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海外化学者インタビュー

第60回―「エネルギー・環境化学に貢献する金属-有機構造体」Martin Schröder教授

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第60回の海外化学者インタビューは、マーティン・シュレーダー教授です。ノッティンガム大学化学科(訳注:現所属はマンチェスター大学)に所属し、異常酸化状態にある金属、多孔性ナノ構造の集積、金属カチオンおよびアニオン錯形成に特に重点を置いた金属配位化学に取り組んでいます。それではインタビューをどうぞ。

Q. あなたが化学者になった理由は?

学校で化学を楽しんでいましたし、Cullingworth先生というインスピレーションあふれる化学の先生がいて幸運でした。Cullingworth先生はいつも、より多くの何か、新しい何か、発見され学ぶべき予期しない何かがあることを示してくれました。両親も私の大学進学に尽力してくれ、家庭からもたくさんの支援を受けました。

Q. もし化学者でなかったら、何になりたいですか?またその理由は?

自分がしていること以外の何かをしようと、真剣に考えたことはありません。もし大学で化学を勉強していなかったら、医学の勉強をしていたかもしれません。しかし私は、教育と研究に常に惹かれていたのではないかと思います。「The Best Band You Never Heard in Your life」のセカンドギタリストは、楽しく儲かったかもしれません。しかし私には音楽的才能がありませんので、今のところ、そのやり方は通用しないと思います。

Q. 概して化学者はどのように世界に貢献する事ができますか?

化学は非常に多面的で、多くの分野に影響を及ぼしており、健康、エネルギー、持続可能性における今日の多くの主要な問題に関連しています。明らかに化学者は、自ら選んだ分野で第一線の研究を行うことで貢献していますが、特にアカデミアの人間にとっては、学部教育に対する熱意とコミットメントを維持することも極めて重要です。挑戦して未来の科学者になるように学生たちには奨励していますが、それは学部の授業中においてです。

Q.あなたがもし歴史上の人物と夕食を共にすることができたら誰と?またその理由は?

チャールズ・ダーウィンです。彼の非常に巧妙な理論は、初めて発表されたときと同じくらい、今日でも大きな影響を与えています。

Q. あなたが最後に研究室で実験を行ったのはいつですか?また、その内容は?

約20年前です!博士課程学生の一人が、機能性アザクラウン分子の単離と精製に問題を抱えていたので、この物質を再結晶する適切な方法を教えました。その学生は何日も悪戦苦闘していましたが、思えば私は問題を5分ほどで解決しました。実験作業を高く評価することにしました。

Q.もしあなたが砂漠の島に取り残されたら、どんな本や音楽が必要ですか?1つだけ答えてください。

ズルをして、その島で立ち往生している人にCDと本を売ったり、音楽用のハードディスクを買ったりするでしょう。

まずは、オペラのライブ録音ですね。「パルジファル」「ニーベルングの指環」「マイスタージンガー」「トリスタンとイゾルデ」 (ワーグナー)、「フィガロの結婚」(モーツァルト)、「ムツェンスク郡のマクベス夫人」(ショスタコーヴィチ)、「ホーヴァンシチナ」(ムソルグスキー)、「パレストリーナ」(プフィツナー)などです。続いてトッド・ラングレン、フランク・ザッパ、ヨルマ・コーコネンの作品集に、少しばかりのヴァン・ダー・グラフ・ジェネレーター。これで不足でしょうか?

 

原文:Reactions – Martin Schröder

※このインタビューは2008年4月18日に公開されました。

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cosine

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博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

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