[スポンサーリンク]

海外化学者インタビュー

第12回 DNAから人工ナノ構造体を作るーNed Seeman教授

[スポンサーリンク]

 ショートインタビュー第12回目は私立ニューヨーク大学化学科・Ned Seeman教授です。Seeman教授は構造DNAナノテクノロジー(Structural DNA nanotechnology)と呼ばれる分野を開拓し、DNAの性質を利用したナノスケールの新しい構造体の研究をされています。

Q. あなたが化学者になった理由は?

私が高校生の時に生物を教わった先生が、1セメスター(半期)におよぶ授業の実に初めの三分の一を、原子や分子について講義してくださいました。というのも、この先生は「生命は化学反応である」という視点で生物学を見ておられたからです。それ以来ずっと私は生命の神秘に夢中になり、時に生物学、はたまた化学の側面から生命というその一点について自身の研究者としてのキャリアを費やしてきました。核酸の持つ情報と結晶構造の美しさ、これらの魅力に取り憑かれた私は、とりわけそれらがどのように情報のやり取りをするか(インターフェイス)について研究してきたわけですが、ただ分析をするよりも何かを創り上げたいという思いから構造DNAナノテクノロジーの領域へと進んでいきました。

 

Q. もし化学者でなかったら、何になりたいですか?またその理由は?

何物かを創造したいという私の衝動に対して、化学がその道を与えてくれました。もしそれが出来なかったとしたら、おそらくアーティストか何かになろうとしたのだろうと思います…残念ながらその方面の才能は私には欠けているのですが。私は根っからの視覚に頼る人間で、音響には疎いのです(原文:I’m a totally visual person, with not a lot of response to acoustic phenomena.)。

 

Q.概して化学者はどのように世界に貢献する事ができますか?

すべきことをするーつまり物質の新たな「カタチ」を創り、分析し、そして可能な限り精密なスケールでそれらをコントロールすることですね。加えて忘れてはならないのは、化学者もまた一般市民の一部であり、同様に果たすべき社会的責任があるということです。

 

Q.あなたがもし歴史上の人物と夕食を共にすることができたら誰と?またその理由は?

そうですね、フランシス・ベーコンでしょうか。経験論の哲学を発達させた初期の哲学者の一人です。ある状況で何が起こりうるだろうか、を議論していた時代から、実際に起きていることを解明すべく議論をするようになったことは、概念的に大きな飛躍です。晩餐のお供には多岐に渡る「味」を期待します。

Francis Bacon

Francis Bacon

Q. あなたが最後に研究室で実験を行ったのはいつですか?また、その内容は?

私はいわゆる「ウェット」なラボワークをしたことがありません。ほとんどプログラムを書くかモデリングをしていまして、モデリングは今も続けています。(訳者注:一般に計算化学等コンピューターを扱う実験(室)をドライと呼ぶのに対し、試薬や溶媒を使ういわゆる実験(室)をウェットと呼ぶ)

 

Q.もしあなたが砂漠の島に取り残されたら、どんな本や音楽が必要ですか?1つだけ答えてください。

私が最も敬愛する作家はトマス・ピンチョンなのですが、彼のパラノイア(偏執的)な作風は無人島の隔離された環境にはそぐわないと思いますね。ですから、大地と空気と炎と水だけでどのようにイカダを組み立てるかが書かれた本か、もし他にもっと役立つ本があるなら何かそういうものを持って行きたいです。私は音楽は聞かないので、CDの代わりにDVDを持っていくとして、映画「カサブランカ」でも持っていくとしますかね。

 

原文:Reactions – Ned Seeman
※このインタビューは2007年5月11日に公開されたものです。

 

せきとも

せきとも

投稿者の記事一覧

他人のお金で海外旅行もとい留学を重ね、現在カナダの某五大湖畔で院生。かつては専ら有機化学がテーマであったが、現在は有機無機ハイブリッドのシリカ材料を扱いつつ、高分子化学に

関連記事

  1. 第75回―「分子素子を網状につなげる化学」Omar Yaghi教…
  2. 第70回―「ペプチドの自己組織化現象を追究する」Aline Mi…
  3. 第三回 北原武教授ー化学と生物の融合、ものつくり
  4. 第97回―「イメージング・センシングに応用可能な炭素材料の開発」…
  5. 第103回―「機能性分子をつくる有機金属合成化学」Nichola…
  6. 第91回―「短寿命化学種の分光学」Daniel Neumark教…
  7. 第56回―「メタボロミクスを志向した質量分析技術の開発」Gary…
  8. 第135回―「量子電気力学から光と分子の相互作用を理解する」Da…

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. 第107回―「ソフトマター表面の物理化学」Jacob Klein教授
  2. 第四回 ケムステVシンポ「持続可能社会をつくるバイオプラスチック」
  3. 有機合成化学協会誌2021年2月号:デオキシプロピオナート構造・遠隔不斉誘導反応・還元的化学変換・海洋シアノバクテリア・光学活性キニーネ
  4. 研究助成情報サイト:コラボリー/Grants
  5. 有機分子触媒ーChemical Times特集より
  6. V字型分子が実現した固体状態の優れた光物性
  7. りん酸2-(メタクリロイルオキシ)エチル2-(トリメチルアンモニオ)エチル : 2-(Methacryloyloxy)ethyl 2-(Trimethylammonio)ethyl Phosphate
  8. グサリときた言葉
  9. ゲームを研究に応用? タンパク質の構造計算ゲーム「Foldit」
  10. プメラー転位 Pummerer Rearrangement

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

注目情報

注目情報

最新記事

第142回―「『理想の有機合成』を目指した反応開発と合成研究」山口潤一郎 教授

第142回の化学者インタビューは日本から、皆さんご存じ、山口潤一郎教授の登場です。名古屋大学理学部化…

【書籍】ゼロからの最速理解 プラスチック材料化学

今月発売された『ゼロからの最速理解 プラスチック材料化学』(佐々木 健夫 著,コロナ社)という書籍を…

重水は甘い!?

同位体はある元素、すなわち同一の原子番号をもつ原子核において、中性子数の異なる核種のことをいいますね…

人物でよみとく化学

概要化学の歴史をつくった約50人を収録。高校・大学の化学の勉強に役立つ16テーマをあつかい、…

金属ナトリウム分散体(SD Super Fine ™)

概要金属ナトリウム分散体(SD Super Fine ™)は、金属ナトリウムの微粒…

アクセラレーションプログラム 「BRAVE 2021 Spring」 参加チームのエントリー受付中!(5/10〆切)

Beyond Next Ventures株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役社⻑:伊藤毅、以下「…

赤キャベツから新しい青色天然着色料を発見 -青色1号に代わる美しく安定なアントシアニン色素-

青の食品着色料として広く使われる化学合成の「青色1号」とほぼ同じ色で、長期保存時の安定性に優れた天然…

砂塚 敏明 Toshiaki Sunazuka

砂塚 敏明 (すなづか としあき)は、日本の有機化学者である。学校法人北里研究所 理事、北里大学大村…

Chem-Station Twitter

PAGE TOP