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海外化学者インタビュー

第71回―「化学のリーディングジャーナルを編集する」Stephen Davey博士

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第71回の海外化学者インタビューは、ステファン・ダービー博士です。Nature Chemistry誌のAssociate Editorを務めています(訳注:2020年1月現在、Nature Reviews Chemistry誌のChief Editorを務めています)。それではインタビューをどうぞ。

Q. あなたが化学者になった理由は?

真面目ながら予測可能な答えとしては、真に優秀な科学教師が何人かいたからです。インスピレーションを与えてくれたAndrew Munro氏とJeremy Bushrod氏には感謝しています。

面白い答えはJohn Nettles氏ですが、これには説明が必要でしょう。テレビのいろんな警官番組―この言葉を、当初法医学を職業にしようと思わされた様々なミステリー・ドラマを包括するものとして広く使っています―に私は熱中していました。ありがたいことに、上記の先生のどちらかまたは両方が、私の選択肢を広げてくれました。化学のような、もっと幅広いものを勉強するよう勧めてくれたのです。大学で有機化学に興味を持つようになったのは、病理学、弾道学、分析化学の専門家、およびこれらショーの平均的主人公として表される他のすべてのマルチタレントになる必要が無くなったからです。誤解しないでほしいですが、今でもこれらの作品を視聴していますが、科学的真実は作家の芸術的才能によって大きくゆがめられています。

Q. もし化学者でなかったら、何になりたいですか?またその理由は?

今ではプロのスポーツマンになるなんて夢にも思っていませんが、シェフィールド大学在学中にスヌーカーを始めました。どちらもプロにはなれないと思いますが、審判にチャレンジすることはできると思います。好きなことをしながら世界を旅することができ、毎日が違って見えるでしょう。雑誌編集者になることとの類似点は、率直に言って驚くべきものです。

Q. 概して化学者はどのように世界に貢献する事ができますか?

病気、食糧不足、エネルギーなどの明白な解決策はさておき、科学に関する神話のいくつかを払拭できれば素晴らしいと思います。科学を「否定できない長い事実リスト」と学校で教えられていることには、ずっと失望しています。その結果、偉大な科学者になるかもしれない多くの人々が、若いうちに意気消沈し、二度と戻ってこないのです。

Q.あなたがもし歴史上の人物と夕食を共にすることができたら誰と?またその理由は?

現代科学哲学の父の一人、フランシス・ベーコンです。いろいろな意味で質問3に対する回答と関係がありますが、彼がシェイクスピアだとする神話を、私自身で検証し、払拭していきたいと思います。

Q. あなたが最後に研究室で実験を行ったのはいつですか?また、その内容は?

私の排気実験台のエントロピーが低下し続ける最中に、ラボに一緒に居た人に聞いてみればいいと思います。最後の実験はおそらくジアゾ―チオケトンカップリング反応で、Feringa研究室の光駆動分子モーターの基礎となっています。問題の多い反応で90%以上の収率を達成できたので、かなり満足していました。用いた反応剤の特別な組み合わせが決め手だったと思います。

Q.もしあなたが砂漠の島に取り残されたら、どんな本や音楽が必要ですか?1つだけ答えてください。

クイーンのグレイテスト・ヒットです。これでどうなるのかはわかりませんがが、車内のすべての音楽がクイーンのCDになってしまうことは経験上知っています。これを持っていけば、音楽の全セレクションにアクセスできるようになるのではないかと思いました。

本については、マーチ有機化学!いや、まじめな話、かなりの量の本を読まなければならないでしょうが、本を2回読むことはめったにありませんし、クイーンのCDがイマイチだとわかったら、しばらくは何か続けられるものが欲しいです。特にココナッツの殻でいかだを作る方法が書かれているなら、サバイバルガイドでもいいかもしれません。

 

原文:Reactions – Stephen Davey

※このインタビューは2008年7月4日に公開されました。

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cosine

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博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

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