立以来、広く薬学の研究を行うことを主要事業とし、その研…

次世代の二次元物質 遷移金属ダイカルコゲナイド

ムーアの法則の限界と二次元半導体現代の半導体デバイス産業では、作製時の低コスト化や動作速度向上、…

日本化学連合シンポジウム 「海」- 化学はどこに向かうのか –

日本化学連合では、継続性のあるシリーズ型のシンポジウムの開催を企画していくことに…

【スポットライトリサーチ】汎用金属粉を使ってアンモニアが合成できたはなし

Tshozoです。 今回はおなじみ、東京大学大学院 西林研究室からの研究成果紹介(第652回スポ…

第11回 野依フォーラム若手育成塾

野依フォーラム若手育成塾について野依フォーラム若手育成塾では、国際企業に通用するリーダー…

第12回慶應有機化学若手シンポジウム

概要主催:慶應有機化学若手シンポジウム実行委員会共催:慶應義塾大学理工学部・…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP