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フランシス・アーノルド Frances H. Arnold

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フランシス・ハミルトン・アーノルド(Frances Hamilton Arnold、1956年7月25日-)は、米国の合成生物学者・生化学者・生物工学者である。カリフォルニア工科大学教授。(写真:Twitter) 指向性進化法の開発により、2018年度ノーベル化学賞受賞。

経歴

1979 プリンストン大学 卒業
1986 カリフォルニア大学バークリー校 博士号取得
1986 カリフォルニア大学バークリー校 博士研究員
200x カリフォルニア工科大学 Dick and Barbara Dickinson Professor
2005 Gevo, Inc. 共同創業者

受賞歴

2011 Charles Stark Draper prize
2013 National Medal of Technology and Innovation
2014 National Inventors Hall of Fame
2016 Millennium Technology Prize
2017 Raymond and Beverly Sackler Prize in Convergence Research
2017 Society of Women Engineers’ 2017 Achievement Award
2018 ノーベル化学賞

研究概要

指向性進化法のパイオニアの一人。タンパク質工学技術を基盤に、自然界よりも優れた機能を持つタンパク質・生物系の創出を主たる研究対象として取り組んでいる。研究初期においては、指向性進化法の方法論の確立とタンパク質の安定性を向上、酵素の触媒能の向上[2]やタンパク質のアミノ酸残基の改変によって生じる酵素の構造変化と触媒能の変化に関する研究において多大な貢献をしてきた。

近年では、Arnoldは指向性進化法を利用することにより、自然界に人工酵素を用いて自然界に存在しない反応を酵素により行うことに注力している。自然界に存在するシトクロム酵素は主に有機化合物を酸化する能力を有しており、旧来よりその酸化能を利用した選択的な酸化反応の開発が行われてきた。一方で、炭素-炭素結合への応用はその触媒能力の低さから進んでいなかった。さらに有機化合物の修飾反応への応用、例えば、酵素的なアミノ化、シリル化、ボリル化などの特殊な反応はそもそも自然界には知られていなかったため、酵素をそのような反応に利用する試みはなされてこなかった。Arnoldらはこれらの課題に対し指向性進化法によりアプローチし、シトクロムの鉄を中心金属とするヘム近傍に存在するアミノ酸残基を改変することで、天然型を超越する結合形成反応を触媒する酵素機能の創出に精力的に取り組んでいる[1-6]。例えば、ジアゾ化合物を出発物質としてシクロプロパンを合成する金属酵素の作製[3,4]、有機化合物に不斉炭素―ケイ素結合を組み込める人工酵素の創出[6]や炭素-ホウ素結合を組み込むP450酵素の創出[5]、酵素的なCーHアミノ化に成功し、話題を集めている。このように従来不可能だと考えられてきた、反応が酵素により可能であるというArnoldらによる報告を皮切りに、現在では世界中の他の多くの研究室においても指向性進化法を用いた反応開発が進んでいる。

Arnold研HPより引用

 

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その他

一般的に酸化酵素であるシトクロムは基本的に他の酵素に比べて不安定であり、触媒能が低いことが多い。それゆえ、触媒回転数(TON)が限られ、有機化学反応に適さないことが問題であった。Arnoldらはほとんど活性を示さない酵素を鋳型として指向性進化法により、TONが1000を超える安定な酵素の作成を達成している。

現在200.000以上のシトクロムP450が知られており、主に4つのグループ(細菌由来、ミトコンドリア由来、ミクロソーム由来、自己完結型)に大別される。これらのうち、自己完結型以外は電子伝達に必要な別の酵素や補酵素との組み合わせが必須であり、酵素の発現と利用に制限がある。そのため、ArnoldによるシトクロムP450を用いた反応開発においては、酸化還元系が一体となっているBM3などの自己完結型の酵素が主に利用されている。

酵素反応は、アミノ酸残機により基質の多点認識を行うため基質や官能基特異性が非常に高く、位置および立体選択的な反応を達成しやすい。指向性進化法により、基質に合わせたテーラーメイドな酵素の進化も可能であることから、TONをさらに向上させればプロセスケミストリーへの応用も期待される。一方、基質特異性が高い分その代償として、小分子触媒ほどは基質の適用範囲が広くない場合もあるため利用には注意も必要である。

Arnoldにより酵素の改変により様々な化学反応か可能になることが示されたことにより、近年では教え子のFasanをはじめとして 、世界中の多くの研究室で指向性進化法を利用した研究が盛んに行われている。

日本では大阪大学の林研究室などがヘムタンパク質の改変と改変したタンパク質による反応開発などを精力的に行なっている。

関連文献

  1. Arnold, F. H. Angew. Chem. Int. Ed. 2018, 57, 4143. DOI:10.1002/anie.201708408. (近年のArnold groupによる主要な仕事がまとめられている。)
  2. Giver, L.; Gershenson, A.; Freskgard, P.-O.; Arnold, F. H. Proc. Natl. Acad. Sci. 1998, 95, 12809. DOI:10.1073/pnas.95.22.12809.(指向性進化法での熱安定なエステラーゼの進化についての論文。Arnold groupにおける指向性進化法に関する初期の論文)
  3.  Coelho, P. S.; Brustad, E. M.; Kannan, A.; Arnold, F. H. Science 2013, 339, 307. DOI:10.1126/science.1231434. (初のP450BM3によるシクロプロパン化の例 )
  4.  Chen, K.; Huang, X.; Kan, S. B. J.; Zhang, R. K.; Arnold, F. H. Science 2018, 360, 71. DOI:10.1126/science.aar4239.(シクロプロパン化の発展;P411を用いてアルキンよりシクロプロパン化によりビシクロブタンを合成した例)
  5. Kan, S. B. J.; Huang, X.; Gumulya, Y.; Chen, K.; Arnold, F. H. Nature 2017, 552. DOI:10.1038/nature24996. (シトクロムc酵素触媒による初のC-Hボリル化に関する報告)
  6. Smith, A. M.; Floerke, V. A.; Thomas, A. K. Science 2016, 354, 1046. DOI:10.1126/science.aah6219. (シトクロムc酵素触媒による初のC-Hシリル化に関する報告)

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博士(薬学)。Chem-Station副代表。現在国立大学教員として勤務中。専門は有機合成化学、主に触媒開発研究。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

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東京の大学で修士を修了後、インターンを挟み、スイスで博士課程の学生として働いていました。現在オーストリアでポスドクをしています。博士号は取れたものの、ハンドルネームは変えられないようなので、今後もGakushiで通します。

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