[スポンサーリンク]

ケムステニュース

自転車泥棒を臭いで撃退!?「スカンクロック」を考案

[スポンサーリンク]

(CNN) 自転車を盗もうとする相手に化学物質を浴びせ、吐き気を催させて撃退するという製品を米国の起業家が考案し、一般からの寄付を募るクラウドファンディングを通じて資金集めに乗り出した。この製品「スカンクロック」は一見、世界中で自転車の盗難防止に使われているごく普通のU字ロックに見える。だが秘密兵器の存在を物語るのはスカンクのような白黒のしま模様。盗もうとすると有害な化学物質を噴き出して相手に吐き気を催させ、一時的な視覚障害や呼吸困難を起こさせる。化学物質の噴霧によって周りの人も異常に気付くという(引用:CNN,co.jp 2016年10月24日)。

ありそうでなかった自転車泥棒撃退のためのお話です。日本ではそうそうないかもしれないですが、アメリカでは上記にあるようなU字の錠をつけていても、簡単に切断され自転車を盗まれることは多々あるとのこと。

今回のニュースにある「スカンクロック」の開発者も実際に自転車を盗まれ、どうにかして撃退できないかと考え、開発に至ったそうです。「スカンクロック」は一見して普通のU字型の錠。ただ、スカンクのような白黒の縞模様と「SKUNKLOCK」と記載してあるだけ。通常に使う分にはなにも起こりませんが、それを切断しようとすると、悪臭のある化学物質が飛び出て泥棒撃退、そしてまわりにも”臭い”でお知らせする仕掛け。以下の動画を見てもらった方がわかりやすいと思います。

現場にはいたくない感じですね。。。

ところで、スカンク=とてつもなく臭いなにかを出す、は子供でも知っている有名な話ですが、どれだけ臭くてどんな成分なんでしょう。

スカンクの臭いと成分

臭いに関しては、NAVERまとめ「悶絶必至!スカンクの臭いはどれだけ臭いのか?」によると、

スカンクを轢いた車、轢きたてのスカンクの上を通った車は廃車処分、中古では売れない、と言う話も聞くが。まともにスプレーを浴びた場合、洋服は廃棄処分、まともに浴びてなくとも、臭いは4ヶ月はとれないという話もある。

スカンクが放つ分泌物は高濃度の場合、人命に 関わることもある。一時的な失明や咳、吐き気を引き起こすことから、催涙ガスに例えられることもある。

とある。相当やばそうですね。動画もいくつか有りました。

では成分はなにかというと、ブチルメルカプタン(別名:ブタンチオール、英語名:butyl mercaptan, butanethiol)だそうです。硫黄化合物(チオール類)なんで化学者の方ならばまあ臭そうだなと言うのはわかっていただけると思います。より分子量が小さいものならば臭いですが臭いは残りそうもなく、より大きいものならばほんのり臭いぐらいですが、炭素4つはその両者をうまくとった”ちょうどよい”大きさです。

2016-10-24_20-47-17

ブチルチオールっぽいにおい?

【訂正 2016年10月27日】実際にスカンクの臭気成分をガスクロマトグラフィー質量分析法(GC/MS)で調べた研究者の報告[1]によると、上述したブタンチオールではなく、チオール類ではあるものの、いくつかのチオール類が混じっているとのこと。「ブタンチオールみたいな」においというのが先行して「=ブタンチオールが主成分である」が一般的になったようです。もしくは正確に名前を記していなかったかです。どちらかわかりませんが、実際には、スカンクの種類によって若干成分はことなるようですが、Hooded skunkでは、不飽和体の(E)-2-Butene-1-thiol、枝分わかれした3-Methyl-1-butanethiolや、それらのアセチル化体が主成分であるとされています。以上のように訂正いたします。

2016-10-27_01-05-12

【追記】スカンクの臭いの主成分

 

ちなみに、世界一臭い果物「ドリアン」の主成分は炭素が1つ短い、プロパンチオール(propanethiol)で都市ガスがもうひとつ少ないエタンチオール(ethanethiol)もしくはt-ブチルチオール(t-butylthiol)が超微量含まれています。なんとなくわかったでしょうか。そのチオール濃縮液をかけられたらたしかに悶絶するぐらい臭いですね。

2016-10-24_21-03-39

臭いはどうやってとるかというと、いろいろとネットに書かれていますが、チオールならば、塩にするために重曹(NaHCO3)などのアルカリを使うか、ブリーチ(次亜塩素酸ナトリウムNaOCl)かなにかで酸化するするのが良いと思います。

クラウドファンディングで資金募集中

さて、話を元に戻すと開発者たちはこの「スカンクロック」の販売に向けクラウドファンディングで資金を募っているようです(こちら)。およそ2万ドル(200万円)を募集したようですが、既に目標額には達しているようで、このまま発売されるんですかね。

そして、よく読んでみたら、今回の使っている化学物質は「フォーミュラD1」と命名され、詳細は明かしていないものの、

「傷んだバターやパルメザンチーズなどのありふれた製品に含まれる脂肪酸から生成した」

とあります。となると、「スカンクロック」に使われれているのは上記のようなチオールじゃなくて、おそらく長鎖のカルボン酸(ヘキサン酸あたり)ぽいですね。バターやチーズからはチオールはできないので。チオール類本当に使ってたら日本だったら「ガスの臭いがする!」と大混乱になってしまいます。

ところで無事発売したとして問題は、

「泥棒を撃退し無事盗まれなかったときの自転車の匂いはどうやってとるのか?」

というところだと思いますが….「におい消し」も一緒に発売したほうがよいかもしれません(苦笑)。

 

参考文献

  1. Wood, F.W.; Sollers, B. G.; Dragoo, G. A.;  Dragoo, J. J. Chem. Ecol. 2002, 28, 1865. doi:10.1023/A:1020573404341
Avatar photo

webmaster

投稿者の記事一覧

Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

関連記事

  1. カーボンナノチューブ薄膜のSEM画像を生成し、物性を予測するAI…
  2. 製造過程に発がん性物質/テフロンで米調査委警告
  3. 自律的に化学実験するロボット科学者、研究の自動化に成功 8日間で…
  4. ガンマ線によるpHイメージングに成功 -スピンを用いて化学状態を…
  5. 性フェロモン感じる遺伝子、ガで初発見…京大グループ
  6. アルツハイマー原因物質、緑茶成分に抑制機能・埼玉医大など
  7. 国際シンポジウム;創薬・天然物―有機合成化学の展望―
  8. 製薬特許売買市場、ネットに創設へ…大商とUFJ信託

注目情報

ピックアップ記事

  1. 高知市で「化学界の権威」を紹介する展示が開催中
  2. グラフェン技術の最先端 ~量産技術と使いやすさの向上、今後の利用展開~
  3. コルベ電解反応 Kolbe Electrolysis
  4. Co(II)-ポルフィリン触媒を用いた酸素酸化によるフェノールのカップリング反応
  5. 排ガス原料のSAFでデリバリーフライトを実施
  6. 中学入試における化学を調べてみた 2013
  7. 最近の有機化学注目論文3
  8. ボールミルを用いた、溶媒を使わないペースト状 Grignard 試薬の合成
  9. クロロ(1,5-シクロオクタジエン)イリジウム(I) (ダイマー):Chloro(1,5-cyclooctadiene)iridium(I) Dimer
  10. 国際化学オリンピック、日本の高校生4名「銀」獲得

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2016年10月
月 火 水 木 金 土 日
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31  

注目情報

最新記事

KISTEC教育講座 ~物質の付着はコントロールできる~中間水を活かした材料・表面・デバイス設計

開講期間令和8年12月1日(火)、2日(水)、3日(木)*12月1日、2日は1日単位の選…

2026年ノーベル化学賞ケムステ予想当選者発表!

2026年のノーベル化学賞は、「不斉有機合成における非線形効果および自己触媒作用の発…

第64回ケムステVシンポ「データとともに進化する未来の化学」を開催します!

第64回ケムステVシンポの会告を致します。産業技術総合研究所主催の化学シンポジウムシリーズ(…

品質工学とマテリアルズ・インフォマティクス ― 両技術の概要と連携事例

開催概要材料開発やものづくりの現場では、探索すべき組成やプロセス条件が増えるほど組み合わせが爆発…

大学院留学してよかったこと, 悪かったこと【英語, 経済面, オーバードクターに関するお話】

海外の大学で、その大学に籍を置く大学 (院) 生として留学することは「学位留学」と呼ばれたりします。…

光前駆体法の活用によって、ヘプタセンで初の一重項分裂を観測!

第725回のスポットライトリサーチは、京都大学大学院 理学研究科化学専攻 有機元素化学研究室(山田研…

【スタッフ・寄稿募集】Chem-Stationで、化学を「伝える側」になりませんか?

Chem-Station(ケムステ)は2000年に開設された国内最大の化学ポータルサイトです。大学・…

第17回大津会議―とある参加者の記録―

2026年9月28日~29日に開催された第17回大津会議についての、とある参加者の記録です。この記事…

第17回大津会議 -Otsu Conference- 2026 開催報告 ~新体制で紡ぐ「有機合成の夢」~

第17回大津会議が2026年9月28日(月)〜9月29日(火)びわ湖大津プリンスホテルにて開催されま…

有機合成化学協会誌2026年10月号:医薬品プロセス開発・σ芳香族性・含窒素複素環・メロテルペノイド二量体・高歪み化合物

有機合成化学協会が発行する「有機合成化学協会誌」2026年10月号がオンラインで公開されています。…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP