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バイヤー・ビリガー酸化/Baeyer-Villiger Oxidation

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⏱ 30秒サマリー

  • 何をする反応か — ケトンやアルデヒドを過酸などの求核的酸素源で処理し、カルボニル炭素と隣接炭素の間に酸素原子を1個挿入する。C–C結合を切って C–O–C に組み替える酸化的転位である。
  • 何ができるか — 鎖状ケトンからはエステル、環状ケトンからは一炭素分だけ環拡大したラクトンが得られる。転位する炭素の立体化学は保持されるため、光学活性基質の情報を失わずに酸素を挿入できる。
  • いつ使うか — ケトンを一段でエステル・ラクトンに変えたいときの標準手法。特に4〜7員環ケトンの環拡大では最初に検討する。過酸の危険性が問題になる大スケールでは、過酸化水素系触媒や酵素法に切り替える。

概要

バイヤー・ビリガー酸化(Baeyer-Villiger oxidation)は、1899年にミュンヘン大学のAdolf von Baeyerと共同研究者Victor Villigerが報告した反応である[1][2]。彼らはメントン、カルボメントン、カンファーなどの環状ケトンにカロ酸(ペルオキシ一硫酸)を作用させ、収率40〜50%で対応するラクトンが得られることを見いだした[1]。原報の意義は、それまで困難とされたC–C結合の位置選択的な切断を、温和な条件で酸素挿入として実現した点にある。発見から100年間の展開は総説に整理されている[19][25]。Baeyer自身はインディゴの化学合成やフタレイン染料の発見でも知られ、1905年にノーベル化学賞を受賞している。

Adolf von Baeyerと Victor Villiger

Adolf von Baeyerと Victor Villiger

反応は過酸がカルボニル炭素に付加してCriegee中間体と呼ばれる四面体中間体を与え、続く1,2-転位で完結する[3][4]。非対称ケトンでは、転位の際に生じる正電荷をより安定化できる置換基が優先して酸素上へ移動する。生成するラクトンは開環重合によるポリエステル原料として、またマクロライドや多環性天然物の骨格構築中間体として広く使われる。工業的には過酢酸を用いるシクロヘキサノン→ε-カプロラクトン変換がナイロン6・ポリカプロラクトン原料を支えている。

古典的には当量の過酸を使うが、過酸は熱・衝撃に敏感で廃棄物も多い。このため21世紀以降の研究は、過酸化水素を酸素源とするLewis酸触媒系[10][21]、分子状酸素とNAD(P)Hを使うBaeyer-Villigerモノオキシゲナーゼ(BVMO)[22]、さらには水を酸素源とする電解酸化[11]へと重心を移している。不斉版も有機触媒[8]・キラルLewis酸[9]・酵素[7]の三方向で実用水準に達しつつある。天然物合成への適用例は2018年以降のものが、総説としてまとめられている[24]

反応機構

(1) 過酸のカルボニル炭素への求核付加 — Criegee中間体の生成

過酸のペルオキシ酸素がカルボニル炭素を求核攻撃し、四面体型の付加体(Criegee中間体)を与える。この中間体の存在は1948年にCriegeeがデカリン系ペルオキシエステルの転位研究から提唱した[3]。酸性条件やLewis酸はカルボニルを活性化してこの段階を加速する。電子不足なケトンや立体的に混み合ったケトンでは、この付加段階が律速になりうる。

(2) O–O結合の開裂と協奏的1,2-転位 — 律速段階

Criegee中間体のO–O結合が開裂すると同時に、隣接炭素上の置換基が酸素へ1,2-転位する。カルボン酸が脱離基として抜け、エステル(またはラクトン)が生じる。通常はこの段階が律速で、Hammettのρ値は負となる。挿入される酸素が過酸のペルオキシ部位に由来することは、1953年にDoeringとDorfmanが¹⁸O標識ベンゾフェノンを用いて証明した[4]。当時競合していたBaeyer自身のジオキシラン説とWittig–Pieperのカルボニルオキシド説は、この実験によって退けられている。転位は分子内で進行するため、転位する炭素上の立体化学は完全に保持される

(3) 位置選択性の起源 — 電子効果と立体電子効果

転位能はおおむね 3級アルキル > 2級アルキル ≈ アリール > 1級アルキル > メチル の順で、電子豊富な炭素ほど転位しやすい[15][16]。アルデヒドではヒドリドが優先的に転位するため、生成物はカルボン酸となる。

この「電子効果だけで決まる」という説明は、後年の研究で修正されている。 現在は、Criegee中間体において移動基が開裂するO–O結合とアンチペリプラナーに配置される配座をとれることが必要条件と考えられている(一次立体電子効果)。σ(C–R)軌道とσ*(O–O)軌道の重なりが最大化されるためである。歪んだ二環性・三環性ケトンやα-トリフルオロメチルケトンで転位能の一般則に反する生成物が得られるのは、この配座要求によって説明される。

Criegee中間体そのものは長らく捕捉不可能とされてきたが、これらの立体電子効果があえて働かないよう五員環に拘束した設計とすることで単離・X線構造解析まで到達している[5]

酵素側からも同じ描像が支持されている。シクロヘキサノンモノオキシゲナーゼ(CHMO)と基質シクロヘキサノン・NADP⁺・FADの複合体結晶構造(2.4 Å分解能)では、基質がまさにCriegee中間体を形成しうる配置に固定されていた[6]。有機化学が配座解析から要求した配置を、酵素は活性部位の形として実現しているといえる。

(4) 主な副反応
  • アルケンのエポキシ化 — 過酸は孤立オレフィンを速やかに酸化する。基質にアルケンが共存すると競合し、しばしばエポキシ化が優先する。
  • 生成エステル・ラクトンの加水分解 — 副生するm-クロロ安息香酸などの酸性条件下で開環し、ヒドロキシ酸やカルボン酸まで進む。
  • 過剰酸化 — 酸化剤過剰では生成物がさらに酸化される。
  • アミン・スルフィド・ホスフィンの酸化 — ケトンより速く酸化されるヘテロ原子官能基が共存すると化学選択性を失う。

特徴・適用範囲・類似反応との比較

強み
  • 一段階で酸素を挿入できる。 ケトンからエステル・ラクトンへ、保護基操作なしに直接変換できる。環状ケトンなら一炭素分の環拡大が同時に達成され、4員環→γ-ラクトン、5員環→δ-ラクトン、6員環→ε-ラクトンと環サイズを自在に伸ばせる。
  • 立体化学が保持される。 転位する炭素の立体配置は完全に保たれるため、光学活性ケトンの不斉情報をそのままラクトンへ引き継げる[15]
  • 試薬が安価で入手しやすい。 mCPBAは室温〜冷蔵保存可能な粉末として市販され、特別な装置を要しない。反応性の序列は CH3COOOH < C6H5COOOH < mCPBA < p-NO2C6H4COOOH < CF3COOOH で、基質に応じて選べる。
  • 電子豊富な芳香族アルデヒドではDakin反応としてフェノール合成に使える。 Vilsmeier反応などで容易に調製できるo-/p-ヒドロキシまたはアルコキシベンズアルデヒドは、BV条件で酸化を受け、引き続く加水分解でフェノールへ変換される[17]
  • 不斉版・グリーン版の選択肢が揃っている。 有機触媒[8]、キラルLewis酸[9]、固体酸[10]、電解[11]、酵素[7][22]と、目的に応じて手法を切り替えられる。

弱み・注意点
  • アルケン共存基質では使えないことが多い。 過酸はC=Cを速やかにエポキシ化するため、孤立オレフィンをもつ基質ではプリリツェフ エポキシ化が優先する。α,β-不飽和ケトンの二重結合は電子不足のため比較的酸化を受けにくいが、保護するかケトン直接活性化型の触媒に切り替えるのが確実である。
  • 位置選択性の予測が外れることがある。 転位能の一般則は目安にすぎず、環歪みや配座固定のある基質では順序が入れ替わる。予想外の位置異性体が主生成物になった場合、まずCriegee中間体の配座を疑うべきである。
  • α位が四級で移動可能な基がない基質は反応しない。
  • 副生カルボン酸が基質・生成物を壊す。 mCPBAから生じるm-クロロ安息香酸により、酸に弱い基質や生成ラクトンが分解する。緩衝しないと再現性を欠く。
  • スケールアップで過酸の安全性が障壁になる。 短鎖過酸ほど熱・衝撃に敏感で、大量取扱いには工程安全評価が必須である。酵素法もε-カプロラクトンのようなバルク品では、熱安定性・補酵素再生・基質阻害が未解決で工業化に至っていない[22]
類似反応との比較
反応 主な前駆体 生成物の型 長所 短所・注意 使いどころ
バイヤー・ビリガー酸化 ケトン/アルデヒド エステル・ラクトン(O挿入、一炭素環拡大) 一段・立体保持・試薬が安価 アルケン共存で競合、過酸の安全性、位置選択性が読みにくい場合あり ケトンをそのままラクトンにしたいとき。まず試す標準手法
ベックマン転位 ケトン(オキシム経由) アミド・ラクタム(N挿入) ε-カプロラクタム工業製法として確立 オキシム調製の一段が余分。強酸条件。α位が四級だとベックマン開裂が競合 ラクトンではなくラクタムが欲しいとき
ティフェノー・デミヤノフ転位 ケトン(アミノアルコール経由) 一炭素環拡大したケトン(C挿入) ヘテロ原子を入れずに環を伸ばせる 前駆体調製が多段。ジアゾ化を伴う 環拡大したいがカルボニルは残したいとき
プリリツェフ エポキシ化 アルケン エポキシド 同じmCPBAで進行、条件が温和 BV酸化と競合する。基質に両方あると制御が要る ケトンとアルケンの選択性設計を考える際の比較対象
BVMO(生体触媒BV酸化) ケトン エステル・ラクトン(同じ変換) 分子状酸素が酸素源、副生成物は水、高いエナンチオ選択性。電子効果に反する位置選択性も設計可能[7] 熱安定性・補酵素再生・基質阻害。バルク生産は未達成 高い光学純度が要る、または化学触媒では出せない位置選択性が要るとき

反応例

テトロドトキシン(Tetrodotoxin)

岸義人らによる全合成において、複雑な多官能性中間体に対してBV酸化が適用されている[12]。1972年の報告であり、本反応が高度に官能基化された天然物合成の中でも機能することを示した初期の例である。

 

Psammaplysin A

海洋天然物Psammaplysin Aの初の全合成(2022年)で鍵段階に用いられた[13]。スピロ環状ケトンをmCPBAとリン酸水素二ナトリウムの緩衝条件で処理し、ジヒドロオキセピン骨格の前駆体となる七員環ラクトンをほぼ定量的に得ている。オキセピン–アレーンオキシド転位という副反応の危険を回避するために、あえて環拡大戦略が選択された点が戦略上示唆的である。

Eupomatilones 5・6

Cu(II)/SPDO錯体を触媒とする2-アリールシクロブタノンの速度論的分割により、ラクトンを最大96% ee、未反応ケトンを最大99% eeで得る手法が開発された[9]。位置選択性は20:1を超える。市販の3-メチルシクロブタン-1-オンから9工程で、天然物eupomatilones 5および6の触媒的不斉全合成が達成されている。

3-置換シクロブタノン由来のγ-ラクトン(触媒的不斉化)

キラルリン酸を有機分子触媒とする不斉BV酸化により、3-置換シクロブタノンから光学活性γ-ラクトンが得られる[8]。有機過酸ではなく過酸化水素を用いる点でも実用性が高い。

MeMOP(siRNA医薬用アミダイト)

ヌクレオシドのBV酸化により4′-oxoヌクレオシドを調製し、siRNA創薬プラットフォームGalXCの鍵アミダイトであるMeMOPを大スケール製造した例が2025年に報告された[14]。経済性と操作上の安全性を改善したプロセスとして設計され、複数の臨床試験向け供給を支えた。BV酸化がプロセス化学の現場で通用することを示す実例である。

ε-カプロラクトン(工業プロセスと触媒化)

シクロヘキサノンの過酢酸酸化によるε-カプロラクトン製造は、ポリエステル原料を支える古典的な工業プロセスである。これを過酸フリー化する試みが続いており、骨格にSnを導入したβゼオライト(Sn-Beta)は過酸化水素を酸化剤としながら不飽和ケトンでもラクトン選択率98%以上を与える[10]。ケトンのカルボニル基を直接活性化するため、共存するC=C二重結合をエポキシ化しないことが選択性の起源である。さらにFe2O3を触媒とする電解酸化では、水を酸素源としてシクロヘキサノンのBV酸化がほぼ完全な選択性で進行する[11]

実験手順

標準的な実施例:mCPBAによる環状ケトンのラクトン化[18][20][26][27]
  1. ケトンをジクロロメタンに溶かす(0.1〜0.5 M程度)。
  2. 緩衝剤として炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、またはリン酸水素二ナトリウムを、mCPBAに対し過剰量(2〜3当量)加えて懸濁させる。
  3. 氷冷(0〜5 ℃)下、mCPBAを固体のまま数回に分けて、あるいはジクロロメタン溶液として滴下する。市販mCPBAは安定化のため水とm-クロロ安息香酸を含み純度70〜77%程度であるため、当量は含量表示に基づいて計算する(通常1.1〜1.5当量)。
  4. 室温まで昇温し、TLCまたはGCで追跡する。基質により数時間〜終夜。
  5. チオ硫酸ナトリウムまたは亜硫酸ナトリウム水溶液を加えて残存過酸を失活させ、過酸化物試験紙で消失を確認する。
  6. 飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄してm-クロロ安息香酸を除去し、乾燥・濃縮後にシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製する。
変法A:緩衝条件でのスケールアップ[13]

酸に弱い基質・生成物を扱う場合は、リン酸水素二ナトリウムを共存させたmCPBA条件が有効である。Psammaplysin A合成では、この条件でスピロ環状ケトンの環拡大がほぼ定量的に進行し、6 gスケールでも収率が維持された。酸感受性の多環系や、生成ラクトンが開環しやすい基質にはこちらを選ぶ。

変法B:過酸を使わない触媒系[10][21]

過酸の取扱いを避けたい場合は、過酸化水素を酸化剤とするLewis酸触媒系を検討する。均一系では親油性のリチウム/カルシウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラートが、不均一系ではSn-Betaゼオライトが用いられる。アルケンが共存する基質、および過酸の安全性がボトルネックになる大スケールにはこちらが適する。

実験のコツ・テクニック

  • 緩衝は必須と考える: mCPBA由来のm-クロロ安息香酸が、酸に弱い基質や生成ラクトンを分解する。塩基性塩を過剰に共存させておくだけで再現性が大きく変わる。緩衝を省いて収率が出ない場合、まずここを疑う。
  • mCPBAの当量は「純度」から逆算する: 市販品は70〜77%が標準で、残りはm-クロロ安息香酸(約10%)と水である。瓶の表示値を無視して質量で計算すると、実効当量が2割以上不足する。ロットが古い場合は滴定で活性酸素量を確認するのが確実である。
  • 滴下は「酸化剤を基質へ」: 氷冷した基質溶液へmCPBAを少量ずつ加える。逆順にすると局所的に酸化剤過剰となり、過剰酸化やエポキシ化の副生が増える。
  • アルケンが共存する基質では順序を設計する: 過酸は孤立オレフィンを速やかにエポキシ化する。保護するか、Sn-Betaのようにケトンを直接活性化する触媒に切り替える。α,β-不飽和ケトンの二重結合は電子不足のため比較的酸化を受けにくい。
  • 後処理での過酸失活を省略しない: 残存過酸は濃縮時の発熱・分解の原因になる。チオ硫酸ナトリウムまたは亜硫酸ナトリウムで還元し、過酸化物試験紙で陰性を確認してから濃縮する。
  • 反応が止まったらより強い過酸かLewis酸活性化を: トリフルオロ過酢酸(無水トリフルオロ酢酸と過酸化水素から調製)や、BF3·OEt2による基質活性化が有効である。ただしいずれも過剰酸化と基質分解のリスクが上がる。
  • 位置選択性を表だけで決めない: 環歪みや配座固定のある基質では転位能の順序が入れ替わる。予想外の異性体が出たときはCriegee中間体の配座を検討する。
  • ⚠ mCPBAの安全性。 有機過酸化物に分類され、皮膚腐食性、重篤な眼損傷性、皮膚感作性、水生環境有害性をもつ。加熱により火災のおそれがあり、乾燥すると爆発性が増すため市販品はあえて含水状態で供給されている。冷蔵保存し、可燃物・還元剤とは隔離する。乾燥させない・大量にまとめて秤量しないのが原則である。
  • ⚠ 大スケールでは過酸の熱安定性を評価する。 短鎖過酸ほど危険性が高い。中鎖過酸(ペルデカン酸など)への置換、in situ生成、あるいは触媒/過酸化水素系への切替が工業的な選択肢として検討されている[23]。DSC等による工程安全評価を前提としたい。

参考文献

【原著】
  1. Baeyer, A.; Villiger, V. Ber. Dtsch. Chem. Ges. 1899, 32, 3625–3633. DOI: https://doi.org/10.1002/cber.189903203151 (カロ酸による環状ケトンのラクトン化。本反応の第一報)
  2. Baeyer, A.; Villiger, V. Ber. Dtsch. Chem. Ges. 1900, 33, 858–864. DOI: https://doi.org/10.1002/cber.190003301153 (続報。基質範囲の拡張)
  3. Criegee, R. Justus Liebigs Ann. Chem. 1948, 560, 127–135. DOI: https://doi.org/10.1002/jlac.19485600106 (四面体中間体=Criegee中間体の提唱)
  4. Doering, W. von E.; Dorfman, E. J. Am. Chem. Soc. 1953, 75, 5595–5598. DOI: https://doi.org/10.1021/ja01118a035 (¹⁸O標識実験によりCriegee機構を確定)
  5. Dakin, H. D. Am. Chem. J. 1909, 42, 477. (Dakin反応の原著)
【機構・理論】
  1. Vil’, V. A.; dos Passos Gomes, G.; Bityukov, O. V.; Lyssenko, K. A.; Nikishin, G. I.; Alabugin, I. V.; Terent’ev, A. O. Angew. Chem. Int. Ed. 2018, 57, 3372–3376. DOI: https://doi.org/10.1002/anie.201712651 (立体電子効果を意図的に殺した設計でCriegee中間体を単離・構造決定)
  2. Yachnin, B. J.; Sprules, T.; McEvoy, M. B.; Lau, P. C. K.; Berghuis, A. M. J. Am. Chem. Soc. 2012, 134, 7788–7795. DOI: https://doi.org/10.1021/ja211876p (CHMO–基質複合体の結晶構造。基質がCriegee型配座に固定されている)
  3. Li, G.; Garcia-Borràs, M.; Fürst, M. J. L. J.; Ilie, A.; Fraaije, M. W.; Houk, K. N.; Reetz, M. T. J. Am. Chem. Soc. 2018, 140, 10464–10472. DOI: https://doi.org/10.1021/jacs.8b04742 (指向性進化により従来の電子効果に基づく転位傾向を上書きできることを実証)
  4. Lawlor, M. D.; Lee, T. W.; Danheiser, R. L. J. Org. Chem. 2000, 65, 4375. DOI: https://doi.org/10.1021/jo000227c (転位傾向と立体保持の実例)
  5. Hassner, A.; Pinnick, H. W.; Ansell, J. M. J. Org. Chem. 1978, 43, 1774. DOI: https://doi.org/10.1021/jo00403a032 (転位傾向の実例)
【変法・改良法】
  1. Xu, S.; Wang, Z.; Zhang, X.; Zhang, X.; Ding, K. Angew. Chem. Int. Ed. 2008, 47, 2840–2843. DOI: https://doi.org/10.1002/anie.200705932 (キラルリン酸を用いる有機触媒的不斉BV酸化)
  2. Zhang, C.-S.; Shao, Y.-P.; Zhang, F.-M.; Han, X.; Zhang, X.-M.; Zhang, K.; Tu, Y.-Q. Chem. Sci. 2022, 13, 8429. DOI: https://doi.org/10.1039/D2SC02079C (Cu(II)/SPDO触媒による速度論的分割とeupomatilones全合成)
  3. Corma, A.; Nemeth, L. T.; Renz, M.; Valencia, S. Nature 2001, 412, 423–425. DOI: https://doi.org/10.1038/35086546 (Sn-Betaゼオライト。H2O2使用下でも不飽和ケトンのC=Cを酸化しない)
  4. Mu, Y.; Chen, B.; Zhang, H.; Fei, M.; Liu, T.; Mehta, N.; Wang, D. Z.; Miller, A. J. M.; Diaconescu, P. L.; Wang, D. J. Am. Chem. Soc. 2024, 146, 13438–13444. DOI: https://doi.org/10.1021/jacs.4c02601 (Fe2O3触媒による電解BV酸化。水が酸素源)
  5. RSC Adv. 2019, 9, 30012. DOI: https://doi.org/10.1039/C9RA06087A (中鎖過酸の熱安定性。工業酸化における安全な代替の検討)
【応用例】
  1. Kishi, Y.; Fukuyama, T.; Aratani, M.; Nakatsubo, F.; Goto, T.; Inoue, S.; Tanino, H.; Sugiura, S.; Kakoi, H. J. Am. Chem. Soc. 1972, 94, 9219. DOI: https://doi.org/10.1021/ja00781a039 (テトロドトキシン全合成での適用)
  2. Paciorek, J.; Höfler, D.; Sokol, K. R.; Wurst, K.; Magauer, T. J. Am. Chem. Soc. 2022, 144, 19704–19708. DOI: https://doi.org/10.1021/jacs.2c10010 (Psammaplysin A初の全合成。6 gスケールでの環拡大)
  3. Rizzo, J. R.; Begari, P. K.; Kalita, D.; Gu, J.; Frank, S. A.; Fahmi, N. E.; Khatri, H. R. Org. Process Res. Dev. 2025, 29, 1125–1135. DOI: https://doi.org/10.1021/acs.oprd.5c00021 (ヌクレオシドBV酸化によるMeMOPアミダイトの大スケール製造)
【総説】
  1. Krow, G. R. Tetrahedron 1981, 37, 2697. DOI: https://doi.org/10.1016/S0040-4020(01)92337-3 (基質範囲と位置選択性の体系的整理)
  2. Renz, M.; Meunier, B. Eur. J. Org. Chem. 1999, 1999, 737–750.  (発見100年を機とした総括)
  3. ten Brink, G.-J.; Arends, I. W. C. E.; Sheldon, R. A. Chem. Rev. 2004, 104, 4105–4124. DOI: https://doi.org/10.1021/cr030011l (グリーン化に向けた展開の総説)
  4. Uyanik, M.; Ishihara, K. ACS Catal. 2013, 3, 513–520. DOI: https://doi.org/10.1021/cs300821u (過酸化水素を用いるBV酸化のパースペクティブ。日本発の触媒系を含む)
  5. Fürst, M. J. L. J.; Gran-Scheuch, A.; Aalbers, F. S.; Fraaije, M. W. ACS Catal. 2019, 9, 11207–11241. DOI: https://doi.org/10.1021/acscatal.9b03396 (BVMOの機構・構造・酵素工学を網羅した総説)
  6. Fatima, S.; Zahoor, A. F.; Khan, S. G.; Naqvi, S. A. R.; Hussain, S. M.; Nazeer, U.; Mansha, A.; Ahmad, H.; Chaudhry, A. R.; Irfan, A. RSC Adv. 2024, 14, 23423–23458. DOI: https://doi.org/10.1039/D4RA03914A (2018年以降の天然物合成への適用例を網羅)
【書籍】
  1. Hassall, C. H. “The Baeyer-Villiger Oxidation of Aldehydes and Ketones” in Organic Reactions, Vol. 9, Wiley, 1957, p. 73. ISBN 978-0-471-00726-5.
  2. Krow, G. R. in Comprehensive Organic Synthesis (Eds.: Trost, B. M.; Fleming, I.), Vol. 7, Pergamon Press, Oxford, 1991, pp. 671–688.
  3. Krow, G. R. “The Baeyer-Villiger Oxidation of Ketones and Aldehydes” in Organic Reactions, Vol. 43, Wiley, 1993, p. 251. ISBN 978-0-471-58479-7. DOI: https://doi.org/10.1002/0471264180.or043.03

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Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

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博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

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