[スポンサーリンク]

海外化学者インタビュー

第13回 化学を楽しみ、創薬に挑み続ける ―Derek Lowe博士

[スポンサーリンク]

第13回目はDerek Lowe博士です。Lowe博士はいくつかの大手製薬会社で研究員として20年程、これまで統合失調症、アルツハイマー、糖尿病、骨粗しょう症などに対する薬の開発に従事してきました。また、Lowe博士はご自身の研究者としてのキャリアを生かし、創薬や製薬企業について豊富なコメントを公開(英文)しているブロガーとして知られています。
残念ながら未だ市場に送り出すことができた薬は無いそうですが(2007年5月原文インタビュー現在)、薬の研究開発に莫大な費用が掛かる理由の一端として、いかにそれが困難極まることなのか、これ以上の説明はいらないでしょう。

In the Pipeline

In the Pipeline

Q. あなたが化学者になった理由は?

小さい頃から科学が好きで、天体望遠鏡や顕微鏡、児童向け化学実験セットなんかをいじくりまわす男の子でした(妻は今でも私はそのままだと言うでしょう)。化学はちょうど生物(当時の私にはとても曖昧なものに思えました)と物理(同様に、堅っ苦しいなと)の間で私の感覚にフィットしたんです。ルールはある、でも堅苦し過ぎない。文学作品を読むことも随分小さい頃から大好きでしたが、図書館ならともかく実験室を家に作ることは大変ですからね。(訳者注:文学作品は学者でなくても読めるが、化学は化学者でないとできない、というロジック。)

 

Q. もし化学者でなかったら、何になりたいですか?またその理由は?

それでも尚、なんらかの分野における研究者になりたいです。誰も知らない事を発見する、手を動かして実験をする、全ては自身のスキルと直感次第 ― そのような職業は他に思い浮かびません。学校の先生、作家、はたまた株式投資のポートフォリオをマネージメントする証券マン、私はこういった職業でも楽しむことはできますが、こうして化学者として過ごしている今程は楽しめないと思います。

 

Q.概して化学者はどのように世界に貢献する事ができますか?

他の科学者達と同じことです。最も不思議な最先端の事柄について、自らの能力を出しきって研究すること。具体的なトピックをあげつらうことはしません、これはそういうことではないのです。自身が感動できること、そして一見意味の無いような実験に時間や場所を費やせること。化学とは(そして一般に科学とは)何かを考えることも良い助けになると思います。ほとんどの人たちは(その言語が生まれて数世紀経ったって)その本当の意味を未だに知らないのですから。

 

Q.あなたがもし歴史上の人物と夕食を共にすることができたら誰と?またその理由は?

あーこれは厳しい。特にどこの王様も政治家も思い浮かびません。ニュートンは変人だったんですよね?もっと最近の人で挙げるなら、リチャード・ファインマン(物理学者)かピーター・メダワー(生物学者)ですかね。実際に会えるなら、フリーマン・ダイソン(物理学者)と会ってみたいですね、彼はまだご存命だ!もし現在の我々の価値観を伝えても良いのであれば、18世紀の自然哲学者と会うのも楽しそうですね。科学以外なら、ウラジミール・ナボコフ(作家)。ジェイムス・ジョイスなんかに会ったらきっと私に金をせびろうとするんじゃないでしょうか。(James Joyce:アイルランド出身の小説家、酒浸りで浪費癖があったらしい。)

Freeman John Dyson

Freeman John Dyson

 

Q. あなたが最後に研究室で実験を行ったのはいつですか?また、その内容は?

これは簡単。会社が我々の研究所の閉鎖を発表した時、私は一目散にラボへ戻り、魅力的だったサイドプロジェクトの実験をし始めました。後にも先にもその時だけですね、皆が各々のオフィス用品なんかを梱包している間、私だけがサンプルを取り分けてバッファー(緩衝液)と混ぜていたのは。最後の実験はこの前の1月(2007年)で、翌日には私が使おうとしていた機器がしまい込まれてしまいました。(原文:the instrument I was needed was mothballed. mothballは防虫剤、モス(蛾)のボール。)次回の実験は(ただの希望ですが)私が次の仕事を始めたらすぐ、何をやるかは知りませんが。現場(実験室)には居続けたいです。

 

Q.もしあなたが砂漠の島に取り残されたら、どんな本や音楽が必要ですか?1つだけ答えてください。

このテの質問にはきちんと答えられたことが無いんですよ!いま自分の肩越しに壁の本棚を眺めていますが…どうやってここから一冊を選べと?仕方がないので最も分厚い名作集でも持っていくしか無いですね。救命胴衣の二倍くらい厚いのですが、なんとか持っていけるでしょう。文学、詩、いくつかの数学や論理の問題集、どれも選べませんけど。音楽CDはいくらか選び易い。たぶんバッハの何か。でもどうしても一つだけ選ぶのなら、スティーリー・ダンが第一候補ですね。

[amazonjs asin=”B00NJ1MQQI” locale=”JP” title=”彩(エイジャ)”] 原文:Reactions – Derek Lowe
※このインタビューは2007年5月18日に公開されたものです。

Avatar photo

せきとも

投稿者の記事一覧

他人のお金で海外旅行もとい留学を重ね、現在カナダの某五大湖畔で院生。かつては専ら有機化学がテーマであったが、現在は有機無機ハイブリッドのシリカ材料を扱いつつ、高分子化学に

関連記事

  1. インタビューリンクー住化廣瀬社長、旭化成藤原社長
  2. 第12回 DNAから人工ナノ構造体を作るーNed Seeman教…
  3. 第17回 研究者は最高の実験者であるー早稲田大学 竜田邦明教授
  4. 第149回―「ガスの貯蔵・分離・触媒変換に役立つ金属-有機構造体…
  5. 第65回―「タンパク質代替機能を発揮する小分子の合成」Marty…
  6. 第123回―「遺伝暗号を拡張して新しいタンパク質を作る」Nick…
  7. 第42回―「ナノスケールの自己集積化学」David K. Smi…
  8. 第86回―「化学実験データのオープン化を目指す」Jean-Cla…

注目情報

ピックアップ記事

  1. CRISPRの謎
  2. 第21回「有機化学で生命現象を理解し、生体反応を制御する」深瀬 浩一 教授
  3. アメリカ大学院留学:卒業後の進路とインダストリー就活(2)
  4. 年に一度の「事故」のおさらい
  5. ヤマハ発動機、サプリメントメーカーなど向けにアスタキサンチンの原料を供給するビジネスを開始
  6. 化学探偵Mr.キュリー7
  7. 有機化合物で情報を記録する未来は来るか
  8. 有機反応を俯瞰する ーヘテロ環合成: C—C 結合で切る
  9. ポンコツ博士の海外奮闘録⑨ 〜博士,Yosemiteに行く〜
  10. ノルゾアンタミンの全合成

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2011年1月
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31  

注目情報

最新記事

光でゆがむ分子 ― アルミニウム錯体の対称性の破れをコヒーレント振動分光で観測

第711回のスポットライトリサーチは、九州大学大学院理学研究院 化学部門(分光分析化学研究室)・江原…

有機合成のカラム精製に革新を 〜モノリスカラムで変わる「研究のスピード」〜

筆者の研究室では有機合成を行っています。合成も大変ですが、何より大変なのが精製操作。最近、とある…

酸素は系内に入り込み続ける【プロセス化学者のつぶやき】

前回まで1. 設定温度と系内の実温度のお話2. 温度値をどう判断するか3. 反応操作をし…

アンモニウム構造によりラジカル種の発生位置を完全に制御!

第710回のスポットライトリサーチは、関西学院大学理工学研究科 村上研究室の榊原 陽太(さかきばら …

化学つれづれ草【ある研究者の回想】

概要物理化学者で量子機能材料を専門とする著者によるエッセイ集.化学者としての研究,教育,人生…

第60回有機反応若手の会

開催概要有機反応若手の会は、有機化学分野で研究を行う全国の大学院生を中心とした若手研究者が集い、…

ノーベル賞受賞者と語り合う5日間!「第18回HOPEミーティング」参加者募集!

申し込みはこちら概要主催:独立行政法人 日本学術振興会(JSPS)開催地:神奈川…

光触媒による高効率なCO2還元の実現―まさかの光を弱く当てることが重要だった―

第709回のスポットライトリサーチは、東京科学大学 理学院(前田研究室)博士後期課程2年の仲田竜一 …

「π-πスタッキング」という言葉が生む誤解【芳香環の相互作用を見直す: 前編】

芳香環が平行に並んで近接しているとき、その構造を「π–π スタッキング」と表されることがよくあります…

一重項酸素によるC(sp2)−P結合切断を用いた長波長光によるリン化合物のアンケージング

第 708 回のスポットライトリサーチは、同志社女子大学 薬学部 医療薬学科 5…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP