[スポンサーリンク]

海外化学者インタビュー

第104回―「生体分子を用いる有機エレクトロニクス」David Cahen教授

[スポンサーリンク]

第104回の海外化学者インタビューは、デヴィッド・カーヘン教授です。ワイツマン研究所化学科・マテリアル&インターフェース学科に所属し、分子がどのようにして電子輸送を制御できるかを理解し、この制御の基本的限界を把握し、根本的に新しい科学の可能性がどこにあるかを探る研究を行っています。それではインタビューをどうぞ。

Q. あなたが化学者になった理由は?

幼い頃に、ローマ法王、パイロット、大使(野望として覚えている年代順です)になったらどうなるのだろうという疑問を持った後、8-9歳の頃には科学に夢中になっていたはずです(チーズの「原子」を見ようと、チーズを切り刻み続けていたことをはっきりと覚えています。古典ギリシャ語を学び始める前のことでした…)。地方の小さな学校で化学を学んだ最初の年(10年生)に、Niels Wiedenhofという素晴らしい先生と出会いました。Wiedenhofはフィリップスで広報の仕事に就き、その後、科学の公共理解に関するオランダ初の博士号を取得しました。

Q. もし化学者でなかったら、何になりたいですか?またその理由は?

地質学や気候学に携わるでしょう。ただ、二番目に好きでいつも惹かれている歴史学のための時間を十分に確保できるよう、今の仕事のようには頑張らないようにしたいと思っています(家族の理解も明らかに得られるでしょう。弟が歴史家になって、現在はアムステルダムのユダヤ歴史博物館のディレクターをしているので)。

Q. 概して化学者はどのように世界に貢献する事ができますか?

代替可能・持続可能エネルギーについての自分なりのメガネを通してしか、答えることはできません。化学は人類史上最大の挑戦の中心にあり、人類と世界の持続可能な未来、過去何世紀もの間にもたらされた健康、移動、コミュニケーションにおける偉大な成果を享受できるライフスタイルを確保しています。

研究室で行うことは別にして、化学者は教え、説明し、人口の大部分に基本的な科学的概念を教育するための手伝いをするべきです。科学への恐怖心を最小限に抑え、期待のリアリズムを最適化するために、ドクター・フーのような逃避行はSFに任せましょう。

Q.あなたがもし歴史上の人物と夕食を共にすることができたら誰と?またその理由は?

バールーフ・デ・スピノザです。(他人目線で、そう、彼についての博士論文を書いた甥っ子のように)自分で読んでみて、彼の世界観や神に対する考え方に非常に共感していますが、原書を読もうとすると、いつも行き詰ってしまいます。理解に迷い立ち止まってしまう彼の哲学を、彼なりの言葉で説明してもらいたいです。

Q. あなたが最後に研究室で実験を行ったのはいつですか?また、その内容は?

オフィスに行く途中で研究室の前を通りますが、おそらく学生たちが安心しているように、実地にはめったに介入(干渉?)しません。それでも、プリンストン大学で同僚のアントワーヌ・カーンと一緒に研究していた 2003/4 年には、GaAs の分子修飾の電子エネルギー効果を理解するために、電子分光用のサンプルを準備し、自分で言うのもなんですが、かなりうまくいきました。もっと小さなスケールでは、1 ヶ月ほど前に研究室を通りかかった時に、私たちの低温電子輸送装置がなぜ機能しないのかを簡単な実験で解明しました。

Q.もしあなたが砂漠の島に取り残されたら、どんな本や音楽が必要ですか?1つだけ答えてください。

これは明らかに時代遅れな質問の典型ですね。第二部では、ソーラーパネルや小さな風車で電子機器を動かすことを想定しています。また、CDがなくなって、MP3プレーヤーになると思います。さて、MP3プレーヤーがあれば、本を置くことができますよね?

本について:A. B. Yehoshuaの『Mr. Mani』です。強い歴史的な側面を持っています 。そしてその多くは、残りの半分を構成する余地を読者を残しすつt、対話の半分として書かれています。何かは、何度も何度も行うことができ、決して同じである必要があります(そして、将来)。

CDについて:グルックの『Orpheus and Euridice』です。神々しい曲だからというだけではなく、グルックが神話・悲劇としてではなくハッピーエンドにしているからです。私はハッピーエンドが好きです。家族や学生は、トム・レーラーの曲がいいと言うかもしれませんが(彼の周期表ソングを覚えていますでしょうか・・・)。

原文:Reactions –  David Cahen

※このインタビューは2009年2月20日に公開されました。

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. 第157回―「メカノケミカル合成の方法論開発」Tomislav …
  2. 第95回―「生物学・材料化学の問題を解決する化学ツールの開発」I…
  3. 第46回「趣味が高じて化学者に」谷野圭持教授
  4. 第50回―「糖やキラル分子の超分子化学センサーを創り出す」Ton…
  5. 【第一回】シード/リード化合物の創出に向けて 2/2
  6. 第128回―「二核錯体を用いる触媒反応の開発」George St…
  7. 第七回 生命を化学する-非ワトソン・クリックの世界を覗く! ー杉…
  8. 第57回―「アニオン認識の超分子化学」Phil Gale教授

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. ブロモジメチルスルホニウムブロミド:Bromodimethylsulfonium Bromide
  2. 分子内架橋ポリマーを触媒ナノリアクターへ応用する
  3. 極薄のプラチナナノシート
  4. 3日やったらやめられない:独自配位子開発と応用
  5. ヘロナミドA Heronamide A
  6. 可逆的に解離・会合を制御可能なサッカーボール型タンパク質ナノ粒子 TIP60の開発
  7. 糖鎖を直接連結し天然物をつくる
  8. ムレキシド反応 Murexide reaction
  9. 第61回「セラミックス粉体の合成から評価解析に至るまでのハイスループット化を目指す」藤本 憲次郎 教授
  10. たばこと塩の博物館

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2020年7月
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031  

注目情報

最新記事

【速報】2023年ノーベル化学賞は「量子ドットの発見と合成」へ!

2023年のノーベル化学賞は「量子ドットの発見と合成」の業績で、マサチューセッツ工科大学のMoung…

エキモフ, アレクセイ イワノビッチ Екимов, Алексей Иванович

エキモフ, アレクセイ イワノビッチ(Екимов, Алексей Иванович, Alexe…

ルイ・E. ・ブラス Louis E. Brus

ルイ・ユージーン・ブラス (Louis Eugene Brus, 1943年8月10日-, オハイオ…

モウンジ・バウェンディ Moungi G Bawendi

モウンジ・バウェンディ (Moungi G Bawendi 1961年3月15日 パリ生まれ)はアメ…

マテリアルズ・インフォマティクスにおける分子生成の基礎

開催日:2023/10/11 申込みはこちら■開催概要近年、少子高齢化、働き手の不足の影…

はやぶさ2が持ち帰った有機化合物

小惑星リュウグウから始原的な「塩(Salt)」と有機硫黄分子群を発見(9月18日JAMSTECプレス…

Let’s Make Wave , Make World. −マイクロ波で!プロセス革新ワークショップ −

<内容>マイクロ波のプロと次世代プロセスへの転換に向けた勘所を押さえ、未来に向けたイノベーシ…

ゲルマベンゼニルアニオンを用いた単原子ゲルマニウム導入反応の開発

第566回のスポットライトリサーチは、京都大学化学研究所 物質創成化学研究系 有機元素化学領域 (山…

韮山反射炉に行ってみた

韮山反射炉は1857年に完成した静岡県伊豆の国市にある国指定の史跡(史跡名勝記念物)で、2015年に…

超高圧合成、添加剤が選択的物質合成の決め手に -電池材料等への応用に期待-

第565回のスポットライトリサーチは、東京工業大学 科学技術創成研究院 フロンティア材料研究所 東・…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP