[スポンサーリンク]

世界の化学者データベース

ブライアン・コビルカ Brian K. Kobilka

[スポンサーリンク]

ブライアン・コビルカ (Brian K. Kobilka、1995-)はアメリカ合衆国の分子生化学者であり、Gタンパク質共役型受容体(G protein coupled receptor; GPCR)のアミノ酸配列および遺伝子の塩基配列の決定、ならびにエックス線結晶構造解析による立体構造の解明によって、2012年にロバート・レフコウィッツとともにノーベル化学賞を受けました(画像:University of Washington)。

経歴

1988 エール大学 MD取得

 

受賞歴

2012 ノーベル化学賞

 

研究概要

ヒトをはじめとする多細胞生物は、細胞どうしお互いに情報を担う分子をやりとりして、信号を交わしコミュニケーションしています。このシグナル物質を認識する装置は、しばしばGタンパク質共役型受容体と呼ばれるタンパク質であり、アドレナリン受容体の他、実際の具体例は枚挙にいとまがありません。鍵になるアドレナリンと、鍵穴になるアドレナリン受容体の組が一体となって、生命現象を調節していくのです。

ブライアン・コビルカは、ロバート・レフコウィッツのポスドクとしてGタンパク質共役型受容体のひとつアドレナリン受容体の同定を目指して、1986年[1]には遺伝子をクローニングし、そこから全長アミノ酸配列を決定することに成功しました。このアドレナリン受容体とアミノ酸配列の似た数々のGタンパク質共役型受容体には、いまだリガンド分子の不明なものがたくさん存在し、また薬剤分子の標的であることも多いことから、今も盛んに研究が進められています。

ブライアン・コビルカらは、2007年[2]にはエックス線結晶構造解析によってアドレナリン受容体の立体構造を解明。膜タンパク質かつ複数のサブユニットの複合体ということで難易度の高い業績であり、再び注目を集めました。これにより、他のGタンパク質共役型受容体についてもアドレナリン受容体を鋳型にした立体構造予測が可能になり、薬剤分子の設計をはじめ各方面に大きな影響を与えました。

GREEN2012Novel10.png

立体構造情報はPDB(Protein Data Bank)より

かつて、アミノ酸の点変異導入で明らかにされていたところによると、アドレナリンの認識には複数の領域が関与しています。そのため、全長タンパク質ではなくリガンド結合領域だけを結晶構造解析する手法は使えませんでした。かなり広い領域のアミノ酸が協調して、アドレナリンのようなリガンド分子を認識しているため、Gタンパク質共役型受容体に属するタンパク質は「やわらかい」構造をしており、このことも結晶化を困難にしていました。ブライアン・コビルカらは、アドレナリンのGタンパク質共役型受容体と相互作用する抗体タンパク質を作成し、共結晶とすることでこの難題を突破しました。

GREEN201210novel05.png

カラゾロールはアドレナリン高親和アンタゴニスト

アドレナリンの代わりに使われたカラゾロールは、高親和アンタゴニスト(標的タンパク質に結合するがシグナル伝達にスイッチを入れる生理活性はなく競合して内生のシグナル分子の作用を阻害する薬剤) であり、日本国内では畜産動物のストレス軽減などで使われています。

 

参考論文

[1] Dixon RA, Kobilka BK, Strader DJ, Benovic JL, Dohlman HG, Frielle T, Bolanowski MA, Bennet CD, Rands E, Diehl RE, Mumford RA, Slater EE, Sigal IS, Caron MG, Lefkowitz RJ, Strader CD (1986) “Cloning of the gene and cDNA for mammalian beta-adrenergic receptor: primary structure and membrane topology.” Nature DOI:10.1038/321075a0

[2] Rasmussen SG, Choi H, Rosenbaum DM, Kobilka TS, Thian FS, Edwards PC, Burghammer M, Ratnala VRP, Sanishvili R, Fischetti RF, Schertler GFX, Weis WI, Kobilka BK. (2007) “Crystal structure of the human beta2 adrenergic G-protein coupled receptor.” Nature DOI: 10.1038/nature0632

 

関連動画

Green

Green

投稿者の記事一覧

静岡で化学を教えています。よろしくお願いします。

関連記事

  1. Noah Z. Burns ノア・バーンズ
  2. リロイ・フッド Leroy E. Hood
  3. ローランド・フィッシャー Roland A. Fischer
  4. ノーマン・アリンジャー Norman A. Allinger
  5. ロバート・ノールズ Robert R. Knowles
  6. アビシェック・チャッタージー Abhishek Chatterj…
  7. ベン・デイヴィス Ben G. Davis
  8. 塩谷光彦 Mitsuhiko Shionoya

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. 有機合成化学特別賞―受賞者一覧
  2. 一流化学者たちの最初の一歩
  3. お”カネ”持ちな会社たちー2
  4. 製薬各社の被災状況
  5. 第六回 多孔質材料とナノサイエンス Mike Zaworotko教授
  6. 相撲と化学の意外な関係(?)
  7. ファンケル、「ツイントース」がイソフラボンの生理活性を高める働きなどと発表
  8. F. S. Kipping賞―受賞者一覧
  9. 太陽電池セル/モジュール封止材料・技術【終了】
  10. 未来のノーベル化学賞候補者

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

注目情報

注目情報

最新記事

第102回―「有機薄膜エレクトロニクスと太陽電池の研究」Lynn Loo教授

第102回の海外化学者インタビューは、Lynn Loo教授です。プリンストン大学 化学工学科に所属し…

化学系必見!お土産・グッズ・アイテム特集

bergです。今回は化学系や材料系の学生さんや研究者の方々がつい手に取りたくなりそうなグッズなどを筆…

危険物取扱者:記事まとめ

世の中には様々な化学系の資格があり、化学系企業で働いていると資格を取る必要に迫られる機会があります。…

化学者のためのエレクトロニクス入門③ ~半導体業界で活躍する化学メーカー編~

bergです。化学者のためのエレクトロニクス入門のシリーズも3回目を迎えました。前回は電子回路を大き…

第101回―「高分子ナノ構造の精密合成」Rachel O’Reilly教授

第101回の海外化学者インタビューは、レイチェル・オライリー教授です。ケンブリッジ大学化学科に所属(…

大学院生になっても宿題に追われるってどないなんだが?【アメリカでPh.D.を取る–コースワークの巻–】

アメリカでの PhD 課程の1年目には、多くの大学院の場合, 研究だけでなく、講義の受講やTAの義務…

島津製作所 創業記念資料館

島津製作所の創業から現在に至るまでの歴史を示す資料館で、数々の発明品が展示されている。第10回化学遺…

研究テーマ変更奮闘記 – PhD留学(後編)

前回の記事では、私がPhD留学を始めた際のテーマ決めの流れや、その後テーマ変更を考え始めてからの教授…

Chem-Station Twitter

PAGE TOP