[スポンサーリンク]

一般的な話題

研究室でDIY!~エバポ用真空制御装置をつくろう~ ①

[スポンサーリンク]

 

エバポ用真空制御装置とは、ロータリーエバポレーター、ダイアフラムポンプに接続して留去したい溶媒の入ったフラスコ内の圧力を自動で一定に保つための装置です。この装置はEYELAやBUCHIから販売されていますが、高価な装置であるためゲージ付バルブなどを用いていて手動で圧力を調節している場合もあります。

エバポ用真空制御装置の面々

 

今回私は、工場などで使われている圧力センサ、電磁弁などを利用すれば、この真空制御装置を安く自作できるのではないかと思い挑戦してみました。中古の圧力センサなどをインターネットで安く入手できたおかげもあり1万円ちょっとで自作できてしまいました。市販の装置のなかには溶媒の種類を入力すると全自動で留去してくれるプログラムが入っている装置もあり、今回自作したものはそれに遠く及びませんが、試行錯誤の末に最低限の機能を備え、問題なく使えるものが完成しました。

下の写真が完成した装置の前面と背面です。前面左側のダイヤルが圧力を設定するためのもので、え全面下側の液晶ディスプレイにフラスコ内の実際の圧力(PV)と設定圧力(SV)を表示するようにプログラムを組みました。背面には外気を取り込んで真空度を調節する電磁弁とダイアフラムポンプに接続して真空度を調節するための二つの電磁弁が固定されており、ケースからはみ出している左側に写っているものは圧力を測定するためのセンサです。

装置の前面と背面

 

折角つくったので、このエバポ用真空制御装置の作り方を共有したいと思います。詳しく説明するため、複数記事に分けての公開となります。今回1記事目は、部品の大まかな説明マイコンについて、また必要なパーツを集めるところから始めたいと思います。

部品のおおまかな説明

装置を構成している部品のおおまかな説明をします。下にケースに収める前の装置の構成と対応する写真を示します。

配線図に載っている部品の説明を大まかにまとめました。

ACアダプター:DC12Vの電源を圧力センサやArduino(アルデュイーノ)マイコンボードに供給する。

圧力センサ:エバポレーターに接続し、フラスコ内の圧力に応じた電気信号を出力する。

Arduinoマイコンボード:ICチップに装置を動作させるためのプログラムが保存されている。圧力センサの出力する電気信号をmbar単位に換算、設定値(SV)と実測値(PV)を比較して二つの電磁弁をON/OFFするプログラムなどが書き込まれている。

液晶ディスプレイ:フラスコ内の実際の圧力と設定圧力をmbar単位で表示する

設定圧力調節ダイヤル:回すと設定圧力を変更することができる。

リセットボタン:押すと設定圧力として1013 mbarが代入される。終了時に押す。

リレー1, 2100Vの電源で動作する二つの電磁弁をマイコンが出力する5Vの電気信号で制御するための電子部品。

電磁弁1:二つのホース口のうち片方はダイアフラムポンプに、もう一方はエバポレーターに接続する。この電磁弁が開いている間はフラスコ内が減圧される。

電磁弁2:二つのホース口のうち片方は外部に解放されており、もう一方はエバポレーターに接続する。この電磁弁が開いている間、フラスコ内は大気圧に戻ろうとする。

Arduinoやらマイコンやら初めて聞く語句かもしれませんが、次のセクションで説明します。今回は、設定値(SV)と実測値(PV)を絶えず比較して、SV<PVならばダイアフラムポンプに繋がっている電磁弁1を開放し、フラスコ内の圧力を下げ、SV>PVならば電磁弁2を開放しフラスコ内の圧力を大気圧に近づけるようなプログラムによって真空制御を行うことにしました。この方法は単純ですが精密な制御は難しいようです。ですが、とりあえずのものはこれで完成したので、これでよしとしました。

マイコンとは? Arduinoとは?

マイコンとはマイクロコントローラの略で、電子機器制御用のプロセッサのことです。現代社会においては、家電、自動車をはじめとするあらゆる電子機器に内蔵されていて、センサからの情報に基づき内蔵されたプログラムに従って装置を制御することができます。本来、マイコンのプログラミングには専門的知識が要求されるものでしたが、2008年ごろからパソコンさえあれば比較的簡単に利用できるArduinoと呼ばれるマイコンボードが注目を集めています。日本語では”アルデュイーノ”などと呼ばれるこのマイコンボードには心臓部であるプロセッサに加えて、プログラムの書き込みに必要なUSBインターフェースなども実装されていて、利用者はパソコンと接続するだけで使い始めることができます。10年以上前から注目されているArduinoですが、化学系研究室での利用はほとんどないように思われ、名前すら初めて聞いたという方が多いと思われます。最近ではアズワンのカタログにも掲載されるようになり、情報、電気電子、機械系以外の分野でも利用が広がっていくと考えられます。Arduinoボードには多くの種類がありますが、標準的なArduino Unoは3千円程度でAmazonなどから購入できます。

例えば、Arduinoに温度センサと液晶パネルをつなげれば、温度計が作れます。さらにヒーターを接続すればウォーターバスが出来上がります。さらにプログラムの工夫次第で、途中から設定温度を変えるといったプログラム温度調節も可能です。

このようにArduinoを使えばさまざまな測定装置、実験装置を簡単に作れてしまう可能性があるわけです。安全性、安定性、耐久性などの問題から、市販されている装置の代替となるようなものは作れないかもしれませんが、こんな装置が欲しい!という願いはかなえられるかもしれません。

パーツ集め

今回と次回の記事では、圧力センサとArduinoをつなげてパソコンの画面に圧力を表示するところまでを説明します。 ここでは、それに必要なパーツのみを挙げます。次回の記事ではさらに液晶ディスプレイを接続してパソコンなしで圧力を確認する方法を説明し、最終回で、電磁弁、ロータリーエンコーダなどを接続し、真空制御を行うところまでを説明します。

  • Arduino本体(Arduino Uno 1個)(秋月電子通商, 通販コード: M-07385)

※さまざまなArduinoボードが市販されていますが、最も一般的なArduino Unoを使うことにします。Amazonなど、他の通販サイトからも購入できます。

※初めてArduinoを使う方にはArduino Uno本体、USBケーブル、ジャンパーワイヤー、ブレッドボードなどがセットになった「Arduinoをはじめようキット」がお勧めです。細々した部品を集める手間が省けます。

[amazonjs asin=”B0025Y6C5G” locale=”JP” title=”Arduinoをはじめようキット”]

センサレンジ:連成圧用[−100〜100kPa]、管接続口径:R1/4(M5めねじ付)、出力仕様:1〜5V 電圧出力タイプ (モノタロウ、注文コード: 42382926)

※品番が少しでも異なっていると仕様が変わってくるので注意してください。

※電源装置などがあればそれを用いてもらってかまいません。

  • ジャンパーワイヤー(ブレッドボード・ジャンパーワイヤ(オス-オス) 10 cmセット 1セット) (秋月電子通商、通販コード: C-05371)

※今回は二本しか使いません。

※「Arduinoをはじめようキット」には含まれています。

その他必要なもの

  • ミノムシクリップ(リード線付) 今回は最低4本必要です。ホームセンターなどでも購入できます。
  • パソコン: プログラミングに使います。また、Arduinoに電源を供給するのにも使います。
  • USBケーブル: パソコンとArduino間の通信に用います。プリンターをつなぐのにも使われる片側がUSB Type-Bのものを準備してください。

※「Arduinoをはじめようキット」には含まれています。

  • ダイアフラムポンプ: 油回転真空ポンプは、到達真空度がセンサの測定範囲外となり故障の原因となるので使わないでください。エバポに使われているもので大丈夫です。アスピレーターなどでもよいと思います。
  • バルブ:外気を取り込んで圧力の調節に用います。二方、三方コックでの代用も可能です。
  • 真空計: 自分で電圧-圧力直線を求める際に使います。大気圧~10 mbar程度まで測定できれば十分です。デジタルの方が使いやすいと思われます。記事で用いているセンサと同系統のセンサを用いるならば、ほぼ同じ直線となるはずなので身近に真空計がない場合は記事と同じ電圧-圧力直線を使ってください。
  • 真空ホース: エバポとダイアフラムポンプ間の接続に使われているもので大丈夫です。
  • チューブコネクター(Y型or T型):ホースを分岐させるのに使います。ガラス製T字管などなんでもかまいせん。2個以上必要です。

工具など

  • ニッパー: ACアダプターのプラグを切断し、ケーブルの皮を剥くのに使います。
  • ワイヤーストリッパー:あると便利です。ケーブルの皮むきが一瞬で終わります。

注意事項

今回は最大12Vの電源なので感電の危険はないですが、ショートすると火花が出ることがあります。有機溶媒ななど可燃性のものが置いてある場所では実験しないでください。また、配線をいじる前には必ず電源が供給されていないことを確認してください。そして、電源を供給する前に、回路がショートしていないか入念に確認してください。

 

次回の記事では圧力センサの信号をパソコンに転送してみるところからスタートします。それではお楽しみに。

エバポ真空制御装置を作ろうシリーズ

  1. 部品の大まかな説明、マイコンについて、また必要なパーツを集め (本記事)
  2. 圧力センサの信号をパソコンに転送。ハードウェア編とソフトウェア編
  3. 液晶ディスプレイを接続し、それに表示する方法
  4. 全部接続してみよう
  5. 組み立てて動かしてみよう

本記事は、大阪大学鳶巣研究室の櫻井駿さん(博士課程2年)による寄稿記事です。

Avatar photo

webmaster

投稿者の記事一覧

Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

関連記事

  1. C70の中に水分子を閉じ込める
  2. 和製マスコミの科学報道へ不平不満が絶えないのはなぜか
  3. 最近の有機化学論文2
  4. Biotage Selekt のバリュープライス版 Enkel …
  5. 分子の磁石 “化学コンパス” ~渡り鳥の…
  6. オペレーションはイノベーションの夢を見るか? その3+まとめ
  7. COVID-19状況下での化学教育について Journal of…
  8. リン–リン単結合を有する化合物のアルケンに対する1,2-付加反応…

注目情報

ピックアップ記事

  1. 小児薬、大人用を転用――アステラス、抗真菌剤
  2. 第26回「分子集合体の極限に迫る」矢貝史樹准教授
  3. 第156回―「異種金属―有機構造体の創製」Stéphane Baudron教授
  4. 宮浦憲夫 Norio Miyaura
  5. 真理を追求する –2017年度ロレアル-ユネスコ女性科学者日本奨励賞–
  6. 【医薬分野のみなさま向けウェブセミナー】マイクロ波を用いた革新的製造プロセスとヘルスケア領域への事業展開
  7. グラフィカルアブストラクト付・化学系ジャーナルRSSフィード
  8. シス優先的プリンス反応でsemisynthesis!abeo-ステロイド類の半合成
  9. 第14回「らせん」分子の建築家ー八島栄次教授
  10. 超難関天然物 Palau’amine・ついに陥落

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2019年8月
 1234
567891011
12131415161718
19202122232425
262728293031  

注目情報

最新記事

「骨格編集」×「ナノカーボン合成」〜ナノカーボン合成の新戦略を実証〜

第719回のスポットライトリサーチは、名古屋大学大学院工学研究科(忍久保研究室)博士後期課程2年の平…

【書評】立体化学 はじめの一歩

立体化学は,分子の三次元構造を理解するための重要な分野であり,有機化学や…

水のシミュレーション入門 — 水分子を計算機の中でどう”描く”か —

身近なのに、計算機にとって手強い"水"。本記事では、点電荷モデルから機械学習まで、その"描き方"の進…

◆◇◆◇ 第36回フォーラム・イン・ドージン開催のご案内 ◆◇◆◇

同仁化学研究所が熊本から世界へ情報発信するフォーラム・イン・ドージンの開催ご案内です。今年は『な…

『力』による円偏光発光のon/off制御を単一分子レベルで実現

第718回のスポットライトリサーチは、東京科学大学 物質理工学院(相良研究室)博士後期課程2年の野中…

数日かかっていた反応機構解析を、わずか数分に!

機械学習ポテンシャルが変える計算化学の現在近年、DFT計算による反応機構解析は広く行われるよ…

海外ポスドクのオファーをもらう【アメリカで Ph.D. を取る: 進路編】

ポスドクとして海外に留学する場合、希望する研究室の教授に直接連絡を取り、面接などを通して適性を判断さ…

MDで観るトライボロジー 〜原子が擦れるその場をシミュレーション〜

軽くて強いのに摩耗に弱いチタン合金は、航空機や人工関節に広く使われています。原子が擦れ合うその場を分…

酸素を過酸化水素へ!可視光で駆動する有機高分子光カソード

第717回のスポットライトリサーチは、新潟大学大学院自然科学研究科(無機ナノ材料研究室)博士前期課程…

ペプチド合成におけるアスパルチミド化/Aspartimide Formation in Peptide Synthesis

&#x23f1; 30秒サマリー 何をする反応か — Fmoc-SPPS のピペリジン…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP