[スポンサーリンク]

一般的な話題

日本に居ながら、ナマの英語に触れる工夫

 

グローバル化の流れにある現在、化学の世界に限らず、英会話スキルは各方面で必要不可欠となりつつあります。しかし日本の英語教育はちょっとどころではなくアレで、読み書きは何とかできても、聴きとれないし喋れない人間が量産されている惨状です。

日本の英語教育が文法・英作文偏重になっているのが主要因です。聞くところでは、日本の高校レベルの英文法とは、英語圏では大学でようやく矯正されるレベルのものなんだとか。

そんなレベルの文法をなぜムリして学習しているのか?――その背景にあるのは、先生側が点数・成績を付けやすい教育システム=「管理側・オトナがラクできる」モチベーションに思えます。つまりは、心の底から真剣に子供の為を考えて作られたカリキュラムじゃぁ無いということ・・・残念ながら筆者自身、英語に限らずそう感じる教育機会に度々遭遇したものです。

そんな英語の苦手意識は、日本人が国際社会を相手どるハードルを上げる大きな要因になっています。いざ「海外で武者修行したい!」と思っても、使える英会話が出来ないために自信を無くして一歩引いてしまう・・・そういう人も数多く見てきました。ある程度英語プレゼンを訓練した人間ですら、海外に出た途端、自分の英語の通じなさ具合に愕然とする・・・なんてことも少なくありません(何を隠そう筆者もそうでした)。

世界を相手に戦う、グローバルな環境に対する苦手意識を減らす意味合いからも、スピーキングとリスニングは訓練しておくに越したことはありません。

そのためには数ヶ月なり一年なり、ネイティブスピーカーとムリにでも話さざるを得ない国で生活するのが理想なのですが、現実問題としてコストや人生計画と兼ね合いになってしまうため、そう簡単ではありません。多くの人にとっては、日本に居ながらにして質の高い英語に触れる工夫こそが必要です。

幸運にも我々には、インターネットという強い味方があります。十分に高品質なリスニング・スピーキング学習をすることがウェブ上でも可能になっているのです。

今回は学生にも優しい、 ①お金を掛けない、②自分のペースで好きなときにトレーニングできる、という2点に主眼を置いて、スピーキング・リスニング訓練に役立つ方法をご紹介しましょう。

以下の内容は、筆者の留学体験に基づく個人的見解に基づいた記述です。合う合わないはもちろんあるでしょう。しかし、英語に触れる機会の多い学生・研究者・ビジネスパーソンの皆さんは、一つの意見として参考にしていただけるものと思います。

どんな教材を使うのが良いか

conversation_english

大学受験を経験している方であれば、多少はリスニングのトレーニング経験もあると思います。NHKラジオ英会話を聞くのが定番、などと一般には言われているでしょうか。

しかし個人的には、ラジオ教材はあまりオススメできません。

結局のところ解説が日本語なので、視聴時間に比してリスニング密度が意外に低いことが最大の理由です。加えて、理解を英語からではなく日本語解説に頼ってしまう構成になっているのも問題です。その一方で30分なり1時間なり、ちゃんと時間を使ってしまえるため、自己満足には打って付けの典型となっているように思います。

「英語を聞いて、日本語を中継せず直接理解できること」がリスニングの到達目標ですから、あまり余計な日本語を耳に入れない方がベターではないでしょうか。

30分なら30分、「英語だけを短時間集中的に浴びるように聴く」勉強法を毎日続けること――結局はそういう泥臭い方式こそが、遠回りに見えて一番効果的であるように思えます。

そうはいってラジオ教材の場合は、同じ時間帯に空き時間を確保できないと、続けていくことができません。夜遅くまで仕事をすることの多い実験科学者やビジネスマンにとっては、通勤電車の時間など、合間合間に自分のペースで学習出来るような教材が欲しいものです。NHK英会話ラジオのCD版を買えばいいのかもしれませんが、毎月買うとご存じの通り結構な出費になります。

 

以上を加味するに、英語教材としてはネットで配信されているポッドキャストが現状最も優れているように思えます。ほとんどが無料ですし、テキストもWeb上で無料配布されているものが多いです。iPodがあればダウンロードして持ち運びも可能です。

ただ、目的に合致しつつ良質なポッドキャストとなると、なかなか見つけ出すのも難しいと思われます。筆者の知る限りですが、日本人にとって役に立つ良質サービスを紹介してみましょう。

 

English as a Second Language (ESL) Podcast

ESLPodcast

もっともオススメできる教材です。ESLとは「第2言語として英語を学ぶ」という意味です。つまり最初から非ネイティブを対象として設計されている教材ですので、速度はかなり適切です。

アメリカの文化・生活・習慣に絡むトピックが豊富なので、「英会話はやや苦手だが、英語圏で過ごす予定のある人」にぴったりの内容となっています。ネイティブがよく使うややくだけた表現も多く、受験教材とは一線を画する実用性があります。 1000以上のトピックが公開(2014年11月現在)されており、他の追随を許さぬ充実っぷりも魅力です。これが完全無料というのはまったく信じられません。

ポッドキャストですので、お手持ちのiPodに入れて持ち運べます。通勤電車や空き時間にでも手軽にリスニング訓練が出来ますし、iPod Touchであればテキストが画面表示されるので、紙のテキストを持ち歩かなくてもよくなり、大変実用的です。

 

Business English Pod

buisnessEngPod.png

ESL Podcastの速度になれてきたら、少々レベルの高い会話を聞いてみましょう。

Business English Podは、その名の通り、ビジネス英会話を主軸とするポッドキャスト。ビジネスの世界らしく、丁寧にお願いする表現とか、電話口での応対、メールの書き方などに関して、なかなか実用的なトピックが揃っています。

海外留学すると、ラボメンバーと英語でディスカッションする機会が増えるので、そういった会話表現は嫌でも鍛えられます。そういう場で役立つ表現が実際多用されていると感じます。ビジネス英会話と言うこともあり、お金に絡むトピックもよく取り上げられます。

動画の教材も用意されていたりと、なかなかにバリエーション豊富なのも特徴。

 

 

Voice of America (VOA) English News

VOANews.gif

英語圏のニュースサイトであれば、最近はどこでも音声ファイルかポッドキャストをWebで配信しているものです。CNNBBCNHKにも英語音声ニュースのページがあります。とはいえ、これらはかなりレベルが高い! 正直ほとんど聞き取れないのではないでしょうか。

そういう本格的ニュースはムリでも、時事的な内容を英語で聞けるようになりたい、と言う人にオススメなのがこのVOA News。英語を非母国語とする人向けに作られているので、比較的良心的なスピードで喋ってくれます。海外事情も仕入れることができて一石二鳥?

 

Nature Podcast

naturepodcast.png Nature Publishing GroupがPodcastを配信しているのはご存じでしょうか?内容はNature誌で発表された研究の解説が主体です。かつてはChemPod と呼ばれる化学特化のコンテンツもありましたが、2009年までで更新は停止しており残念です。過去のファイル自体は公開されているので、化学に興味ある方はまずはそちらで試してみるのも手かも。一方でChemistry WorldのPodcastはアクティブに更新されていますね。

ただし当然ながら、容赦ないネイティブ速度なので、ある程度スローな教材で耳を慣らしてからのほうが良いかもしれません。

 

インタラクティブ有機化学英語


interactive-CD.jpg

これは化学、しかも有機化学限定の教材です。東大薬学部の福山透先生の指揮により、日本人化学者の英語力改善を目指して企画編集された教材です。

専門用語などはどう発音して良いのか分からないものが多く、カタカナ読みでは得てして通じません。例えばアンチ(anti)は”アンタイ”、ケトン(ketone)は”キートン”と発音しないと通じない・・・などですね。この教材は化学用語のネイティブ発音をまとめて、CD形式で配布しています。

日本の化学者に広く使って欲しいとの福山先生のご厚意から、なんと無償配布されることになりました。こちらのページからダウンロードください。

 

リスニング訓練の質・密度を高める工夫

短時間の訓練で、「何となく聞き取れるかも?」からさらに一歩進むには、質と密度を向上させる必要があります。

記事のはじめでも書きましたが、「日本語の解説がなるべく少ない教材を使う」のがキーポイントです。これまでの紹介したポッドキャストは全て外国産なので、当然ながらオール英語です。それでも「これはリスニングの訓練だ」という意識のままでいると、漫然と聞きながすだけになってしまい、聞きとれたかどうかも確認しづらいです。

そこで学習効率を上げるために、ディクテーションオーバーラッピング(シャドウイング)を積極的に導入することをおすすめします。

ディクテーションとは、聞き取った単語を逐一紙に書き出す訓練です。聞き取れなかった単語は書き出せないので、なぁなぁで済ませることがなくなります。聞き取り精度と、文脈類推力の向上が期待できます。

オーバーラッピングは、テキストを見ながら英語を聞き、その通りにマネして喋る訓練です。シャドウイングはテキストを見ずに、耳に入ってきた言葉をそのまま繰り返す訓練で、オーバーラッピングの上級版です。リスニングとスピーキングの両方が同時に鍛えられるという、素晴らしい訓練法です。

これらに取り組んでいくと、英語独特のリズム・アクセント・イントネーションが体感的に身につきます。つまりネイティブに近いスピーキングを自力で訓練できるのです。ジャパニーズイングリッシュは端から見ていて全く格好よろしく無いので、是非矯正したいところですね。

オーバーラッピング・シャドウイングどちらにしろ、必ず声に出してトレーニングすることが重要です。スピーキングを訓練しているわけですから、そうでないと意味がありません。

 

筆者の海外経験から

筆者は学生時代、英語教育と会話環境に関して比較的恵まれた環境にいたと思います。

ラボには留学生・ポスドクなども沢山いましたし、彼らと英語で話す機会もありました。また研究発表を英語でするラボ文化でもあったため、自分でもある程度英会話に慣れていたつもりでした。

・・・にもかかわらず、いざアメリカにやって来てみると、あまりに英会話ができないことに愕然としました。『日本に来ている外国人は、やはり英語の出来ない日本人に合わせて喋ってくれていたんだなぁ・・・』と痛感したものです。

英語圏では自分のほうが余所者(alien)なので、ネイティブスピーカーに「優しく喋ってね♪」などと期待することもできません。レストランやスーパーマーケットに行っても、言ってることが分からない聞き取れない。衣食住レベルすら満足にこなせない現実を知り、日本では当たり前すぎて意識しなかった生活インフラのレベルで不安を覚える経験をしました。そういう中で英会話を身につけること自体が、まさに死活問題だったのです。

そんな危機感を感じたこともあり、アメリカに来て数ヶ月は、ESL Podcastを使って毎日30分シャドウイングを欠かさず行い、スピーキングを訓練しました。その甲斐あってか、今ではそれなりに口が回るようになり、日常会話程度ならさほど不自由はなくなりました。ジャパニーズイングリッシュもある程度改善されたように思います。別の言い方をすれば、そういう訓練方式でも英語圏でちゃんと通用するものが身につくということでもあります。

またこれも個人的意見ですが、耳はネイティブの人達がわんさか居る環境にいると勝手に慣れるので、スピーキングの訓練こそが重要に思えます。受動的に訓練可能なリスニングと異なり、能動的に取り組まないと永遠に改善されないものだと思えます。何よりスピーキングができないと自分の意志がうまく伝わらないので、何かの機会に付けて相手の都合良いようにされてしまい、意図せず損してしまうケースが多くなると思えます。外国の人は日本人が想像する以上に、こちらの意図を察してくれないものです。

英語圏にいると英語学習のモチベーションは上がらざるを得ません。日本在住の皆さんはどうでしょうか?皆さんは、「本当に使える英語学習」をしていますか?英会話教室にみすみすお金を差し上げるだけで、満足してはいませんか?

是非とも自分に合ったやり方を模索していだければと思いますし、本記事がその参考になれば幸いです。

 

関連商品

関連リンク

The following two tabs change content below.
cosine

cosine

博士(薬学)。Chem-Station副代表。現在国立大学教員として勤務中。専門は有機合成化学、主に触媒開発研究。 関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。 素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. 親子で楽しめる化学映像集 その1
  2. 脈動がほとんどない小型精密ポンプ:スムーズフローポンプQシリーズ…
  3. 芳香族ニトロ化合物のクロスカップリング反応
  4. 第5回慶應有機化学若手シンポジウム
  5. 含ケイ素四員環 -その1-
  6. アルメニア初の化学系国際学会に行ってきた!③
  7. カルベンで炭素ー炭素単結合を切る
  8. セミナー/講義資料で最先端化学を学ぼう!【有機合成系・2016版…

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. ピラーアレーン
  2. 向山水和反応 Mukaiyama Hydration
  3. ヒノキチオール (hinokitiol)
  4. ノーベル化学賞:下村脩・米ボストン大名誉教授ら3博士に
  5. アスパルテーム /aspartame
  6. Lithium Compounds in Organic Synthesis: From Fundamentals to Applications
  7. 有機反応を俯瞰する ーリンの化学 その 2 (光延型置換反応)
  8. 高速エバポレーションシステムを使ってみた:バイオタージ「V-10 Touch」
  9. “腕に覚えあり”の若手諸君、「大津会議」を目指そう!
  10. 向山酸化還元縮合反応 Mukaiyama Redox Condensation

関連商品

注目情報

注目情報

最新記事

NMR解析ソフト。まとめてみた。①

合成に関連する研究分野の方々にとって、NMR測定とはもはやルーティーンワークでしょう。反応を仕掛けて…

エリック・アレクサニアン Eric J. Alexanian

エリック・J・アレクサニアン(Eric J. Alexanian、19xx年x月x日-)は、アメリカ…

光C-Hザンチル化を起点とするLate-Stage変換法

2016年、ノースカロライナ大学チャペルヒル校・Eric J. Alexanianらは、青色光照射下…

硤合 憲三 Kenso Soai

硤合 憲三 (そあい けんそう、1950年x月x日-)は、日本の有機化学者である。東京理科大学 名誉…

カルボン酸からハロゲン化合物を不斉合成する

第119回のスポットライトリサーチは、豊橋技術科学大学大学院 柴富研究室 博士後期課程1年の北原 一…

アンドリュー・ハミルトン Andrew D. Hamilton

アンドリュー・ディヴィッド・ハミルトン (Andrew David Hamilton、1952年11…

Chem-Station Twitter

PAGE TOP