[スポンサーリンク]

医薬品

カフェイン caffeine

カフェインは、コーヒーチャなどの植物に含まれ、眠気を覚まし、集中力を高める作用を持つ成分。

ヒトでのカフェインの作用

カフェインの標的タンパク質はアデノシン受容体です。細胞膜にあるアデノシン受容体にアデノシンが認識されると、本来は眠気を誘導する信号伝達が細胞の中で起きます[4]。しかし、アデノシン受容体にアデニシンが結合する代わりに、カフェインが結合すると、この過程が起きなくなります。そのため、コーヒー飲料やお茶類を飲むと眠気を覚ますことができます。実際に、カフェインを認識するアデノシン受容体をノックアウトしたマウスでは、カフェインの作用が現れません[7]。
カフェインには集中力を高める作用もあります。インスタントコーヒーおよび同一メーカーのデカフェインスタントコーヒーを使い暗算作業能率を調べた二重盲検試験[1],[2],[3]によれば、暗算作業の継続にともなう集中力の低下はカフェイン含有飲料の飲用によって緩和され、この効果は少なくとも30分間は持続する、と判明しています。

 

ヒト以外でのカフェインの作用

昆虫でもカフェインの標的タンパク質はアデノシン受容体です。ミツバチを養蜂する際、コーヒーの花が咲いていると、蜜のある花がどこに咲いているのか、ミツバチがよく記憶できるようになる、と判明しています[11]。
わたしたちヒトが少量のカフェインを溶かした水を口に含むと苦く感じます。昆虫でもカフェインを感知することができます。ショウジョウバエではカフェインを味覚として感知するカフェイン受容体が見つかっています[9]。ヒトではカフェインを苦味として感知する同様のカフェイン受容体は見つかっておらず、苦味が生じる仕組みは不明です。ナメクジはカフェインが嫌いで、キャベツに少量のカフェインを水溶液にして噴きかけておくと、ナメクジはキャベツを食べなくなります[6]。

 

植物でのカフェインの生合成

カフェイン生合成経路の鍵となるメチル化を触媒する酵素の遺伝子は、はじめチャで発見[5]され、次いでコーヒーでも確認されました。酵素タンパク質の立体構造も、結晶構造解析[10]によって明らかにされています。酵素遺伝子の判明は、カフェインの多い、あるいはカフェインの少ない、チャやコーヒーの育種に、応用が期待されます。
カフェインは、DNAの原料であるアデニンやグアニンと同じプリン塩基のなかまです。同じくプリン塩基であるキサンチンにリボースがついたキサントシンと呼ばれる化合物がカフェインの原料になります。キサントシンがまず1カ所目でメチル化、リボースが外されて、2カ所目と3カ所目でもメチル化されて、カフェインになります。キサントシンは、主にアデノシン、一部がグアノシンから変換されて供給されるため、アデノシンをキサントシンに変換する過程を仲介する酵素の阻害剤を、チャやコーヒーに投与すると、カフェインの含有が低下します[7]。

 

参考文献

  1.  “Study on the effects of caffeine by using instant coffee under double-blind method. http://ci.nii.ac.jp/naid/110000192042
  2. “Study on the effects of caffeine by using instant coffee under double-blind method (II). http://ci.nii.ac.jp/naid/110000191919
  3.  千葉県立千葉中学校 学校生活の紹介 千葉大学附属病院による理科特別授業
  4.  “Adenosine: A mediator of the sleep-inducing effects of prolonged wakefulness.” Porkka-Heiskanen T et al. Science 1997 DOI: 10.1126/science.276.5316.1265
  5.  “Caffeine synthase gene from tea leaves.” Misato Kato et al. Nature 2000 DOI: 10.1038/35023072
  6.  “Caffeine as a repellent for slugs and snails.” Hollingsworth RG et al. Nature 2002 DOI: 10.1038/417915a
  7.  Inhibition of caffeine biosynthesis in tea (Camellia sinensis) and coffee (Coffea arabica) plants by ribavirin. Keya CA et al. FEBS Lett. 2003 DOI: 10.1016/S0014-5793(03)01213-4
  8.  “Adenosine A2A, but not A1, receptors mediate the arousal effect of caffeine.” Huang ZL et al. Nature Neurosci. 2005 DOI: 10.1038/nn1491
  9.  “A taste receptor required for the caffeine response in vivo.” Moon SJ et al. Curr. Biol. 2006 DOI: 10.1016/j.cub.2006.07.024
  10.  “The structure of two N-methyltransferases from the caffeine biosynthetic pathway.” McCarthy AA et al. Plant. Physiol. 2007 DOI: 10.1104/pp.106.094854
  11.  “Caffeine in floral nectar enhances a pollinator’s memory of reward.” Wright GA et al. Science 2013 DOI: 10.1126/science.1228806
The following two tabs change content below.
Green

Green

静岡で化学を教えています。よろしくお願いします。
Green

最新記事 by Green (全て見る)

関連記事

  1. テトラメチルアンモニウム (tetramethylammoniu…
  2. マツタケオール mushroom alcohol
  3. IGZO
  4. ファイトスルフォカイン (phytosulfokine)
  5. カリックスアレーン /calixarene
  6. 亜鉛クロロフィル zinc chlorophyll
  7. チアミン (thiamin)
  8. ペルフルオロデカリン (perfluorodecalin)

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. ビニル位炭素-水素結合への形式的分子内カルベン挿入
  2. 植物たちの静かな戦い
  3. スチュアート・ライス Stuart A. Rice
  4. 有機化合物で情報を記録する未来は来るか
  5. ルィセンコ騒動のはなし(後編)
  6. 正宗・バーグマン反応 Masamune-Bergman Reaction
  7. t-ブチルリチウムの発火事故で学生が死亡
  8. 化学者たちの感動の瞬間―興奮に満ちた51の発見物語
  9. エコエネルギー 家庭で競争
  10. 太陽電池セル/モジュール封止材料・技術【終了】

関連商品

注目情報

注目情報

最新記事

2018年3月2日:ケムステ主催「化学系学生対象 企業合同説明会」

2月も後半となり、3月1日の就活解禁に向けて、2019年卒業予定の学生のみなさんは、就活モードが本格…

高専シンポジウム in KOBE に参加しました –その 2: 牛の尿で発電!? 卵殻膜を用いた燃料電池–

1 月 27 日に開催された第 23 回 高専シンポジウム in KOBE の参加報告の後編です。前…

化学探偵Mr.キュリー7

昨年3月からついに職業作家となった、化学小説家喜多喜久氏。その代表作である「化学探偵Mr.キュリー」…

き裂を高速で修復する自己治癒材料

第139回目のスポットライトリサーチは、物質・材料研究機構(NIMS) 構造材料研究拠点 長田 俊郎…

新コース開講! 東大発の無料オンライン英語講座!

研究室でのプレゼン、国際学会、海外留学など、国際化する研究環境にいまや英語は欠かせません。Engli…

脱水素型クロスカップリング重合法の開発

第138回目のスポットライトリサーチは、筑波大学 神原・桑原研究室の青木 英晃さん(博士前期課程2年…

Chem-Station Twitter

PAGE TOP