[スポンサーリンク]

日本人化学者インタビュー

第16回 教科書が変わる心躍る研究を目指すー野崎京子教授

[スポンサーリンク]

さて、又少し時間が空いてしまいました。著名の研究者の生の声が聴けると人気上々であるこの研究者へのインタビューコンテンツ。第16回目となる今回は第6回目の寺尾潤先生のご紹介で、東京大学大学院工学研究科教授の野崎京子先生にインタビューをお願い致しました。

野崎先生は主に高分子化学、金属錯体触媒をもちいる極性モノマーの精密重合の研究を中心に、高分子から低分子に利用できる不斉合成反応やデバイス構築に向けた機能性有機化合物の合成などを展開されています。非常に活発に研究をおこなっており、多くの賞を受賞されています。また、女性云々の枠で語らずとも素晴らしい研究者だと思いますが、女性科学者としてはすべてをこなしているトップランナーの一人、目指すべき姿です。

昨年あるカンファレンスで席が一緒になり、お食事会を共にさせて頂きました。正直な感想を申しますと、非常に話が明瞭で面白く、なおかつ化学が好きで、ぜひもう一度一緒にお話ししたいと思わせる先生でした。評判よく皆が「愛称」で呼ぶ理由もよくわかります。先週誕生日であったようで研究室で行われた誕生日会の一コマの写真を送ってきてくださいました。というわけで大人気の野崎京子先生のインタビューはこちらです!

 

Q. あなたが化学者になった理由は?

高校時代は数学・物理の方が好きでしたが、大学受験の願書を出す直前になって、それまで進路に一切口を出さなかった父が一言、「物理なんかいったら仕事ないわ」。

当時から、一生仕事は続けていくんだろうな と思っていたので、「つぶしがきく」といううわさの京大工業化学へ。学業に身の入らない学生生活を送っていましたが、卒論研究を始めてからは実験科学に夢中になり、もう少し、もう少しと思って続けているうちに今に至っています。

京都大学工学部

京都大学工学部

 

Q. もし化学者でなかったら、何になりたいですか?またその理由は?

漠然とですが、人と関わる仕事です。人間が好きなので。もっとも、今の仕事について以来、相当に理屈っぽくなってしまっているので、務まる仕事の種類はかなり狭まってしまったと思いますが。

Q.概して化学者はどのように世界に貢献する事ができますか?

「社会貢献」という質問でしたら、これは、いつも飲む度に学生に言っています。

税金を使うに値する研究をしていると胸を張って言えるか

と。

興味の赴くままにやりたいことをできるのが大学での研究の特権ですが、同時にそれを通じて社会に貢献できることができればその方がもっといい。小学校の教科書が書き換わるぐらいの学術的な発見でもいい、生活が豊かになる新技術でもいい、遠い遠い未来でいいので、研究者は自分の研究の方向性を語れなくてはならないと思っています。

 

Q.あなたがもし歴史上の人物と夕食を共にすることができたら誰と?またその理由は?

孔子かなあ。芭蕉も興味あります。今に残っている言葉が生まれた背景を聞いてみたい。あと、コペルニクスとダーウィン。新しい学説を唱えるとき、最初から自信があったのか、どうやって確信を深めていったのか、どんな反論にあってどう感じたのか など聞いてみたいです。

Nicolaus Copernicus

Nicolaus Copernicus

Q. あなたが最後に研究室で実験を行ったのはいつですか?また、その内容は?

助手になって4年目まではベンチがあったので、結果がわからない実験をした最後は95年ぐらいでしょうか。内容は覚えていません。そのあとは、卒業生の残していったデータの足らないところを集める程度で、だめもとで1回仕込んでみることさえ、学生さんに任せるようになってしまいました。考えるより実験する方が好きで、大学に残っていたはずなのですが。。。

Q.もしあなたが砂漠の島に取り残されたら、どんな本や音楽が必要ですか?1つだけ答えてください。

寂しがりなので、砂漠の島に取り残されるなんて考えられないです。

Q. 次にインタビューをして欲しい人を紹介してください。

しがらみフリーな人生を謳歌しておられる山本尚先生はいかがでしょう? あと、スケールの大きさでJean Frechet先生もすてきです。

 

 

最近思うこと

 

東北大学をご退職になられたころの原田宣之先生に、

「野崎さん、今どんなことがしたいの?」

と聞かれたことがあります。「こんなテーマで研究したい。学生との時間を何より大切にしたい。」云々とありきたりなことを話したところ、

「じゃ、そうすればいいじゃない。」

と、当然のように言ってくださいました。目から鱗でした。あ、そうか、したいことをすればいいんだ と。言い訳ばかりの日々になりかけていたことに気づき、人生観が変わりました。たとえ同じことをするにしても、朝起きて、「今日やらなくてはならないことは、これとこれと。」としかめ面で考えるよりは、やることは全部楽しみだと心底から思えて、「今日は何して遊ぼっかな?」って思う方がいい。わくわくして過ごしたいです。

 

関連リンク

 

野崎京子教授の略歴

kyokonozakicv野崎京子

東京大学大学院工学研究科教授。1986年京都大学工学部工業化学科卒業後、同大学院に進学、1991年に博士後期課程終了、工学博士(内本喜一朗教授)同年京都大学工学部工業化学科助手となり、1999年助教授となる。2000年より科学技術振興事業団さきがけ21研究員(兼任)、 2002年東京大学大学院助教授などをへて2003年より同大学院教授。現在に至る。受賞等は1992年井上研究奨励賞、1998年日本化学会進歩賞、2003年OMCOS Prize in organometallic chemistry、2006年IBM科学賞、2007年第28回猿橋賞、2008年Mukaiyama Award, 2009年三井化学触媒科学賞、名古屋シルバーメダルなど受賞多数。ちなみに2007年に第24回有機合成化学セミナー踊る阿呆賞というものも受賞されている(研究室HPより)。

Avatar photo

webmaster

投稿者の記事一覧

Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

関連記事

  1. 第37回「トリプレットでないと達成できない機能を目指して」楊井 …
  2. 第172回―「小分子変換を指向した固体触媒化学およびナノ材料化学…
  3. 第15回 触媒の力で斬新な炭素骨格構築 中尾 佳亮講師
  4. 第78回―「膜タンパク質の分光学的測定」Judy Kim教授
  5. 第26回「分子集合体の極限に迫る」矢貝史樹准教授
  6. 第63回―「生物のコミュニケーションを司る天然物化学」矢島 新 …
  7. 第162回―「天然物の合成から作用機序の解明まで」Karl Ga…
  8. 第60回「挑戦と興奮のワイワイ・ワクワク研究センターで社会の未来…

注目情報

ピックアップ記事

  1. 第5回鈴木章賞授賞式&第9回ICReDD国際シンポジウム開催のお知らせ
  2. リチウムイオン電池製造の勘どころ【終了】
  3. 有機合成化学協会誌2023年1月号:[1,3]-アルコキシ転位・クロロシラン・インシリコ技術・マイトトキシン・MOF
  4. ヘム獲得系のハイジャックによる緑膿菌の選択的殺菌法
  5. 第146回―「原子から社会までの課題を化学で解決する」中村栄一 教授
  6. 研究室でDIY!~エバポ用真空制御装置をつくろう~ ③
  7. ナノチューブブラシ!?
  8. 第12回化学遺産認定~新たに3件を認定しました~
  9. 2009年ロレアル・ユネスコ女性科学者 日本奨励賞発表
  10. 焦宁 Ning Jiao

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2012年2月
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
272829  

注目情報

最新記事

第6回鈴木章賞授賞式&第10回ICReDD国際シンポジウム開催のお知らせ

計算科学、情報科学、実験科学の3分野融合による新たな化学反応開発に興味のある方はぜひご参加ください!…

条件の「前後」も実験条件である【プロセス化学者のつぶやき】

前回まで1. 設定温度と系内の実温度のお話2. 温度値をどう判断するか3. 反応操作をし…

そのpH、“本当にその場所”の値ですか?ニードル式pHセンサーを使ってみた!

突然ですが、「培養の再現性がなんか悪い」「同じ条件のはずなのに結果がズレる」といった経験はあ…

「骨格編集」×「ナノカーボン合成」〜ナノカーボン合成の新戦略を実証〜

第719回のスポットライトリサーチは、名古屋大学大学院工学研究科(忍久保研究室)博士後期課程2年の平…

【書評】立体化学 はじめの一歩

立体化学は,分子の三次元構造を理解するための重要な分野であり,有機化学や…

水のシミュレーション入門 — 水分子を計算機の中でどう”描く”か —

身近なのに、計算機にとって手強い"水"。本記事では、点電荷モデルから機械学習まで、その"描き方"の進…

◆◇◆◇ 第36回フォーラム・イン・ドージン開催のご案内 ◆◇◆◇

同仁化学研究所が熊本から世界へ情報発信するフォーラム・イン・ドージンの開催ご案内です。今年は『な…

『力』による円偏光発光のon/off制御を単一分子レベルで実現

第718回のスポットライトリサーチは、東京科学大学 物質理工学院(相良研究室)博士後期課程2年の野中…

数日かかっていた反応機構解析を、わずか数分に!

機械学習ポテンシャルが変える計算化学の現在近年、DFT計算による反応機構解析は広く行われるよ…

海外ポスドクのオファーをもらう【アメリカで Ph.D. を取る: 進路編】

ポスドクとして海外に留学する場合、希望する研究室の教授に直接連絡を取り、面接などを通して適性を判断さ…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP