[スポンサーリンク]

身のまわりの分子

IGZO

[スポンサーリンク]

インジウム (Indium) 、ガリウム (Gallium) 、亜鉛 (Zinc) 、酸素 (Oxygen) から構成されるアモルファス半導体の略称でシャープの液晶で有名になった。

概要

IGZOは、構成する元素であるインジウム (Indium) 、ガリウム (Gallium) 、亜鉛 (Zinc) 、酸素 (Oxygen)の頭文字を取って名前が付けられた材料である。スパッタリングと呼ばれるターゲット材から分子をたたき出して積層させる手法で薄膜として作られる。スマホをはじめとしたディスプレイには薄膜トランジスタ(TFT)と呼ばれる発光やカラーフィルタのスイッチングを司る部品が不可欠で、その部品の一部の薄膜にこのIGZOが使われる。そのため、IGZOを使ったTFTについてIGZO-TFTと呼ばれている。

スパッタリングの原理、この図では下部がターゲットで上部が成膜先の基板である

スパッタリング中の写真、この写真では、下部に基板がある。光っているのはプラズマ状態になっているからである。

特徴

TFTの性能は、電子移動度とリーク電流の大きさで決まる。従来使われているアモルファスシリコンのTFTよりも電気移動度は20倍ほど速いためTFTの大きさを小さくすることができ、省電力化ち高繊細化を実現している。また、リーク電流も千分の一ほど少ないため、静止画を表示状態では、TFTを休止させることができ電気的ノイズを低減できる。電気的な変化で指のタッチを検出するタッチパネルにIGZOを採用すると、より高精度にタッチを検出することができるようになる。

 

ディスプレイの断面図。実際にはバックライトが下部にあるため、TFTが小さいほうが光を多く透過させることができる。

静電容量式のタッチパネルの原理

間違った認識

IGZOに関して間違って認識が二つある。

IGZOよりOLEDのほうが優れている。

IGZOはTFTの部品なのに対してOLEDは発光方式なので比較できない。事実、IGZO-TFTを使ったOLEDディスプレイというものの開発が行われている。

IGZOはシャープが開発した

シャープによって製品化がなされたが、初めから開発したわけではない。IGZOは東工大の細野教授らがJSTの創造科学技術推進事業 (ERATO) および戦略的創造研究推進事業 発展研究 (SORST) で開発されたもので、シャープは2012年からライセンス契約に基づいて製品化した。そのためIGZOの特許権や関連特許、「IGZO」という登録商標はJSTが所有している。一方でシャープは、「イグゾー」とそのロゴの商標権を保有している。

IGZOが採用されているシャープ製のスマホ。省電力化の影響で2日バッテリーが持つスマホとCMで謳っている。

参考文献

  • K, Nomura.; H, Ohta.; A. Takagi.; T, Kamiya.; M, Hirano.; H, Hosono. Nature 2004, 432, 488. DOI:10.1038/nature03090

関連書籍

[amazonjs asin=”4274504298″ locale=”JP” title=”世界を先駆ける日本のイノベーター”] [amazonjs asin=”4484147297″ locale=”JP” title=”Pen+(ペン・プラス) 日本の科学技術を支える巨大施設を徹底解剖! SPring-8のすべて。 (メディアハウスムック)”]

 

関連リンク

Avatar photo

Zeolinite

投稿者の記事一覧

ただの会社員です。某企業で化学製品の商品開発に携わっています。社内でのデータサイエンスの普及とDX促進が個人的な野望です。

関連記事

  1. 尿酸 Uric Acid 〜痛風リスクと抗酸化作用のジレンマ〜
  2. イベルメクチン /Ivermectin
  3. カルタミン
  4. デルフチバクチン (delftibactin)
  5. オキサリプラチン /oxaliplatin
  6. 化学者のためのエレクトロニクス入門⑤ ~ディスプレイ分野などで活…
  7. メチルトリメトキシシラン (methyltrimethoxysi…
  8. エチルマレイミド (N-ethylmaleimide)

注目情報

ピックアップ記事

  1. スピノシン Spinosyn
  2. 私達の時間スケールでみても、ガラスは固体ではなかった − 7年前に分からなかった問題を解決 −
  3. マイクロプラスチックの諸問題
  4. 【追悼企画】世のためになる有機合成化学ー松井正直教授
  5. 高校生が河川敷で化学実験中に発火事故
  6. 広大すぎる宇宙の謎を解き明かす 14歳からの宇宙物理学
  7. こんなサービスが欲しかった! 「Chemistry Reference Resolver」
  8. 中学入試における化学を調べてみた 2013
  9. ヒスチジン近傍選択的なタンパク質主鎖修飾法
  10. アセタール系保護基 Acetal Protective Group

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2017年12月
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031

注目情報

最新記事

有馬温泉で鉄イオン水溶液について学んできた【化学者が行く温泉巡りの旅】

有馬温泉の金泉は、塩化物濃度と鉄濃度が日本の温泉の中で最も高い温泉で、黄褐色を呈する温泉です。この記…

HPLCをPATツールに変換!オンラインHPLCシステム:DirectInject-LC

これまでの自動サンプリング技術多くの製薬・化学メーカーはその生産性向上のため、有…

MEDCHEM NEWS 34-4 号「新しいモダリティとして注目を浴びる分解創薬」

日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、新たにオープン…

圧力に依存して還元反応が進行!~シクロファン構造を活用した新機能~

第686回のスポットライトリサーチは、北海道大学大学院理学研究院化学部門 有機化学第一研究室(鈴木孝…

第58回Vシンポ「天然物フィロソフィ2」を開催します!

第58回ケムステVシンポジウムの開催告知をさせて頂きます!今回のVシンポは、コロナ蔓延の年202…

第76回「目指すは生涯現役!ロマンを追い求めて」櫛田 創 助教

第76回目の研究者インタビューは、第56回ケムステVシンポ「デバイスとともに進化する未来の化学」の講…

第75回「デジタル技術は化学研究を革新できるのか?」熊田佳菜子 主任研究員

第75回目の研究者インタビューは、第56回ケムステVシンポ「デバイスとともに進化する未来の化学」の講…

第74回「理想的な医薬品原薬の製造法を目指して」細谷 昌弘 サブグループ長

第74回目の研究者インタビューは、第56回ケムステVシンポ「デバイスとともに進化する未来の化学」の講…

第57回ケムステVシンポ「祝ノーベル化学賞!金属有機構造体–MOF」を開催します!

第57回ケムステVシンポは、北川 進 先生らの2025年ノーベル化学賞受賞を記念して…

櫛田 創 Soh Kushida

櫛田 創(くしだそう)は日本の化学者である。筑波大学 数理物質系 物質工学域・助教。専門は物理化学、…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP