[スポンサーリンク]

一般的な話題

有機合成化学協会誌2017年8月号:C-H活性化・アリール化重合・オキシインドール・遠隔不斉誘導・ビアリールカップリング

[スポンサーリンク]

有機化学合成協会が発行する、有機合成化学協会誌。今月、8月号が8月10日にオンライン公開になりました。

あれ今回はオンライン化早くないですか?と思った方はかなりの協会誌マニア。

そうなんです。オンライン公開を早めてもらいました。その他にもいくつか変更していただきました。詳細は後述します。

さて、8月号も様々な分野から有機合成化学に関連する話題が紹介されています。キーワードは「C-H活性化・アリール化重合・オキシインドール・遠隔不斉誘導・ビアリールカップリング」です。

会員の方ならば、それぞれの画像をクリックすればJ-STAGEを通してすべてを閲覧することが可能です。それでは御覧ください!

Iron─Catalyzed C─H Bond Activation

東京大学大学院理学系研究科 Laurean Ilies先生:

2015年度有機合成化学奨励賞受賞論文です。有機触媒反応の貴金属触媒の代替として、鉄触媒は経済的に大変魅力のある触媒です。東京大学のIlies准教授らは鉄触媒を用いた炭素—水素結合活性化反応を多数開発しました。鉄を安定化させるユニークな二座配位子と反応性を獲得させる基質上の配向基が鍵となっています。最近では貴金属の代替という枠を超えて、鉄触媒ならではの反応も開発に至っています。

パラジウム触媒直接的アリール化重合(DArP)の開発

京都大学化学研究所附属元素科学国際研究センター 小澤文幸先生

パラジウム触媒による直接的アリール化重合(DArP)。Hemilabileなホスフィン配位子[P(2-MeOC6H4)3 (L1),P(2-Me2NC6H4) 3 (L2)]や,L1とTMEDA との混合配位子により,頭尾規則性P3HTやドナー・アクセプター型交互共重合体の効率的合成に成功しています。

軸性キラリティーを有するNアリールオキシインドール誘導体を利用した不斉合成法の開発

名古屋大学大学院生命農学研究科 中崎敦夫先生

オキシインドール誘導体のC–N 結合の回転阻害に起因する軸不斉を利用した立体選択的合成法に関する総合論文。これまでにほとんど注目を集めてこなかったオキシインドールの軸不斉を利用したジアステレオ制御型の反応により、3位に不斉中心を持つオキシインドールを高い立体選択性で合成することに成功。

遠隔不斉誘導反応を基軸とした広域空間制御戦略によるポリプロピオネートの短工程合成

早稲田大学理工学術院 細川誠二郎先生:

シリルジエノールエーテルを用いた遠隔不斉誘導反応を基点とするポリプロピオネート化合物の立体選択的合成。広域空間制御戦略によるポリケチドライブラリー構築を目指す!

ビアリールカップリング反応を利用する天然物合成

富山大学大学院理工学研究部 阿部 仁先生

ビアリールカップリングを鍵工程とする天然物合成です。パラジウム及び銅触媒を用いた複雑ビアリール構造の構築や速度論的光学分割にも展開しています。

Review de Debutがオープンアクセスになりました

さて、冒頭に記した通り、本協会誌のオンライン化がこれまでの25日以降から、10日前後と大幅に早くなりました。協会誌が手元に届くのがおよそ7-10日なので、数日のズレ程度でオンラインで視ることができます。折角ウェブで紹介するので、新しい情報をお送りしたいですよね。要望をあげたら簡単に変えていただきました。有機合成化化学協会フットワーク軽いです笑。

もう1点、若手化学者が執筆する2ページの総説記事 Review de Debutを無料公開にしていただきました。

これは、「折角興味が興味が湧いたのに見れねえよ。」という意見に対応したものです。協会HPにこれまでのReview de Debutまとめページもつくっていただきました。さすがに、メインの内容をすべて無料公開してしまうと会員の意味がなくなってしまうので困難ですが、一部を無料公開にしていただけました。残りを見たい方は、会員になるか、会員に泣きついてみてください。

というわけで、今回からしっかり紹介します。

今回の Review de Debutは1つ。

名大理学研究科伊丹研究室の八木亜樹子助教で「シクロペンタノン類縁体の触媒的炭素-炭素結合活性化による分子変換」。DongらがNatureに報告したシクロペンタノンの触媒的C–C結合活性化と続くアリール基のC–Hメタル化による結合変換反応を解説しています。ケムステでも解説している論文です(記事:安定な環状ケトンのC–C結合を組み替える)。ちなみに八木さんもケムステのコアスタッフです。

八木亜樹子助教

ついでに実は巻頭言もオープンアクセスとなっております。年配の先生方が語る巻頭言は、関連する化学や化学者の今昔を語っている場合が多く、大変参考になります。今回は東北大学名誉教授の大類 洋先生でタイトルは「有機合成を礎に難題に挑む

ビタミンCの発見者セント=ジェルジ・アルベルトの名言“Discovery consists of seeing what everybodyhas seen and thinking what nobody has thought”を挙げて、有機合成を使って難題に挑むことの勧めを述べています。

 

最後にもう1点、次回からグラフィカルアブストラクトをカラーにしてもらいます。これも協会誌が白黒だから白黒だったのですが、ウェブで紹介する際はカラーの方が目を引くからです。

というわけで、益々ウェブで読みやすくなる有機合成化学協会誌。ぜひとも興味があれば御覧ください。

有機合成化化学協会誌紹介記事シリーズ

Avatar photo

webmaster

投稿者の記事一覧

Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

関連記事

  1. 深海の美しい怪物、魚竜
  2. 電話番号のように文献を探すーRefPapers
  3. 複雑分子を生み出す脱水素型ディールス・アルダー反応
  4. カルベンで炭素ー炭素単結合を切る
  5. 化学工業で活躍する有機電解合成
  6. 赤外光で分子の結合を切る!
  7. プラスチックに数層の分子配向膜を形成する手法の開発
  8. パラジウム錯体の酸化還元反応を利用した分子モーター

注目情報

ピックアップ記事

  1. メルク、途上国でエイズ抑制剤を20%値下げ
  2. マテリアルズ・インフォマティクス活用検討・テーマ発掘の進め方 -社内促進でつまずやすいポイントや解決策を解説-
  3. 超強塩基触媒によるスチレンのアルコール付加反応
  4. -ハロゲン化アルキル合成に光あれ-光酸化還元/コバルト協働触媒系によるハロゲン化アルキルの合成法
  5. むずかしいことば?
  6. 【追悼企画】カナダのライジングスター逝く
  7. 同仁化学研、ビオチン標識用キットを発売
  8. 食品安全、環境などの分析で中国機関と共同研究 堀場製
  9. 香料:香りの化学3
  10. ベテラン研究者 vs マテリアルズ・インフォマティクス!?~ 研究者としてMIとの正しい向き合い方

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2017年8月
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28293031  

注目情報

最新記事

第42回メディシナルケミストリーシンポジウム

テーマAI×創薬 無限能可能性!? ノーベル賞研究が拓く創薬の未来を探る…

山口 潤一郎 Junichiro Yamaguchi

山口潤一郎(やまぐちじゅんいちろう、1979年1月4日–)は日本の有機化学者である。早稲田大学教授 …

ナノグラフェンの高速水素化に成功!メカノケミカル法を用いた芳香環の水素化

第660回のスポットライトリサーチは、名古屋大学大学院理学研究科(有機化学研究室)博士後期課程3年の…

第32回光学活性化合物シンポジウム

第32回光学活性化合物シンポジウムのご案内光学活性化合物の合成および機能創出に関する研究で顕著な…

位置・立体選択的に糖を重水素化するフロー合成法を確立 ― Ru/C触媒カートリッジで150時間以上の連続運転を実証 ―

第 659回のスポットライトリサーチは、岐阜薬科大学大学院 アドバンストケミストリー…

【JAICI Science Dictionary Pro (JSD Pro)】CAS SciFinder®と一緒に活用したいサイエンス辞書サービス

ケムステ読者の皆様には、CAS が提供する科学情報検索ツール CAS SciFind…

有機合成化学協会誌2025年5月号:特集号 有機合成化学の力量を活かした構造有機化学のフロンティア

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2025年5月号がオンラインで公開されています!…

ジョセップ・コルネラ Josep Cornella

ジョセップ・コルネラ(Josep Cornella、1985年2月2日–)はスペイン出身の有機・無機…

電気化学と数理モデルを活用して、複雑な酵素反応の解析に成功

第658回のスポットライトリサーチは、京都大学大学院 農学研究科(生体機能化学研究室)修士2年の市川…

ティム ニューハウス Timothy R. Newhouse

ティモシー・ニューハウス(Timothy R. Newhouse、19xx年xx月x日–)はアメリカ…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP