[スポンサーリンク]

化学書籍レビュー

Reaction and Synthesis: In the Organic Chemistry Laboratory

[スポンサーリンク]

内容

The first-class author team with long-standing experience in practical courses on organic chemistry covers a multitude of preparative procedures of reaction types and compound classes indispensable in modern organic synthesis. Throughout, the experiments are accompanied by the theoretical and mechanistic fundamentals, while the clearly structured sub-chapters provide concise background information, retrosynthetic analysis, information on isolation and purification, analytical data as well as current literature citations. Finally, in each case the synthesis is labeled with one of three levels of difficulty.

An indispensable manual for students and lecturers in chemistry, organic chemists, as well as lab technicians and chemists in the pharmaceutical and agrochemical industries.(Wiley社紹介文より)

対象

  • 有機合成を用いた研究・実験に取り組む全ての方
  • 代表的な合成反応の実験項を素早く参照したい方

解説

最近ではScifinderやReaxysといった電子検索システムが充実しているため、欲しい化合物の合成法を誰でも簡便に調べることが出来るようになった。しかしあまりに基本的すぎる反応条件はヒット数が多すぎるため、標準的手順を見極めることが難しいというケースに多々遭遇する。

そのような時に参照価値があるのが、信頼性・汎用性の高い実験項がまとめられている書籍である。

Lutz F. Tietze

Lutz F. Tietze

Lutz F. Tietze執筆の「Reaktionen und Synthesen im organisch-chemischen Praktikum und Forschungslabratorium」(1981, 1991改訂)はまさにそのような書籍であった。過去に和訳刊行されていたことをご存じの方はどれほどいらっしゃるだろうか(「精密有機合成―実験マニュアル」(1984, 1995改訂))。良書であったが既に絶版となっており、内容も古びてしまっている。

 

本稿で取りあげる「Reaction and Synthesis: In the Organic Chemistry Laboratory」は、オリジナルの基本コンセプトをそのままに、近代的知見を追加し英語でリニューアル刊行(2007)したものである。その後、ドミノ反応や遷移金属触媒反応などについて加筆を施した「第2版」(2015年1月刊行)が最新版となっている。

章立ては反応形式毎に分類され、各小項目は3つのパートで構成される。すなわち、a)標的とするビルディングブロックの合成戦略と実例、b)紹介する合成法・試薬・反応についての概説、c)実験項という順で記される。実験項には実施難度がアスタリスク(*)の数で示されている。もちろん項末には参考文献も付記されている。

Tietze_RandS_3

試読用PDFより引用

合成を行うための基本テクニック(クロマトグラフィ精製、必要なガラス器具・設備・保護具など)については省略されているが、実験項は大変に充実している。いずれも現場の分子合成で頻出する基本反応ばかりであるため、有機合成の経験を有する方が、標準手順を素早く調べることを目的としたリファレンス的用法にマッチする。

毎日のように多段階合成を行う化学者にとって、参照価値の高い書籍の一つといえる。手元に1冊あると大変便利である。

関連書籍

日本語の類書には、「実験化学講座(13~19巻)」「研究室ですぐに使える 有機合成の定番レシピ」がある。

前者は分量・巻数も多く充実しているが、やはり保管に場所を取る。化学書資料館で電子版を見ることができるようになって利便性が増した。後者はハンディかつ簡潔にまとまっているが、ボリュームの面でやや不足があると感じる方は、本書を1冊手元に置くと良い。

関連リンク

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. Greene’s Protective Groups…
  2. 医薬品天然物化学 (Medicinal Natural Prod…
  3. 化学の歴史
  4. まんがサイエンス
  5. 持続可能な社会を支えるゴム・エラストマー:新素材・自己修復・強靱…
  6. 化学で何がわかるかーあなたの化学、西暦何年レベル?ー
  7. 交響曲第6番「炭素物語」
  8. [書評]分子の薄膜化技術

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. 「原子」が見えた! なんと一眼レフで撮影に成功
  2. 細胞内で酵素のようにヒストンを修飾する化学触媒の開発
  3. XPhos
  4. ”がんのメカニズムに迫る” 細胞増殖因子とシグナル学術セミナー 主催: 同仁化学研究所
  5. ウェブサイトのリニューアル
  6. 2009年イグノーベル賞決定!
  7. 韓国へ輸出される半導体材料とその優遇除外措置について
  8. 次世代シーケンサー活用術〜トップランナーの最新研究事例に学ぶ〜
  9. alreadyの使い方
  10. 学振申請書を磨き上げる11のポイント [文章編・後編]

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2016年1月
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031

注目情報

最新記事

マリンス有機化学(上)-学び手の視点から-

概要親しみやすい会話形式を用いた現代的な教育スタイルで有機化学の重要概念を学べる標準教科書.…

【大正製薬】キャリア採用情報(正社員)

<求める人物像>・自ら考えて行動できる・高い専門性を身につけている・…

国内初のナノボディ®製剤オゾラリズマブ

ナノゾラ®皮下注30mgシリンジ(一般名:オゾラリズマブ(遺伝子組換え))は、A…

大正製薬ってどんな会社?

大正製薬は病気の予防から治療まで、皆さまの健康に寄り添う事業を展開しています。こ…

一致団結ケトンでアレン合成!1,3-エンインのヒドロアルキル化

ケトンと1,3-エンインのヒドロアルキル化反応が開発された。独自の配位子とパラジウム/ホウ素/アミン…

ベテラン研究者 vs マテリアルズ・インフォマティクス!?~ 研究者としてMIとの正しい向き合い方

開催日 2024/04/24 : 申込みはこちら■開催概要近年、少子高齢化、働き手の不足…

第11回 慶應有機化学若手シンポジウム

シンポジウム概要主催:慶應有機化学若手シンポジウム実行委員会共催:慶應義塾大…

薬学部ってどんなところ?

自己紹介Chemstationの新入りスタッフのねこたまと申します。現在は学部の4年生(薬学部)…

光と水で還元的環化反応をリノベーション

第609回のスポットライトリサーチは、北海道大学 大学院薬学研究院(精密合成化学研究室)の中村顕斗 …

ブーゲ-ランベルト-ベールの法則(Bouguer-Lambert-Beer’s law)

概要分子が溶けた溶液に光を通したとき,そこから出てくる光の強さは,入る前の強さと比べて小さくなる…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP