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試薬

エチルマレイミド (N-ethylmaleimide)

N-エチルマレイミドは、生化学実験などの場面で使われる試薬。

 

詳細

N-エチルマレイミド(N-ethylmaleimide)は、チオールと反応する性質があり、システイン残基を持つタンパク質の不活性化に使われます。
例えば、脱ユビキチン化酵素や、ある種のDNA合成酵素などです。
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エチルマレイミドとチオールの反応
この他、エチルマレイミドが活躍した歴史上重要な例は、N-エチルマレイミド感受性因子(N-ethylmaleimide sensitive factor)として、取られてきたNSFタンパク質があります。このタンパク質は、小胞による細胞内物質輸送の制御で鍵を握る分子のひとつです。
NSFタンパク質と相互作用するタンパク質にSNAP(soluble NSF attachment protein)タンパク質があります。さらに、SNAPタンパク質の受け手としてSNARE(SNAP receptor)タンパク質があります。小胞に包まれて運ばれてきた物質は、小胞がやがて細胞膜と融合することで、細胞の外へと放出されます。例えば、神経伝達物質のようにです。このとき、どちらもスネアドラムの中にあるバネのようなかたちをした、小胞と細胞膜にあるSNAPタンパク質とSNAREタンパク質がお互いを認識し、からまりあうことで膜融合が促進されます。細胞膜以外にも、ゴルジ体やリソソームといった細胞内の膜区画でも同様です。NSFタンパク質は、アデノシン三リン酸(adenosine triphosphate; ATP)を加水分解しながら、からみあったSNAPタンパク質とSNAREタンパク質をほどくと考えられています。この仕組みは、SNARE説と呼ばれ、アメリカの生化学者であるジェームズ・ロスマンらが中心になって、明らかにされました。ジェームズ・ロスマンは2013年にノーベル生理学医学賞を受けています。

参考論文

[1] “A fusion protein required for vesicle-mediated transport in both mammalian cells and yeast.” Rothman JE et al. Nature 1989 DOI: 10.1038/339355a0

[2] “SNAP receptors implicated in vesicle targeting and fusion.”Rothman JE et al.Nature 1993 DOI: 10.1038/362318a0
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静岡で化学を教えています。よろしくお願いします。
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