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天然物

デルフチバクチン (delftibactin)

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デルフチバクチンは、細菌のなかま(Delftia acidovorans )から分泌され、生命にとって有害な3価の金イオンAu3+を、金属金Au(0)に変えて析出させる作用を持った天然化合物。デルフチバクチンが発見されたときは「純金のウンコをする細菌の仕組みが分かった」と話題になりました。

 

金塊の表面にも細菌が!

金塊の表面には、いく種類かの細菌からなる特異な生態系がかたちづくられており、金属金の析出に重要な役割があることが指摘されていました[2]。目には見えなくても細菌はいたるところに生息します。一見すると何もいないかのように見えて、天然に産する金塊の表面でさえも、この例外に漏れず、細菌がうようよいるというのです。

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金塊に住む細菌たちからなる独自の生態系をメタゲノムから解明!

一昔前まで微生物を研究するには、培養条件をどのように最適化するかが第一の課題でした。培地上でコロニーができるぐらいに増殖してくれなければ調べようもありません。しかし、次世代シーケンサと呼ばれるDNA配列を読み取る精密機械の性能が格段に向上し、研究手法は変化しています。土壌等の環境サンプルからDNAを抽出し、ポリメラーゼ連鎖反応で増幅したのち、DNAすべての配列を読んでしまうメタゲノム(metagenome)解析が、費用を抑えて可能になったのです。早速、このアプローチを、金塊の細菌叢にも適用。読んだ配列を、オンライン上に公開されている配列データベースと比較することで、金塊生態系の構成員が、解き明かされました[1]。

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金属金を析出させる細菌を単離!

こうして見つかった細菌たちの中に、生命にとって有害な金イオンを還元して、金属金にする細菌がいてもおかしくない。このように仮説を立てて、三価の塩化金を溶かした培地を作り、金塊生態系の主だった構成員から順に、目的の細菌が探索されました。そこで見つかった菌がデルフチア・アシドボランス(Delftia acidovorans )。コロニーの周りには析出した金属金が黒ずんで見えました[1]。

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まずは金属金を析出させない変異体を獲得!

この金属金を析出させる作用を持った細菌のゲノムを解読。ここでも次世代シーケンサの活躍です。配列データベースの情報と照らしあわせたところ、怪しげな遺伝子がいくつか見つかりました。この遺伝子をノックアウトしてつぶし、調べたところ、金属金を析出させない変異体を手に入れることができました[1]。この変異体がデルフチバクチン単離の糸口になります。

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そして代謝産物の比較でデルフチバクチンを同定!

ここで次はメタボローム。代謝産物の網羅解析です。質量分析の結果から、変異型株にはなく、野生型株にはあるピークを発見。核磁気共鳴(nuclear magnetic resonance; NMR)を併用して構造決定した物質が、デルフチバクチンです[1]。

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金属金を析出させる作用をデルフチバクチンで確認!

このデルフチバクチンを塩化金水溶液に加えると金属金がみるみる析出してきました。溶液の色が1時間ほどでみるみる変わっていくだけでなく、析出した金属結晶も電子顕微鏡で観察されています。ただ、金イオンではなくとも、鉄イオンでも金属鉄が析出したことから、デルフチバクチンが金だけに特異的というわけではないようです。デルフチア・アシドボランス(Delftia acidovorans )自体、金塊以外の土壌でも見つかるため、金だけにとらわれない複数の作用があるのでしょう。金属イオンをはさみこんで集積させ、金属結晶として析出させているものと、考えられます[1]。錬金術のように、金塊がざくざくと手に入るといった都合のよいことには、そのままでは利用しがたいと考えられます。一方、デルフチバクチンの発見により、細菌の特異な重金属耐性について、理解が深まりました。

 

  • デルフチバクチンの分子モデル

GREEN2013au.gif

  • 参考文献

[1] "Gold biomineralization by a metallophore from a gold-associated microbe." Johnston CW et al. Nature Chemical Biology 2013 DOI: 10.1038/nchembio.1179

[2] "Biomineralization of Gold: Biofilms on Bacterioform Gold." Reith F et al. Science 2006 DOI: 10.1126/science.1125878

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静岡で化学を教えています。よろしくお願いします。

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