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化学者のつぶやき

ニセ試薬のサプライチェーン

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偽造試薬の一大市場となっている中国。その製造・供給ルートには、近所の印刷店など、予想だにしない人々まで関与していた。この状況を変えようと、中国の研究者や試薬製造企業が対抗策を講じ始めているが、中国の偽造試薬問題はすでに国外にも及んでいる。

タイトルおよび説明はシュプリンガー・ネイチャーの出版している日本語の科学まとめ雑誌である「Natureダイジェスト」8月号から。最新サイエンスを日本語で読める本雑誌から個人的に興味を持った記事をピックアップして紹介しています。過去の記事は「Nature ダイジェストまとめ」を御覧ください。

偽造試薬と戦う中国

「プリンターを購入のために電気屋にいき、みせられた印刷サンプルが、自分の知っている試薬会社の容器のラベルとそっくりだった。」

街の電気屋のイメージ(出典:Natureダイジェスト)

上述した事例は、本記事の主役である北京生命科学研究所のディレクターであるSong Hunang博士が実際に体験したことだそうです。つまり偽造試薬の売買が中国国内を席巻しているとのこと。

偽造試薬業者が儲ける以外の、科学者にとっての問題は2つ。高い価格で偽造試薬を売りつけられる可能性があること、そして、純度が異なる・そもそも全く違うという理由で実験の再現が全く取れなくなることです。

「試薬を疑うことがどれほどのストレスになるか。言葉にはできません。」

全くの同意です。ちょっと状況は異なりますが、私はある試薬会社から購入した試薬の中身が全く違う化合物だったことがあります。その時は烈火の如く怒りました。むしろ本記事の内容ではそれが日常茶飯事であるということですよね。

過去に購入した古い試薬ならまだしも、買ったばかりの試薬を疑い始めるとキリがありません。簡単なモデル反応で試すことができる化学系試薬はまだしも、生物学的試薬はかなり困難なことでしょう。さらに複雑なことは、偽造試薬の中にも、そこそこ良質で安価に購入可能なため研究者が利用している例が多く、事を荒立てようとしないとのこと。なんだか海賊版の書籍みたいですね。

本特集記事では偽造試薬の撲滅のために奔走する研究者について述べています。

二次元の磁石が誕生!

原子1 個分の厚さのシート状磁石が得られたことで、これまでは不可能だった数々の実験が可能になると期待される。

2010年にノーベル物理学賞を受賞した2次元炭素材料であるグラフェン。

原子一個分の厚さの”炭素シート”が粘着テープでシートを剥がす「スコッチテープ法」で得ることができると聞いたときには、「そんなんでいいのか!」と誰もが驚いたことでしょう。グラフェンの登場により2次元材料は大きく発展を遂げています。

しかし、炭素材料ゆえに達成できなかったのは2次元磁石(強磁性体)。最近、ついに三ヨウ化クロム(CrI3)の2次元結晶が強磁性を示すことが報告されました[1]。作製方法はグラフェンと同じ「スコッチテープ法」。

三ヨウ化クロムの結晶(出典:wikipedia

本記事ではこの発見の経緯と今後の研究について、作製に成功した米国の化学者にインタビューしています。

  1. B. Huang, G. Clark, E. Navarro-Moratalla, D. R. Klein, R. Cheng, K. L. Seyler, D. Zhong, E. Schmidgall, M. A. McGuire, D. H. Cobden, et al., Nature 2017, 546, 270–273. DOI: 10.1038/nature22391

その他の記事

今月号の無料公開記事はなんと3つ。

1つめの記事「ニホンアナグマの駆除に懸念」では、ニホンアナグマの捕獲・駆除による種の消滅に生物学者が注意を喚起しています。最近の「ジビエ料理」の流行により捕獲が増えたこともありますが、直接の原因ではなく、純粋な駆除が推進されていることが原因のようです。農家にとっては被害をもたらす害獣ですので難しいところですね。

2つめの記事は「TOOLBOX: オンライン共同執筆ツール」。Wordに近いものならば、オンライン共同執筆ツール「GoogleDoc」が有名。一方で、研究者が論文を書くために便利な、論文引用機能だとかLaTexなどを導入した「研究者用オンライン共同執筆ツール」が現在群雄割拠。代表的なものとして「Overleaf」「shareLaTeX」「Fidus Writer」「Authorea」 の4つがあり、記事ではこれらの特徴と今後の課題について述べています。研究分野によってはWordに置き換わり、このような執筆ツールが研究者の新しいお供となっていくのでしょうか。

最後の記事は、毎月恒例のNature系雑誌に掲載された日本人著者のインタビューから「食虫植物の進化がゲノム解読から明らかに」。植物なのに、虫を捕らえ、食べる食虫植物の一種である、フクロユキノシタのゲノム配列を明らかにし、さらに捕らえた虫を分解する消化酵素の進化について解明した、自然科学研究機構基礎生物学研究所の長谷部光泰さんと米国コロラド大学の福島健児さんにインタビューしています。

新規研究室購読者に、前年度のPDF1年分を収録したDVD贈呈

前回もお知らせしましたが、現在、Natureダイジェストの新規購読者キャンペーンを行っています。2017年9月30日までに研究室購読を申し込みいただくと(個人ではありません)、もれなく前年度のPDF1年分を収録したDVDがもらえるそうです。キャンペーン申し込みはこちら

過去記事はまとめを御覧ください

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Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

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