[スポンサーリンク]

海外化学者インタビュー

第四回 分子エレクトロニクスへの展開 – AP de Silva教授

[スポンサーリンク]

第4回は英国クイーンズ大学のA Prassana de Silva教授です。 彼は分子センサー、分子論理回路、分子コンピューティングに関する研究に取り組んでいます。

Q. あなたが化学者になった理由は?

大学入学前のクラスで、素晴らしい化学教師との出会いがあった。Errol Fernandoは私だけでなく、世界中で様々な職業についた同世代のスリランカ人、後にパキスタン人を活気づけた。しかし、化学は古代より世界に根を張る主題―つまり現実は化学者の行いと密接に関連している、ということも私にとって嬉しいことだ。我々は好きなだけ思考を高めることができるけれども、結局は、善くもなり悪くもなり得る物質を扱い、それに没頭することが必要なのだ。

Q. もし化学者でなかったら、何になりたいですか?またその理由は?

パーカッショニストかドラマーだ。子供の頃から私はインフォーマルに演奏を楽しんできた。おそらくそれは、あらゆる素晴らしいドラム文化―高貴で古典的なものから友人とのどんちゃん騒ぎにいたるまで―がスリランカにあるためだろう。(暴力なしに)モノを叩いてその音を出すというのはとても楽しい。ドラムほど偉大で原始的な方法で、人々を結びつけているものを私は他に知らない。化学を毎日の糧にしながら、その一方で週末はドラムを叩くことが私の夢だ。幸運にもこの10年ほど、かなりそれに近い生活が送れている。

Q.概して化学者はどのように世界に貢献する事ができますか?

1つ目の質問で述べたように、化学者としての我々の仕事は、世界に直接的なインパクトを与える。管理官と法人の手の中にあるにもかかわらず。事実、昨今の「白く熱き革命」と、現在の「知識基盤型経済」は、新たな材料と化学プロセスに関する明らかな基盤となっている。少なくとも化学者がコントロールしているという点では、これは良い貢献だ。しかし我々は科学がもたらす環境的・医学的な観点で帰結をモニターするツールを開発することにも取り組み、そうして善き貢献をしなくてはならない。それに加えて、透明性があって理解可能な方法にてメディアで話をすることで、貢献しなくてはならない。世界が何を見、何を聞くかを決めているのはメディアなのだから。

Q.あなたがもし歴史上の人物と夕食を共にすることができたら誰と?またその理由は?

世界初の女性首相、Sirimavo Bandaranaikeだ。彼女が成し遂げた一線級のオリジナリティは、世界規模ではあるべき風に賞賛されなかったようだ。それは小国が世界に対して道筋を示した事例の一つだった。彼女がスリランカ全土を一度に取り仕切ることで、現代、そしてその先の未来まで、国の向かうべき道が確固たるものとなった―全ての付随する悲しみと、壊れた夢とともに。彼女に尋ねたいことは本当に沢山ある。

Sirimavo Bandaranaike

Sirimavo Bandaranaike

 

 

 

Q. あなたが最後に研究室で実験を行ったのはいつですか?また、その内容は?

2年前友人と私は、共用の分光分析器(今日まで私が働く部屋にある)を使って、分子コンピュータ識別(MCID)タグでタグ付けされた単一ポリマービーズが発する蛍光スペクトルを、何とかして測定しようとしていた。この努力は失敗に終わったのだが、3つのビーズを使えば上手くいくことがわかり、それは嬉しかった。微調整が必要な、やや専門家向けの分光分析器だったため結果には安心できた。他の実験によってMCIDは、大数母集団に属するマイクロメートル、もしくはそれより小さな物体に対して有効なタグ付け技術として確立された。シリコン基盤のコンピュータが出来なかった広く役立つことを、すこしばかりの分子コンピューティングができたのだ。

Q.もしあなたが砂漠の島に取り残されたら、どんな本や音楽が必要ですか?1つだけ答えてください。

Nihal Fernandoの‘Sri Lanka-A Personal Odyssey’は、この美しくも悩ましげな地について記したほろ苦いフォト・エッセイだ。つい最近まで心の中を占めていた素晴らしい過去を私に思い出させてくれる。Kevin Burkeの‘If the cap fits’は最も美しく優れたアイリッシュ・フィドルの生演奏だ。全ての形式でこの音楽は、北アイルランドへ私の興味を誘う、大きな要因となってきた。聴衆と演奏者が対等な関係でいられるバーで集まるという、アイルランド音楽セッションの形式は、大変魅力的だ。また、長いノンストップセッションの終わりにある、高揚感/疲弊感も大変価値有るものだ。

[amazonjs asin=”B0014GFHTS” locale=”JP” title=”If the Cap Fits”]

 

原文:Reactions-AP de Silva ※このインタビューは2007年3月16日に公開されたものです。

Avatar photo

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. 第124回―「生物・医療応用を見据えたマイクロ流体システムの開発…
  2. 第60回「挑戦と興奮のワイワイ・ワクワク研究センターで社会の未来…
  3. 第133回―「遺伝暗号リプログラミングと翻訳後修飾の研究」Jas…
  4. 第85回―「オープン・サイエンス潮流の推進」Cameron Ne…
  5. 第110回―「動的配座を制御する化学」Jonathan Clay…
  6. 第139回―「超高速レーザを用いる光化学機構の解明」Greg S…
  7. 第71回―「化学のリーディングジャーナルを編集する」Stephe…
  8. 第112回―「生体分子センサー・ドラッグデリバリーシステムの開発…

注目情報

ピックアップ記事

  1. ノーベル化学賞・受賞者一覧
  2. 石油・化学プラントのスマート保安推進に向けて官民アクションプランを策定
  3. ハロゲン原子の受け渡しを加速!!新規ホウ素触媒による触媒的ハロゲンダンス
  4. SPring-8って何?(初級編)
  5. ケムステイブニングミキサー 2024 報告
  6. 不溶性アリールハライドの固体クロスカップリング反応
  7. 香りの化学4
  8. シクロクラビン cycloclavine
  9. 化学に耳をすませば
  10. ストックホルム国際青年科学セミナー・2018年の参加学生を募集開始

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2010年8月
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031  

注目情報

最新記事

Host-Guest相互作用を利用した世界初の自己修復材料”WIZARDシリーズ”

昨今、脱炭素社会への実現に向け、石油原料を主に使用している樹脂に対し、メンテナンス性の軽減や材料の長…

有機合成化学協会誌2025年4月号:リングサイズ発散・プベルル酸・イナミド・第5族遷移金属アルキリデン錯体・強発光性白金錯体

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2025年4月号がオンラインで公開されています!…

第57回若手ペプチド夏の勉強会

日時2025年8月3日(日)~8月5日(火) 合宿型勉強会会場三…

人工光合成の方法で有機合成反応を実現

第653回のスポットライトリサーチは、名古屋大学 学際統合物質科学研究機構 野依特別研究室 (斎藤研…

乙卯研究所 2025年度下期 研究員募集

乙卯研究所とは乙卯研究所は、1915年の設立以来、広く薬学の研究を行うことを主要事業とし、その研…

次世代の二次元物質 遷移金属ダイカルコゲナイド

ムーアの法則の限界と二次元半導体現代の半導体デバイス産業では、作製時の低コスト化や動作速度向上、…

日本化学連合シンポジウム 「海」- 化学はどこに向かうのか –

日本化学連合では、継続性のあるシリーズ型のシンポジウムの開催を企画していくことに…

【スポットライトリサーチ】汎用金属粉を使ってアンモニアが合成できたはなし

Tshozoです。 今回はおなじみ、東京大学大学院 西林研究室からの研究成果紹介(第652回スポ…

第11回 野依フォーラム若手育成塾

野依フォーラム若手育成塾について野依フォーラム若手育成塾では、国際企業に通用するリーダー…

第12回慶應有機化学若手シンポジウム

概要主催:慶應有機化学若手シンポジウム実行委員会共催:慶應義塾大学理工学部・…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP