[スポンサーリンク]

海外化学者インタビュー

第172回―「小分子変換を指向した固体触媒化学およびナノ材料化学」C.N.R.Rao教授

[スポンサーリンク]

第172回の海外化学者インタビューは、C.N.R. Rao教授です。CSIR Centre for Excellence in Chemistry・New Chemistry Unit and International Centre for Materials Science・Jawaharlal Nehru Centre for Advanced Scientific Research・Indian Institute of Science; Bangalore, Indiaに所属し、固体化学と材料化学を研究しています。それではインタビューをどうぞ。

Q. あなたが化学者になった理由は?

幼い頃に化学に興味を持ったのは、学校で素晴らしい先生方に出会えたからです。実のところ、授業を受けた中で最高の化学教師は、大学よりもむしろ高校にいました。教室での実演がとても楽しかったし、中には一緒に実験させてくれる親切な先生もいて、とても楽しめました。1951年に学部を卒業してすぐ、初めてライナス・ポーリングの「The Nature of the Chemical Bond」を読みました。この本を読んで、とても興奮しました。そして、この本に書かれているような化学の研究をしなければならないと思ったのです。それ以来、ライナス・ポーリングは私のヒーローです。もう一人のヒーローはファラデーで、彼は19世紀に独力で多くの論文を発表し、その科学力には感嘆し続けています。私は17歳のとき、こういう偉人たちのような化学者にならなければならないと思いました。

Q. もし化学者でなかったら、何になりたいですか?またその理由は?

何になっていたか分からないですね。おそらく、貧しい国で人類を苦しめるさまざまな病気を研究する医者になっていたでしょう。若い頃に住んでいた州の内陸部では、コレラやマラリア、天然痘で死んでしまう人間や動物が大半でした。

Q. 現在取り組んでいることは何ですか?そしてそれをどう展開させたいですか?

50年以上にわたって固体化学と材料化学の分野で仕事をしてきました。固体化学に取り組み始めた1950年代には、この分野の専門家はほとんどいませんでした。有意義な貢献ができる分野で、しかもあまり混雑していないところで仕事をしたいと思ったのです。さらに、当時インドにあった非常に貧弱な設備で、それなりのことができる分野を選ばなければなりませんでした。X線や分光学設備は整っていませんでしたが、固体化学が最適と思われました。この数年間、材料化学のさまざまな側面について研究してきました。現在は、マルチフェロイックスやさまざまな種類の酸化物材料、グラフェン、カーボンナノチューブなどのナノ材料の研究を行っています。ここ2~3年は、水の分解、水素貯蔵、CO2の処理といった問題にも関心をもっています。

Q.あなたがもし、歴史上の人物と夕食を共にすることができたら誰と?またその理由は?

歴史上の人物と食事をする自由があるとしたら、第一にファラデー、第二にG.N.ルイスを選びますね。

Q. あなたが最後に研究室で実験を行ったのはいつですか?また、その内容は?

ここ数年はあまり実験をしていませんが、機会があれば研究室に行ってあちこちのノブを回しています。インド以外の国に留学していたときも、実験をしていました。

Q.もしあなたが砂漠の島に取り残されたら、どんな本や音楽が必要ですか?1つだけ答えてください。

もし無人島に取り残されたら、(ギータを含む)インドの大叙事詩『マハーバーラタ』を持っていたいですね。音楽ならBhimsen Joshiのインド古典声楽曲集、洋楽ならモーツァルトでしょうか。

マハーバーラタ 第一巻

マハーバーラタ 第一巻

不詳
¥990(as of 07/26 15:46)
Release date: 2017/10/20
Amazon product information
Q.「Reactions」でインタビューしてほしい化学者と、その理由を教えてください。

イスラエルの友人、ジョシュア・ジョートナーとフランスのポール・ハッゲンミュラーの2人にします。ジョートナーは、電子移動の研究に最初に取り組んだ化学者の一人です。ハッゲンミュラーは、初期の固体化学者の一人です。

 

原文:Reactions –C.N.R.Rao

※このインタビューは2011年9月8日に公開されました。

Avatar photo

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. 第78回―「膜タンパク質の分光学的測定」Judy Kim教授
  2. 第107回―「ソフトマター表面の物理化学」Jacob Klein…
  3. 第17回 研究者は最高の実験者であるー早稲田大学 竜田邦明教授
  4. 第95回―「生物学・材料化学の問題を解決する化学ツールの開発」I…
  5. 第40回「分子エレクトロニクスの新たなプラットフォームを目指して…
  6. 【第二回】シード/リード化合物の合成
  7. 第26回 有機化学(どうぐばこ)から飛び出す超分子(アプリケーシ…
  8. 第154回―「ランタノイド発光化学の生物・材料応用」Jean-C…

注目情報

ピックアップ記事

  1. ブロック共重合体で無機ナノ構造を組み立てる
  2. 【日産化学 26卒】 【7/10(水)開催】START your ChemiSTORY あなたの化学をさがす 研究職限定 Chem-Talks オンライン大座談会
  3. Actinophyllic Acidの全合成
  4. リケジョ注目!ロレアル-ユネスコ女性科学者日本奨励賞-2013
  5. マイクロ波を用いた革新的製造プロセスと電材領域への事業展開 (ナノ粒子合成、フィルム表面処理/乾燥/接着/剥離、ポリマー乾燥/焼成など)
  6. 研究室の大掃除マニュアル
  7. 第25回「ペプチドを化学ツールとして細胞を操りたい」 二木史朗 教授
  8. Reaxys Ph.D Prize 2014受賞者決定!
  9. 非常に小さな反転障壁を示す有機リン化合物の合成
  10. 秘密保持契約(NDA)

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2022年7月
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031

注目情報

最新記事

アクリルアミド類のanti-Michael型付加反応の開発ーPd触媒による反応中間体の安定性が鍵―

第622回のスポットライトリサーチは、東京理科大学大学院理学研究科(松田研究室)修士2年の茂呂 諒太…

エントロピーを表す記号はなぜSなのか

Tshozoです。エントロピーの後日談が8年経っても一向に進んでないのは私が熱力学に向いてないことの…

AI解析プラットフォーム Multi-Sigmaとは?

Multi-Sigmaは少ないデータからAIによる予測、要因分析、最適化まで解析可能なプラットフォー…

【11/20~22】第41回メディシナルケミストリーシンポジウム@京都

概要メディシナルケミストリーシンポジウムは、日本の創薬力の向上或いは関連研究分野…

有機電解合成のはなし ~アンモニア常温常圧合成のキー技術~

(出典:燃料アンモニアサプライチェーンの構築 | NEDO グリーンイノベーション基金)Ts…

光触媒でエステルを多電子還元する

第621回のスポットライトリサーチは、分子科学研究所 生命・錯体分子科学研究領域(魚住グループ)にて…

ケムステSlackが開設5周年を迎えました!

日本初の化学専用オープンコミュニティとして発足した「ケムステSlack」が、めで…

人事・DX推進のご担当者の方へ〜研究開発でDXを進めるには

開催日:2024/07/24 申込みはこちら■開催概要新たな技術が生まれ続けるVUCAな…

酵素を照らす新たな光!アミノ酸の酸化的クロスカップリング

酵素と可視光レドックス触媒を協働させる、アミノ酸の酸化的クロスカップリング反応が開発された。多様な非…

二元貴金属酸化物触媒によるC–H活性化: 分子状酸素を酸化剤とするアレーンとカルボン酸の酸化的カップリング

第620回のスポットライトリサーチは、横浜国立大学大学院工学研究院(本倉研究室)の長谷川 慎吾 助教…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP