[スポンサーリンク]

odos 有機反応データベース

一重項酸素 Singlet Oxygen

[スポンサーリンク]

概要

酸素分子は通常、3重項(3Σ O2)を基底状態として存在するが、適切な光増感剤存在下に励起することによって1重項酸素(1Δ O2)になる。前者はビラジカルとしての性質を示すのに対し、後者はシグマトロピー反応(ペリ環状反応・エン反応)などをおこしやすい性質を示す。

良く用いられる光増感剤としてはメチレンブルー、ローズベンガル、テトラフェニルポルフィリンなどが挙げられる。

singlet_O2_3.gif

基本文献

<review>

反応機構

3Σ O2と比べ、1Δ O2 は22kcal/mol 高エネルギー状態にある。gas phaseでの寿命は74秒だが、溶液状態では、寿命は溶媒に大きく依存する。

singlet_O2_4.png

(chem.wisc.eduより引用)

一重項酸素は概して求電子的な挙動を示すため、電子豊富な基質との反応性に富む。オレフィン・ジエンとのエン反応はパーエポキシド中間体を経て進行すると考えられている。

singlet_O2_5.gif

反応例

Norzoanthamineの合成[1]

宮下らはNorzoanthamineの全合成において、一重項酸素によるフランの酸化反応を報告している。光増感剤としてローズベンガル存在下、酸素雰囲気下、光照射することでフランを酸化し、Z-γ-ケト-α,β-不飽和シリルエーテルを定量的に得た。その後、単離することなく、テトラアンモニウムフルオリド(TBAF)とヨードメタンをTHF中で作用させ、安定なメチルエステルに変換した(97%, 2工程)。

singlet_O2_2.gif

実験手順

 

実験のコツ・テクニック

 

関連動画

参考文献

[1] (a) Miyashita, M.; Sasaki, M.; Hattori, I.; Sakai, M.; Tanino, K. Science 2004, 305, 495. DOI: 10.1126/science.1098851 (b) Katsumura, S.; Hori, K.; Fujiwara, S.; Isoe, S. Tetrahedron Lett. 1985, 26, 4625. doi:10.1016/S0040-4039(00)98769-0

 

関連反応

関連書籍

[amazonjs asin=”1891389254″ locale=”JP” title=”Modern Molecular Photochemistry of Organic Molecules”]

外部リンク

Avatar photo

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. ハリース オゾン分解 Harries Ozonolysis
  2. ノリッシュ反応 Norrish Reaction
  3. マクコーマック反応 McCormack Reaction
  4. ペイン転位 Payne Rearrangement
  5. ピナコールカップリング Pinacol Coupling
  6. ロビンソン・ガブリエルオキサゾール合成 Robinson-Gab…
  7. シュタウディンガー反応 Staudinger Reaction
  8. コッホ・ハーフ Koch-Haaf反応

注目情報

ピックアップ記事

  1. ピンポン玉で分子模型
  2. フォルスター・デッカー アミン合成 Forster-Decker Amine Synthesis
  3. 正岡 重行 Masaoka Shigeyuki
  4. ノーベル化学賞田中さん 富山2大学の特任教授に
  5. ネイティブスピーカーも納得する技術英語表現
  6. 作った分子もペコペコだけど作ったヤツもペコペコした話 –お椀型分子を利用した強誘電体メモリ–
  7. 05年:石油化学は好調、化工全体では利益縮小
  8. English for Writing Research Papers
  9. メタンハイドレートの化学
  10. クロスカップリングはどうやって進行しているのか?

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2013年1月
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28293031  

注目情報

最新記事

マーフィー試薬 Marfey reagent

概要Marfey試薬(1-フルオロ-2,4-ジニトロフェニル-5-L-アラニンアミド、略称:FD…

UC Berkeley と Baker Hughes が提携して脱炭素材料研究所を設立

ポイント 今回新たに設立される研究所 Baker Hughes Institute for…

メトキシ基で転位をコントロール!Niduterpenoid Bの全合成

ナザロフ環化に続く二度の環拡大というカスケード反応により、多環式複雑天然物niduterpenoid…

金属酸化物ナノ粒子触媒の「水の酸化反応に対する駆動力」の実験的観測

第639回のスポットライトリサーチは、東京科学大学理学院化学系(前田研究室)の岡崎 めぐみ 助教にお…

【無料ウェビナー】粒子分散の最前線~評価法から処理技術まで徹底解説~(三洋貿易株式会社)

1.ウェビナー概要2025年2月26日から28日までの3日間にわたり開催される三…

第18回日本化学連合シンポジウム「社会実装を実現する化学人材創出における新たな視点」

日本化学連合ではシンポジウムを毎年2回開催しています。そのうち2025年3月4日開催のシンポジウムで…

理研の一般公開に参加してみた

bergです。去る2024年11月16日(土)、横浜市鶴見区にある、理化学研究所横浜キャンパスの一般…

ツルツルアミノ酸にオレフィンを!脂肪族アミノ酸の脱水素化反応

脂肪族アミノ酸側鎖の脱水素化反応が報告された。本反応で得られるデヒドロアミノ酸は多様な非標準アミノ酸…

野々山 貴行 Takayuki NONOYAMA

野々山 貴行 (NONOYAMA Takayuki)は、高分子材料科学、ゲル、ソフトマテリアル、ソフ…

城﨑 由紀 Yuki SHIROSAKI

城﨑 由紀(Yuki SHIROSAKI)は、生体無機材料を専門とする日本の化学者である。2025年…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP