[スポンサーリンク]

ケムステしごと

製薬業界の現状

[スポンサーリンク]

就職活動が本格化する中、化学系の学生で製薬企業に就職している方は薬学部生以外も多くいます。ここでは、先日行われた大手製薬企業による就職ガイダンスで話された内容をまとめたいと思います。

 

製薬業界の職種

①研究職

 主な仕事としては、医薬品の構造最適化や新たなリード化合物の創出、薬理活性の評価、医薬品の品質評価や分析、安全性確認などを行います。

   ②臨床開発職

 医薬品の研究・開発の最終試験として、臨床試験を行い、その医薬品が期待する活性や安全性を示すかを評価、分析をします。

   ③MR職

 MRは医療関係者に対して、薬の薬効や副作用、正しい使い方などの説明や、医薬品の発売後に判明した副作用などを収集する役割を持ちます。一般的な営業職とは、価格交渉を行わないということや、MRになるためのMR認定試験に合格しなくてはならないという点が異なっています。

 

製薬業界の現状

世界的にみると製薬企業のシェアは米国が非常に大きい範囲を占めていますが、日本では外資企業のほとんどが撤退してしまったために日本企業は日本でシェアを獲得することができていました。しかし、近年先進国では医療費抑制が行われるようになり、利益を獲得するのが難しくなっています。それに加えて、2010年前後に今までの利益を支えていた医薬品の多くが特許切れとなるために大きな利益の減少が起きると考えられています。そのため、製薬企業は利益を維持していくために、人口増加や市場の急成長が見込まれる新興国への市場の移行やジェネリック医薬品の市場の拡大、新たな特許の取得を目指すなど経営の多角化が行われるようになっています。

 

また、近年になり新薬の創出においても変化が見られています。以前の対象疾患としては主に高血圧や高脂血症など多くの人が患うことの多い生活習慣病に対する薬物の開発が行われていましたが、現在、それらの症状に対して既存の薬物の患者満足度が非常に高くなっており、それらの疾病対する薬物の開発は行われなくなりつつある。そのため、満足度の低い難治性疾患に対する創薬が今行われるようになっています。さらに、創薬の手法も変化してきています。以前は創薬ターゲットの絞り込みがあまり行われておらず、特に世界で最も売上の高い企業であるファイザー製薬では全くターゲットを決めていませんでした。しかし、ターゲットを決定することが薬の開発の成功率を上げるということが明らかになってきたため、現在ではどこの企業でも厳密に創薬ターゲットを決定するようになっています。

 

製薬企業の就職

臨床開発職の就職状況

倍率 300倍

試験内容―エントリーシート、ウェブテスト、英語のテスト、課題のプレゼンテーション、グループディスカッション、最終面接

今回のガイダンスでは臨床開発職の就職状況しか伺うことができませんでしたので、その就活状況のみ書かせていただきました。その他の企業で行われる試験も主にグループディスカッションやグループ面接、個人面接に加えて英語やSPIのような試験が行われるそうです。製薬企業に入るのは薬学部の人が多いという印象を持たれている方も多くいると思いますが、この企業では内定者のうち薬学部生は20%にも満たなかったようです。

2010年問題、ジェネリック医薬品の台頭などから製薬企業は今転換期を迎えているような印象を受けました。製薬企業は特に高齢者の多い日本においてはなくてはならない企業なので、ぜひ転換期をうまく乗り越えて消費者にもより優しい企業となって欲しいと感じます。

筆者は製薬企業に就職することはやはり非常に難しいという印象を受けたのですが、就職を希望されている方は医薬品に対する熱意を持って就活に挑んでください!

 

関連書籍

[amazonjs asin=”4106103486″ locale=”JP” title=”医薬品クライシス―78兆円市場の激震 (新潮新書)”][amazonjs asin=”4798046221″ locale=”JP” title=”図解入門業界研究最新医薬品業界の動向とカラクリがよ~くわかる本第5版 (How-nual図解入門業界研究)”][amazonjs asin=”4534051921″ locale=”JP” title=”最新 業界の常識 よくわかる医薬品業界 (最新・業界の常識)”]

 

Avatar photo

Masa

投稿者の記事一覧

某大学の薬学部に通う大学3年生。有機金属錯体と生体活性の関係に興味を持っている。現在は目的の研究室にどうやったら入れるのかということを考える日々を過ごしています。 薬学に関連した内容を発信していければと思っています。よろしくお願いします。

関連記事

  1. 3Dプリンタとシェールガスとポリ乳酸と
  2. 化学反応のクックパッド!? MethodsNow
  3. SFTSのはなし ~マダニとその最新情報 後編~
  4. 重医薬品(重水素化医薬品、heavy drug)
  5. PCに眠る未採択申請書を活用して、外部資金を狙う新たな手法
  6. 島津製作所がケムステVシンポに協賛しました
  7. 【化学情報協会】採用情報(経験者歓迎!)
  8. BASFクリエータースペース:議論とチャレンジ

注目情報

ピックアップ記事

  1. 化学のあるある誤変換
  2. 分子の動きを電子顕微鏡で観察
  3. 酸化反応条件で抗酸化物質を効率的につくる
  4. 砂糖水からモルヒネ?
  5. 矢沢科学よりロゴがついて販売復活!ガス用バルーン
  6. 「サイエンスアワードエレクトロケミストリー賞」が気になったので調べてみた
  7. ご注文は海外大学院ですか?〜出願編〜
  8. マット・フランシス Matthew B. Francis
  9. 第27回 「有機化学と光化学で人工光合成に挑戦」今堀 博 教授
  10. H-1B ビザの取得が難しくなる!?

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2011年11月
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
282930  

注目情報

最新記事

【日産化学 27卒/Zoomウェビナー配信!】START your ChemiSTORY あなたの化学をさがす 研究職限定 キャリアマッチングLIVE

3日間で12領域の研究職社員がプレゼンテーション!日産化学の全研究領域を公開する、研…

hERG阻害 –致死性副作用をもたらす創薬の大敵–

創薬の臨床試験段階において、予期せぬ有害事象 (または副作用) の発生は、数十億円以…

久保田 浩司 Koji Kubota

久保田 浩司(Koji Kubota, 1989年4月2日-)は、日本の有機合成化学者である。北海道…

ACS Publications主催 創薬企業フォーラム開催のお知らせ Frontiers of Drug Discovery in Japan: ACS Industrial Forum 2025

日時2025年12月5日(金)13:00~17:45会場大阪大学産業科学研究所 管理棟 …

【太陽ホールディングス】新卒採用情報(2027卒)

■■求める人物像■■「大きな志と好奇心を持ちまだ見ぬ価値造像のために前進できる人…

欧米化学メーカーのR&D戦略について調査結果を発表

この程、TPCマーケティングリサーチ株式会社(本社=大阪市西区、代表取締役社長=松本竜馬)は、欧米化…

有馬温泉でラドン泉の放射線量を計算してみた【化学者が行く温泉巡りの旅】

有馬温泉は、日本の温泉で最も高い塩分濃度を持ち黄褐色を呈する金泉と二酸化炭素と放射性のラドンを含んだ…

アミンホウ素を「くっつける」・「つかう」 ~ポリフルオロアレーンの光触媒的C–Fホウ素化反応と鈴木・宮浦カップリングの開発~

第684回のスポットライトリサーチは、名古屋工業大学大学院工学研究科(中村研究室)安川直樹 助教と修…

第56回ケムステVシンポ「デバイスとともに進化する未来の化学」を開催します!

第56回ケムステVシンポの会告を致します。3年前(32回)・2年前(41回)・昨年(49回)…

骨粗鬆症を通じてみる薬の工夫

お久しぶりです。以前記事を挙げてから1年以上たってしまい、時間の進む速さに驚いていま…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP