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海外化学者インタビュー

第110回―「動的配座を制御する化学」Jonathan Clayden教授

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第110回の海外化学者インタビューは、ジョナサン・クレイデン教授です。マンチェスター大学化学科(訳注:現在はブリストル大学)に所属し、分子を構築するための新しい方法、特に形状や柔軟性の制御を可能にする方法を研究しています。それではインタビューをどうぞ。

Q. あなたが化学者になった理由は?

10代の頃、単純なルールがぶつかり合って複雑なものへと成長していく様に魅了されていました。 科学でも音楽でも言語でも・・・。もともとは分子生物学を志していましたが、大学1年生の時に有機物の仕組みに出会ったことをきっかけに化学に転向しました。機械論的な説明がフラスコの中でも細胞の中でも同じように適用されることに興味を持ち、化学の自由かつ建設的なところに魅力を感じました。紙に構造を書いて、分子を作る方法を研究室で計画できるのは、 とても魅力的です。今は、同じような機械論的なルールをねじ曲げて、それがいつ破られるかを確認することに多くの時間を費やしています。

Q. もし化学者でなかったら、何になりたいですか?またその理由は?

物を育てて料理します。たぶん1910年頃の、エドワード朝の紳士農夫の生活ですね。海の遠景、大規模な温室、豊かな菜園を備えた控えめな地所・・・魅力的です。

Q. 現在取り組んでいることは何ですか?そしてそれをどう展開させたいですか?

今、グループで最も進んでいる領域は、長距離にわたって分子の形状を制御する方法の発見です。これにより、新たなクラスの人工受容体を作ることができ、ナノメートルスケールで使用可能なシグナル伝達システムを開発可能と考えています。また、リチウムや炭素の化合物も研究しています。これらの化合物は、ある種の溶媒中では非常に不可解な振る舞いをします。

Q.あなたがもし歴史上の人物と夕食を共にすることができたら誰と?またその理由は?

7~8世紀のサクソン人の時代は、イギリスの歴史の中でも特に注目されています。8世紀の科学者、音楽家、私立探偵、歴史家、物議を醸した神学者、旅行者、そして当時の社会の発展を記録した作家であるベーダは、魅力的なディナーの客となるでしょう。

Q. あなたが最後に研究室で実験を行ったのはいつですか?また、その内容は?

アセトニトリルのリッター反応は、嵩高いアミンを作るための素晴らしい方法です。驚くほど発熱するので、5℃以下で実施しなければなりません。電話が鳴るまで、すべてがうまくいっていました。私が戻ったときには、黒くて粘着質なポリマーの泡でいっぱいになったドラフトを学生が押さえ込もうとしていました。悲しいかな、研究グループの運営は、有能な実験化学者であることとは多かれ少なかれ相容れないないものです。

Q.もしあなたが砂漠の島に取り残されたら、どんな本や音楽が必要ですか?1つだけ答えてください。

John Irvingの『The World According to Garp』にします。人生における多くのことが、その寛大なる乱雑さを備えた作品の中に潜んでいます。

マーラーの『交響曲第2番』も同じく良いですが、ベルクの『ヴァイオリン協奏曲』の破砕的な美しさと併せて楽しみたいですね。

Q.「Reactions」でインタビューしてほしい化学者を教えてください。

イアン・フレミングです。

原文:Reactions –  Jonathan Clayden

※このインタビューは2009年4月3日に公開されました。

cosine

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博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

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