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化学者のつぶやき

有機合成化学協会誌2017年7月号:有機ヘテロ化合物・タンパク質作用面認識分子・Lossen転位・複素環合成

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有機化学合成協会が発行する、有機合成化学協会誌。今月、7月号が7月25日にオンライン公開になりました。7月号も様々な分野から有機合成化学に関連する話題が紹介されています。

今回のキーワードは「有機ヘテロ化合物(ケイ素ホウ素化合物・有機アルミニウム化合物)・タンパク質作用面認識分子・Lossen転位・複素環合成」です。

巻頭言は北里大学の砂塚 敏明先生で、「大村天然物が人類を救いノーベル賞受賞 」。2015年のノーベル生理学・医学賞を受賞した大村智先生に関する話題です。

会員の方ならば、それぞれの画像をクリックすればJ-STAGEを通してすべてを閲覧することが可能です。それでは御覧ください!

o-(ヒドロシリル)(ボリル)ベンゼンの反応:ホウ素原子によるケイ素-水素結合の分子内活性化

法政大学生命科学部環境応用化学科 河内 敦先生:ベンゼン環のオルト位にケイ素とホウ素を配置した化合物を合成し、Si-Hの反応性を隣接ホウ素で巧みに制御しました。その効果により、アルコールとの脱水素反応等への効率的な利用が可能となり、反応機構解明も行っています。特異な化合物ですがヘテロ元素化学・構造有機化学に興味のあるかたは必見です。

特異な配位様式を持った有機アルミニウム化合物の反応性

茨城大学工学部生体分子機能工学科 吾郷友宏先生・京都大学化学研究所 時任宣博先生:

過渡的に発生可能な2配位のAl=Al二重結合化合物ジアルメン、1配位の単核Al化合物アルミレン、含Al 5員環化学種アルモールの発生、構造、反応性に関する筆者らの研究をまとめた総合論文。不安定化合物を同研究室の嵩高い置換基でうまく単離し・構造を解析したヘテロ元素化学の真髄の総合論文です。

なお、ケムステでも「アルミニウムで水素分子を活性化する」として関連研究を紹介しています。

タンパク質作用面を認識する合成中分子の設計戦略

信州大学学術研究院農学系 大神田淳子先生:

タンパク質表面と相互作用する「部品」を集積化するように設計した中分子によって、タンパク質表面の認識、細胞内でのタンパク質間相互作用の制御を可能とした論文です。今後の新しい創薬の可能性を秘めた論文といえます。

自己連鎖型Lossen転位を用いた高選択的第一級アミン合成

横浜国立大学大学院環境情報研究院 星野雄二郎先生*、大塚尚哉先生、本田 清先生*

本論文は、筆者らが見出した自己連鎖型Lossen転位反応による第一級アミン合成を報告しています。

従来、第一級ヒドロキサム酸のLossen転位反応は高温条件が必要とされましたが、系中で発生するイソシアナートのヒドロキサム酸の活性化により穏和な条件下にて反応が進行しています。Lossen転位の歴史と現状から述べているので大変読みやすいと思います。

イソシアナートを用いる複素環合成におけるスズ種の触媒作用

大阪大学環境安全研究管理センター 芝田育也先生:

本論文では、筆者が一貫して研究、開発してきた有機スズ化合物を用いた複素環化合物の合成について紹介、解説しています。有機スズといえばStilleカップリングなど基質に導入しているものが思い浮かぶと思いますが、触媒として作用するスズ化合物です。

その他

今月の若手化学者による注目論文紹介Review debutは2つ。

静岡大学学術院工学領域化学バイオ工学系列(間瀬研究室)の佐藤 浩平助教とセレンの特性を生かしたペプチド化学の新展開と、関西学院大学大学院理工学研究科(山田研究室)の若森 晋之介博士研究員による複雑な炭素骨格の構築法 —リアノドールの全合成—です。

有機合成化学協会誌紹介記事シリーズ

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Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

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