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エーザイ 抗がん剤「ハラヴェンR」日米欧で承認取得 

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2011年4月22日、エーザイ株式会社は自社開発品である新規抗悪性腫瘍剤「ハラヴェンR静注1mg」(一般名:エリブリンメシル酸塩, 開発コード E7389)が厚生労働省より日本において「手術不能又は再発乳癌」の効能・効果で製造販売承認を取得たことを発表しました。2010年3月に日米欧同時申請がなされてから約1年、米国(2010年11月承認)、欧州(2011年1月承認)、そして日本の三極すべてで承認がおりたことになります。

ハラヴェンの元になったHalichondrin B(ハリコンドリンB)は1986年、名古屋大学の平田上村らにより単離・構造決定され、1992年ハーバード大学のらのグループにより世界初の全合成が達成されました。それから19年余り、Halichondrin Bの右半分を中心骨格としたハラヴェン(E7389)が日本の製薬会社により研究・開発され、新薬として産声をあげました。まさに Made In JAPANであります。

 

e7389-2.gif  19個の不斉中心を持つ分子量826のこの有機化合物は62工程の全合成により供給されています(エーザイニュースリリースより)。これを薬にするのにどれだけの人が関わったことでしょう?どれだけの苦難があったことでしょう?日本の「はやぶさ計画」にも負けていないのではないでしょうか。

 

これだけ複雑な化合物を全合成で作って儲けはあるのだろうか?という素朴な疑問を持ってしまいます。ググってお値段を探したところ米国では1mgバイアル瓶で850ドルみたいです(eisai Inc. product price list最終ページ) 。原価はどんなもんなのでしょう。

 

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matsumoto

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修士(工学)。学生時代は有機合成・天然物合成に従事し、現在は某製 薬メーカー合成研究員。

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