[スポンサーリンク]

一般的な話題

化学にインスパイアされたジュエリー

[スポンサーリンク]

(写真はSan Francisco Chrornicleより引用)

 Made With Moleculeというサイトでは、分子構造をモチーフとした銀製アクセサリーを販売しています。価格は75~130程度とお手頃。今では年間2000セット以上を売り上げる人気商品となっているようです。送料$20にて日本にも発送してもらえるようです。昨今は円高傾向ですし、気の利いた(?)クリスマスプレゼントとしてお一ついかがでしょうか。

このジュエリーの存在は既にほうぼうの科学系ブログで紹介され、知る人ぞ知るアイテムの一つになっています。商品の詳細については関連リンクを参照いただくとして、今回は「どんな人が作っているのか」に焦点を当てて、簡単に紹介してみたいと思います。

ジュエリーの作者

MWM_3

ジュエリーを作成しているのは、Raven Hanna (36歳)。彼女はイェール大学で生物物理・生化学を学んでPh.Dの称号を取得したあと、カリフォルニア大学バークリー校でポスドクとしてリボソームの研究に従事しました。2004年、カリフォルニア大学サンタクルツ校でサイエンスライティングのプログラムを学び、2005年にデザイナーとしてジュエリービジネスを始めました。

つまりもともとは科学者畑の人だったのです。現在では売上が好調なので、full-timeでジュエリー作成にあたっているようです。

 ジュエリーのモチーフとしては【人間の欲望・情動に深く関与した化合物を意図して選んでいる】のだそうです。言われてみれば神経伝達物質ばかりですね。 女性を飾り美しさを際立たせるだけでなく、時には人間の見栄や虚栄心を煽る役割を担うものがジュエリー。そのモチーフ選定を「構造が綺麗」だけで終止させないあたりに、アーティストとしての美学が感じられます。

MWM_1

博士号はもっと自由であるべき

アメリカのPh.D.取得者は、進路・活動範囲が本当に幅広いと感じます。仕事の合間に大人気Webコミックを描いている現役研究者なんかもいます。Ph.D.を取得後に、ボードゲーム商店を運営している人なんかもいます。

こういった事例を見るにつけ、「博士号の意味というのは、もっと柔軟に捉えるべきものでは?」と感じられます。

アメリカ国土には「どこの誰でも、何歳でも、学ぶ意欲があればは学びたいものを学べる」「年齢によらず、身につけたスキルを活かせる道がある」といった風潮があると感じられます。特に年齢をほとんど懸念しない個人主義的な空気は、自由度の高い長期にわたるキャリアパス形成を大きく後押ししているように思えます。

彼女にしても、博士号・ポスドクを経たあとに別の大学に再入学、その後デザイナーとして働きはじめているわけです。日本社会だと間違いなく『いい年して何やってんの?』というハズレもの扱いになってしまうことでしょう。しかしふらふらしているように見えて、「独創的な科学コミュニケーションを目指す」といった信念を持っていると見れば、キャリアパスはまったく一貫しているのです。強い信念と実行力があれば、きっちり活躍できる道はあるのです。

「博士後のの進路としては研究職・技術職以外はありえない、一心不乱に使ってきた長時間がムダになってしまうから」などと考えてしまう・・・そのように視野狭窄で凝り固まった思考などを、”知を愛する(Doctor of Philosophy)” の称号は実のところ望んでないのではないでしょうか?

もし日本の博士号教育というものが、そんなガチガチの人材のみを生み出し続けるシステムだとすれば、社会から「頑固で使えない奴扱い」されてもそりゃあ仕方ないのでは・・・この点については多くの議論があるでしょうから多くは述べませんが。

 independent thinkerとしての称号は、そんなさもしいものでは無く、もっと自由なものであってしかるべき。そう、時には芸術にまで及ぶほどに。

そんな風に考えてみるのはいかがでしょうか。結局のところ社会情勢がどうとかではなく、自分の余裕と自信と気の持ちようではないか・・・そんなふうにも思えます。

学生のみなさんには、若い打ちに是非とも多彩なキャリアパスを眺めてみることをオススメしたいです。絶対安心な道なんてものは、今後はどこにもありませんから・・・。

 

関連リンク

Chemically inspired jewelry are hot sellers (SanFrancisco Chrornicle)

Made with Molecules アクセサリー販売元のサイト

Feynman’s Flower アクセサリー製作者Raven Hannaのブログ

Raven HannaのTwitter

Raven Hanna:A molecular biophysicist gives up the lab bench to follow another molecular muse (C&EN)

素敵な化学アクセサリー “Made with molecule” (気ままに有機化学)

理系の人に贈るプレゼントまとめ(Naverまとめ)

cosine

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。現在国立大学教員として勤務中。専門は有機合成化学、主に触媒開発研究。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. ChemRxivへのプレプリント投稿・FAQ
  2. 就職か進学かの分かれ道
  3. 理論的手法を用いた結晶内における三重項エネルギーの流れの観測
  4. なぜ傷ついたマジックマッシュルームは青くなるの?
  5. 6年越しで叶えた“海外と繋がる仕事がしたい”という夢
  6. 細胞内の温度をあるがままの状態で測定する新手法の開発 ~「水分子…
  7. とある化学者の海外研究生活:アメリカ就職編
  8. 天然物の構造改訂:30年間信じられていた立体配置が逆だった

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. ノーベル化学賞 Nobel Prize in Chemistry
  2. アスピリンから生まれた循環型ビニルポリマー
  3. アレーン類の直接的クロスカップリング
  4. 歯車クラッチを光と熱で制御する分子マシン
  5. 大学院生になっても宿題に追われるってどないなんだが?【アメリカでPh.D.を取る–コースワークの巻–】
  6. ポーソン・カーン反応 Pauson-Khand Reaction
  7. モンサント酢酸合成プロセス Monsanto Process for Acetic Acid Synthesis
  8. 新しい芳香族トリフルオロメチル化試薬
  9. 被ばく少ない造影剤開発 PETがん診断に応用へ
  10. シグマトロピー転位によるキラルα-アリールカルボニルの合成法

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

注目情報

注目情報

最新記事

三井化学岩国大竹工場の設備が未来技術遺産に登録

三井化学はこのほど、岩国大竹工場(山口県和木町)にあるポリエチレン製造装置が、国立科学博物館により、…

【金はなぜ金色なの?】 相対論効果 Relativistic Effects

相対性理論は、光速近くで運動する物体で顕著になる現象を表した理論です。電子や原子などのミクロな物質を…

gem-ジフルオロアルケンの新奇合成法

トリフロンにグリニャール試薬を作用させるだけで多置換gem-ジフルオロアルケンの合成に成功した。フッ…

パーソナル有機合成装置 EasyMax 402 をデモしてみた

合成装置といえばなにを思い浮かべるでしょうか?いま話題のロボット科学者?それともカップリング…

湿度によって色が変わる分子性多孔質結晶を発見

第277回のスポットライトリサーチは、筑波大学 数理物質系 山本研究室 助教の山岸 洋(やまぎし ひ…

【書籍】機器分析ハンドブック1 有機・分光分析編

kindle版↓概要はじめて機器を使う学生にもわかるよう,代表的な分析機器の…

第46回「趣味が高じて化学者に」谷野圭持教授

第46回目の研究者インタビューです。今回のインタビューは第10回目のケムステVシンポ講演者の一人であ…

【山口代表も登壇!!】10/19-11/18ケミカルマテリアルJapan2020-ONLINE-

「ケミカルマテリアルJapan2020-ONLINEー(主催:株式会社化学工業日報社)」は、未来に向…

Chem-Station Twitter

PAGE TOP