[スポンサーリンク]

化学書籍レビュー

Reaction and Synthesis: In the Organic Chemistry Laboratory

[スポンサーリンク]

[amazonjs asin=”3527338144″ locale=”JP” title=”Reactions and Syntheses: In the Organic Chemistry Laboratory”]

内容

The first-class author team with long-standing experience in practical courses on organic chemistry covers a multitude of preparative procedures of reaction types and compound classes indispensable in modern organic synthesis. Throughout, the experiments are accompanied by the theoretical and mechanistic fundamentals, while the clearly structured sub-chapters provide concise background information, retrosynthetic analysis, information on isolation and purification, analytical data as well as current literature citations. Finally, in each case the synthesis is labeled with one of three levels of difficulty.

An indispensable manual for students and lecturers in chemistry, organic chemists, as well as lab technicians and chemists in the pharmaceutical and agrochemical industries.(Wiley社紹介文より)

対象

  • 有機合成を用いた研究・実験に取り組む全ての方
  • 代表的な合成反応の実験項を素早く参照したい方

解説

最近ではScifinderやReaxysといった電子検索システムが充実しているため、欲しい化合物の合成法を誰でも簡便に調べることが出来るようになった。しかしあまりに基本的すぎる反応条件はヒット数が多すぎるため、標準的手順を見極めることが難しいというケースに多々遭遇する。

そのような時に参照価値があるのが、信頼性・汎用性の高い実験項がまとめられている書籍である。

Lutz F. Tietze

Lutz F. Tietze

Lutz F. Tietze執筆の「Reaktionen und Synthesen im organisch-chemischen Praktikum und Forschungslabratorium」(1981, 1991改訂)はまさにそのような書籍であった。過去に和訳刊行されていたことをご存じの方はどれほどいらっしゃるだろうか(「精密有機合成―実験マニュアル」(1984, 1995改訂))。良書であったが既に絶版となっており、内容も古びてしまっている。

[amazonjs asin=”4524401318″ locale=”JP” title=”精密有機合成―実験マニュアル”]

 

本稿で取りあげる「Reaction and Synthesis: In the Organic Chemistry Laboratory」は、オリジナルの基本コンセプトをそのままに、近代的知見を追加し英語でリニューアル刊行(2007)したものである。その後、ドミノ反応や遷移金属触媒反応などについて加筆を施した「第2版」(2015年1月刊行)が最新版となっている。

章立ては反応形式毎に分類され、各小項目は3つのパートで構成される。すなわち、a)標的とするビルディングブロックの合成戦略と実例、b)紹介する合成法・試薬・反応についての概説、c)実験項という順で記される。実験項には実施難度がアスタリスク(*)の数で示されている。もちろん項末には参考文献も付記されている。

Tietze_RandS_3

試読用PDFより引用

合成を行うための基本テクニック(クロマトグラフィ精製、必要なガラス器具・設備・保護具など)については省略されているが、実験項は大変に充実している。いずれも現場の分子合成で頻出する基本反応ばかりであるため、有機合成の経験を有する方が、標準手順を素早く調べることを目的としたリファレンス的用法にマッチする。

毎日のように多段階合成を行う化学者にとって、参照価値の高い書籍の一つといえる。手元に1冊あると大変便利である。

関連書籍

日本語の類書には、「実験化学講座(13~19巻)」「研究室ですぐに使える 有機合成の定番レシピ」がある。

前者は分量・巻数も多く充実しているが、やはり保管に場所を取る。化学書資料館で電子版を見ることができるようになって利便性が増した。後者はハンディかつ簡潔にまとまっているが、ボリュームの面でやや不足があると感じる方は、本書を1冊手元に置くと良い。

[amazonjs asin=”4621096893″ locale=”JP” title=”実験化学講座 第5版 全31巻セット”][amazonjs asin=”4621081519″ locale=”JP” title=”研究室ですぐに使える 有機合成の定番レシピ”]

関連リンク

Avatar photo

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. 構造生物学
  2. 【書籍】合成化学の新潮流を学ぶ:不活性結合・不活性分子の活性化
  3. Greene’s Protective Groups…
  4. 天然物の全合成―2000~2008
  5. 分子光化学の原理
  6. 化学探偵Mr.キュリー6
  7. 英文校正会社が教える 英語論文のミス100
  8. 元素手帳 2018

注目情報

ピックアップ記事

  1. Greene’s Protective Groups in Organic Synthesis 5th Edition
  2. V字型分子が実現した固体状態の優れた光物性
  3. アメリカで Ph. D. を取る –研究室に訪問するの巻–
  4. 世界的性能の質量分析器開発を開始
  5. 高校教科書に研究が載ったはなし
  6. ボリレン
  7. 四角い断面を持つナノチューブ合成に成功
  8. 天才児の見つけ方・育て方
  9. ポンコツ博士の海外奮闘録 〜ポスドク失職・海外オファー編〜
  10. ブラックマネーに御用心

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2016年1月
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031

注目情報

最新記事

7th Compound Challengeが開催されます!【エントリー〆切:2026年03月02日】 集え、”腕に覚えあり”の合成化学者!!

メルク株式会社より全世界の合成化学者と競い合うイベント、7th Compound Challenge…

乙卯研究所【急募】 有機合成化学分野(研究テーマは自由)の研究員募集

乙卯研究所とは乙卯研究所は、1915年の設立以来、広く薬学の研究を行うことを主要事業とし、その研…

大森 建 Ken OHMORI

大森 建(おおもり けん, 1969年 02月 12日–)は、日本の有機合成化学者。東京科学大学(I…

西川俊夫 Toshio NISHIKAWA

西川俊夫(にしかわ としお、1962年6月1日-)は、日本の有機化学者である。名古屋大学大学院生命農…

市川聡 Satoshi ICHIKAWA

市川 聡(Satoshi Ichikawa, 1971年9月28日-)は、日本の有機化学者・創薬化学…

非侵襲で使えるpH計で水溶液中のpHを測ってみた!

今回は、知っているようで知らない、なんとなく分かっているようで実は測定が難しい pH計(pHセンサー…

有馬温泉で鉄イオン水溶液について学んできた【化学者が行く温泉巡りの旅】

有馬温泉の金泉は、塩化物濃度と鉄濃度が日本の温泉の中で最も高い温泉で、黄褐色を呈する温泉です。この記…

HPLCをPATツールに変換!オンラインHPLCシステム:DirectInject-LC

これまでの自動サンプリング技術多くの製薬・化学メーカーはその生産性向上のため、有…

MEDCHEM NEWS 34-4 号「新しいモダリティとして注目を浴びる分解創薬」

日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、新たにオープン…

圧力に依存して還元反応が進行!~シクロファン構造を活用した新機能~

第686回のスポットライトリサーチは、北海道大学大学院理学研究院化学部門 有機化学第一研究室(鈴木孝…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP