[スポンサーリンク]

ケムステニュース

100円で買えるカーボンナノチューブ

[スポンサーリンク]

 

東京大学の野田優准教授らは、高純度の単層カーボンナノチューブ(CNT)を従来法の約1000分の1のわずか10分で生成する技術を開発した。平面基板上にCNTを成長させる方法を応用し、ビーズ状の球体の表面に生成する。触媒の付け方を改善すれば、CNT回収までを一つの装置で繰り返せる。理論上、容積1リットルの装置で1日1キログラムの単層CNTを生成できる。高品質の単層CNT価格を500分の1以下の1グラム当たり100円にできる。  ガソリン精製などに使う流動層と呼ばれる装置で行う。表面に鉄触媒を添付した直径500マイクロメートル(マイクロは100万分の1)のセラミックス製ビーズを入れ、原料のアセチレンガスを流すと、約10分でビーズ表面に数百ナノメートル(ナノは10億分の1)の長さの単層CNTが成長する。CNTはガスの流量を上げるとビーズから切り離され、簡単に回収できる(引用:日刊工業新聞)。

名城ナノカーボンのHPによると、値段は50mgで9万5千円!1gに換算すると190万円!うむ、単層カーボンナノチューブを1g得ようと思えば車が買えてしまう訳です。ただし技術革新は進んでおり、どうやらニュースによると現在高純度単層カーボンナノチューブ1g50万円で手に入れる事ができるようです。それが今回の合成法を用いれば500分の1さらに生成に1週間かかっていたものが10分でできるとなると、本格的に実用化に結びつけたくなる技術ですね。ただ、実際今までかなりの量産化報道がなされてきたのにもかかわらず(関連記事参照)未だに価格が高いということは、量産化への道はもう少しかかりそうです。


nanotube.gif

カーボンナノチューブ(写真:名城ナノカーボン)

もちろん実用化にはまだ壁は有ると思いますが、とても有用な技術であるといえます。それに対して同じ炭素の同素体であるフラーレンは量産しているフロンティアカーボンでもまだまだ高く、一般的には1万円/gほど。あとから見つかったナノチューブの方が量産化に一歩近づいているようです。

ちなみに、著者が昔合成した有機化合物で、研究用試薬になったものはg単位で購入した場合1億4000万円しました(苦笑)。もちろん需要と供給のバランスと、極少量であっても全く利用できない訳ですが。

ところで、研究レベルの話ですが、ナノチューブを発見した飯島先生のcitation(引用)はすでに8000を超えているとの事。さすがにそれだけ研究者が躍起になって研究をしているというのは私の分野にはありません。今後どうなっていくかが注目です。

 

  • 外部リンク

東京大学 大学院工学系研究科 化学システム工学専攻 山口・野田研究室

野田優のホームページへようこそ

ナノテク未来地図インタビュー?野田優さん(東京大学大学院工学系研究科化学システム工学専攻准教授)

カーボンナノチューブ製造技術開発の動向
Avatar photo

webmaster

投稿者の記事一覧

Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

関連記事

  1. ダイハツなど、福島第一原発廃炉に向けハニカム型水素安全触媒を開発…
  2. 日本で発展する化学向けAIと量子コンピューターテクノロジー
  3. 猛毒キノコ「カエンタケ」が各地で発見。その有毒成分とは?
  4. キレーション療法ってなに?
  5. 相次ぐ海外化学企業の合併
  6. 「元素戦略プロジェクト」に関する研究開発課題の募集について
  7. フロンよりもオゾン層を破壊しているガスがある
  8. 氷河期に大量のメタン放出 十勝沖の海底研究で判明

注目情報

ピックアップ記事

  1. 開催間近!ケムステも出るサイエンスアゴラ2013
  2. 吉田 優 Suguru Yoshida
  3. ファイザーがワイスを買収
  4. 腎細胞がん治療の新薬ベルツチファン製造プロセスの開発
  5. 【追悼企画】カナダのライジングスター逝く
  6. C(sp3)-Hアシル化を鍵とするザラゴジン酸Cの全合成
  7. OIST Science Challenge 2022 (オンライン)に参加してみた
  8. ケムステ版・ノーベル化学賞候補者リスト【2023年版】
  9. 科学とは「未知への挑戦」–2019年度ロレアル-ユネスコ女性科学者日本奨励賞
  10. 第74回「理想的な医薬品原薬の製造法を目指して」細谷 昌弘 サブグループ長

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2009年7月
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031  

注目情報

最新記事

有馬温泉で鉄イオン水溶液について学んできた【化学者が行く温泉巡りの旅】

有馬温泉の金泉は、塩化物濃度と鉄濃度が日本の温泉の中で最も高い温泉で、黄褐色を呈する温泉です。この記…

HPLCをPATツールに変換!オンラインHPLCシステム:DirectInject-LC

これまでの自動サンプリング技術多くの製薬・化学メーカーはその生産性向上のため、有…

MEDCHEM NEWS 34-4 号「新しいモダリティとして注目を浴びる分解創薬」

日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、新たにオープン…

圧力に依存して還元反応が進行!~シクロファン構造を活用した新機能~

第686回のスポットライトリサーチは、北海道大学大学院理学研究院化学部門 有機化学第一研究室(鈴木孝…

第58回Vシンポ「天然物フィロソフィ2」を開催します!

第58回ケムステVシンポジウムの開催告知をさせて頂きます!今回のVシンポは、コロナ蔓延の年202…

第76回「目指すは生涯現役!ロマンを追い求めて」櫛田 創 助教

第76回目の研究者インタビューは、第56回ケムステVシンポ「デバイスとともに進化する未来の化学」の講…

第75回「デジタル技術は化学研究を革新できるのか?」熊田佳菜子 主任研究員

第75回目の研究者インタビューは、第56回ケムステVシンポ「デバイスとともに進化する未来の化学」の講…

第74回「理想的な医薬品原薬の製造法を目指して」細谷 昌弘 サブグループ長

第74回目の研究者インタビューは、第56回ケムステVシンポ「デバイスとともに進化する未来の化学」の講…

第57回ケムステVシンポ「祝ノーベル化学賞!金属有機構造体–MOF」を開催します!

第57回ケムステVシンポは、北川 進 先生らの2025年ノーベル化学賞受賞を記念して…

櫛田 創 Soh Kushida

櫛田 創(くしだそう)は日本の化学者である。筑波大学 数理物質系 物質工学域・助教。専門は物理化学、…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP