[スポンサーリンク]

化学者のつぶやき

二酸化炭素をはきだして♪

 
丁度昨年の12月、世間を賑わした二酸化炭素
C1化学原料としての利用を中心に、種々の展開が期待できるため、有機・有機金属化学分野においても、CO2を用いた反応は現在も重要な基礎研究テーマです。

 

さて、Angewandte誌のEarly Viewにて、有機ケイ素化合物を用いたCO2の還元反応が紹介されていたので、(有機化合物に絞って)近年の流れを追いつつ、紹介したいと思います。

最近報告された、二酸化炭素と反応する典型元素化合物の代表が、昨年のAngewandte誌に出た
FLP(Frustrated Lewis Pairs)だと思います(以前のつぶやき)。

C. M. Momming, E. Otten, G. Kehr, R. Frhlich, S. Grimme,* D. W. Stephan,* G. Erker*, Angew. Chem. Int. Ed. 2009, 48, 6643-6646, DOI: 10.1002/anie.200901636

 

rk122720106.gif

 

温度(プラス真空引き)によって、FLPへのCO2の付加が可逆的に起こるというもの。

この時点ではまだ、まぁ、起こるんだろうなぁ・・・、という感じで見ていたら、
別のグループによって、あっという間に触媒反応にまで発展!!

A. Berkefeld, W. E. Piers,* M. Parvez,
J. Am. Chem. Soc. 2010, 132, 10660-10661, DOI: 10.1021/ja105320c

 

rk122720105.gif

 

ここでは、ヒドロシリル化と脱シリルエーテルを伴って、なんと二酸化炭素がメタンに。反応スキームから察するに、当初はCO2とH2からFLPを用いてメタノールを作りたかったのではないでしょうか。

でもメタンにまでしちゃったらどう使うの?!と思っていたら、一方でメタノールに展開できる反応が!  2009年、これまた別のグループから発表されました。(以前のつぶやき)

S. N. Riduan, Y. Zhang,* J. Y. Ying*,
Angew. Chem. Int. Ed. 2009, 48, 3322-3325, DOI: 10.1002/anie.200806058

 

rk122720103.gif

 

この論文では、N-ヘテロ環状カルベンを触媒としたヒドロシリル化を利用してメトキシシラン誘導体を得て、最後に加水分解にてメタノールを得るというもの。

直接触媒的にCO2がメタノールになるわけではないけど、反応を売る戦略として見習いたい点がたくさんあります。

それにしてもNHCはいろんなことできるんだなぁ、と思っていたら、NHCを用いた新たな触媒反応が立て続けに報告されることに!

 

Y. Kayaki, M. Yamamoto, T. Ikariya,
Angew. Chem. Int. Ed. 2009, 48, 4194-4197, DOI: 10.1002/anie.200901399
 

 

 

 

 

rk122720107.gif


同じNHCでもアルキル置換のものが効果的であることを示し、さらにこの論文では溶媒フリーで反応が進行しています。一歩先行くJAPAN!
スマートな切り口だな、と思っていたら、今度はいよいよCOへ還元!
今年2010年、先述のグループにより、今度は形式上CO2の還元反応でCOを発生させつつ、O原子をアルデヒドに与える触媒反応が報告されました!

L. Gu, Y. Zhang, J. Am. Chem. Soc. 2010, 132, 914-915, DOI: 10.1021/ja909038t

 

rk122720102.gif

 

反応条件も温和なので、その他の反応にもいろいろ使えそう。
そう言えば、有機化合物のみを用いてCO2をCOに還元する反応ってのはかなりレアだなぁ、と思っていたら、今回(やっとここまできた。。)、ジシリン-リン付加体とCO2の反応からCOが発生する、という内容の論文がでました。

D. Gau, R. Rodriguez, T. Kato,* N. S.-Merceron, A. d. Cozar, F. P. Cossio, A. Baceiredo*
Angew. Chem. Int. Ed. 2010, 49, Early View, DOI: 10.1002/anie.201006265

 

rk122720101.gif

 

実はこのグループ、以前につぶやきで報告したことがある、ケイ素-炭素三重結合を合成した研究室。
その時用いられたN-P置換基に類似した立体保護基を用いて、まずジシリン-リン付加体 2を合成しています。収率の低さから相当な労力を伺えますが、NMRもしっかり取り、X線できっちり構造も決めています。

さらに、2とCO2の反応を検討。その結果、4当量のCO2から3当量のCOが発生していて、1当量のCO2と3つのO原子は分子内に取り込まれることを明らかにしています。(またCOが発生していることを、Rh錯体を用いた捕捉反応により実験的にも立証しています。手堅い)

ざっくりCO2を用いた最近の流れを紹介しましたが、有機化合物でCO2を活性化~反応に結び付けるポイントが見えますね。どうやら電子供与性の高いロンペア(ホスフィンやカルベンやシリレン等)が反応の初期段階で効いていて、その後の展開には、適切な電子受容体や、酸素原子との親和性が高いケイ素化合物を用いることが鍵だと感じます。

うまく利用できる反応さえ確立できれば、原料としてCOは申し分無いのではないでしょうか。
今後のCO2の活躍ににますます期待ですね。

 

それにしても、最近は有機化合物を使った小分子(水素、アンモニア、一酸化炭素、二酸化炭素、P4等々)の活性化に関する研究が世界中で盛んですね。究極的にはやはりメタンでしょうか

金属でできることなら有機化合物でもできる、そんな時代が近づいている気がします。

 

参考文献

 

The following two tabs change content below.
StarryNight

StarryNight

関連記事

  1. 青いセレンディピティー
  2. 100年前のノーベル化学賞ーリヒャルト・ヴィルシュテッター
  3. 化学研究ライフハック:縦置きマルチディスプレイに挑戦!
  4. 美術品保存と高分子
  5. E-mail Alertを活用しよう!
  6. ノーベル化学賞メダルと科学者の仕事
  7. 円偏光スピンLEDの創製
  8. 【速報】2015年ノーベル生理学・医学賞ー医薬品につながる天然物…

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. 元素周期 萌えて覚える化学の基本
  2. 留学せずに英語をマスターできるかやってみた(5年目)(留学中編)
  3. 合成手法に焦点を当てて全合成研究を見る「テトロドトキシン~その1~」
  4. 研究費・奨学金の獲得とプロポーザルについて学ぼう!
  5. 学生・ポスドクの方、ちょっとアメリカ旅行しませんか?:SciFinder Future Leaders 2018
  6. コバルト触媒でアリル位C(sp3)–H結合を切断し二酸化炭素を組み込む
  7. 文具に凝るといふことを化学者もしてみむとてするなり④:「ブギーボード」の巻
  8. サリチル酸 (salicylic acid)
  9. ChemTile GameとSpectral Game
  10. 植物性油の再加熱によって毒物が発生

関連商品

注目情報

注目情報

最新記事

有機合成化学協会誌2019年1月号:大環状芳香族分子・多環性芳香族ポリケチド天然物・りん光性デンドリマー・キャビタンド・金属カルベノイド・水素化ジイソブチルアルミニウム

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2019年1月号がオンライン公開されました。今…

リチウムイオンバッテリーの容量を最大70%まで向上させる技術が開発されている

スマートフォンや電気自動車の普及によって、エネルギー密度が高く充電効率も良いリチウムイオンバッテリー…

学部4年間の教育を振り返る

皆様、いかがお過ごしでしょうか。学部4年生の筆者は院試験も終わり、卒論作成が本格的に始まるまでの束の…

ダイセルが開発した新しいカラム: DCpak PTZ

ダイセルといえば「キラルカラムの雄」として知られており、光学活性化合物を分離するキラルカラム「CHI…

台湾当局、半導体技術の対中漏洩でBASFの技術者6人を逮捕

台湾の内政部(内政省)刑事局は7日、半導体製造に使う特殊な化学品の技術を中国企業に漏洩した営業秘密法…

「低分子医薬品とタンパク質の相互作用の研究」Harvard大学 Woo研より

海外留学記第29回目は、Harvard大学のChiristina Woo研に留学されている天児由佳さ…

Chem-Station Twitter

PAGE TOP