[スポンサーリンク]

化学者のつぶやき

産業紙閲覧のすゝめ

[スポンサーリンク]

大学で、大学院で、日夜化学の研究に励んでいる皆さん。大学の付属図書館に行ったらまず何に目を通しますか?

Nature, Science, Journal of the American Chemical Society, Angewandte Chemie International Edition, その他自分の研究に関する雑誌類・・・といったところではないでしょうか?

かくいう私も、自分の研究そっちのけで(オイ!)、毎日毎日飽きもせず印刷されたGraphical abstractと睨めっこしていました。最近は論文の電子媒体化が進み、印刷したての紙面から漂うインキの独特の匂いを嗅ぐ機会が減りさみしい限りです。

そんな個人的な話はさておき、大学の時に目を通しておけばよかったなあと思うものがあります。それは、

 

産業紙 [1] です。

 

産業紙とは何か?簡単に言うと、日本国内のメーカーがこんな新製品を出しましたよ、とか、今○○市場の景況はこんな感じですよ、とか、こんな技術が開発されましたよ、とか書いてある新聞の一種です。さて、なぜ産業紙に目を通しておけばよかったと思うかというと、

 

☆ 自分が今必死に取り組んでいる研究が世の中で何の役に立つか(何の役に立ちそうか)。自分が今命懸けで取り組んでいる研究が世間でどう位置付けられるか、が俯瞰できる(可能性がある)からです。

 

研究は、時につらいものです。特に、研究成果がでないとき、自分はなぜこんなに頑張っているのに成果がでないのか?そもそも、今一生懸命やっている研究が世の中で一体何の役に立つというのか?という疑問にブチ当たることがあります。また、多かれ少なかれ、今後アカデミックポストを狙うにしてもメーカーに就職するにしても、今行っている研究が世の中で何の役に立つかを論文の発表会や就職試験の際などに説明しなければならない場面が出てくるでしょう(時には家族に説明する必要もあるでしょう)。そんなときに産業紙に目を通せば、

 

○ 自身が行なっている研究が世の中でこんなことに役に立つ可能性があるのではないか?
○ 自分の研究が、このメーカーのこんなところに使われている(可能性がある)!
○ 今、世の中にはこんな研究課題があるようだ。ひょっとしたら、現在行っている研究が課題解決に役に立つのでは?

 

という思考(妄想?)に至ることができます。また、世の中には自分の知らない色々なメーカーや研究所があり、卑近な言い方ですがお金儲けには様々な方法があるということも、あわせて何となく学ぶことができます。就職活動にも役立つことでしょう。自分と社会の接点を見つめ直す作業は、研究意欲を高め、新しい人生観をも醸成するのではないかと思います。

 

少し古いですが、産業紙の記事の例を挙げてみます。

不二製作所と東大発VB、弾性持たせた微細研磨材を噴射し鏡面仕上げできる技術開発

ポリロタキサンを産業へ応用したという内容です。原田明教授やJ. Fraser Stoddart教授らが研究してきた超分子化合物の一種が、例えばこのような形で産業へ応用されています。胸が熱くなってきませんか?

240px-Rotaxane.jpg

Fig.1 ロタキサンの分子構造の模式図

[1] 産業紙の例として、次が挙げられます。日本の新聞一覧ー業界紙 (Wikipedia)

Avatar photo

Route YOSAKU

投稿者の記事一覧

某企業で研究を行い、化学を生業としています。注目している分野は、光化学、ナノテクノロジー、触媒化学など。趣味は、読書、産業遺産探訪、サイクリングなど。

関連記事

  1. 窒素を挿入してペリレンビスイミドを曲げる〜曲面π共役分子の新設計…
  2. ベンゼン環をつないで 8 員環をつくる! 【夢の三次元ナノカーボ…
  3. 2-プロパノールに潜む過酸化物生成の危険
  4. Whitesides教授が語る「成果を伝えるための研究論文執筆法…
  5. 研究室での英語【Part1】
  6. C–H活性化反応ーChemical Times特集より
  7. 薬学部6年制の現状と未来
  8. 炭素繊維は鉄とアルミに勝るか? 番外編 ~NEDOの成果について…

注目情報

ピックアップ記事

  1. 日本薬学会第139年会 付設展示会ケムステキャンペーン
  2. 有機アジド(4)ー芳香族アジド化合物の合成
  3. 相間移動触媒 Phase-Transfer Catalyst (PTC)
  4. 鬼は大学のどこにいるの?
  5. ポンコツ博士の海外奮闘録② 〜博士,鉄パイプを切断す〜
  6. 小林 修 Shu Kobayashi
  7. 小山 靖人 Yasuhito Koyama
  8. 直径100万分の5ミリ極小カプセル 東大教授ら開発
  9. Reaxys体験レポート:ログイン~物質検索編
  10. 緑膿菌の代謝産物をヒトの薬剤に

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2013年4月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930  

注目情報

最新記事

水分はどこにあるのか【プロセス化学者のつぶやき】

前回まで1. 設定温度と系内の実温度のお話2. 温度値をどう判断するか3. 反応操作をし…

「MI×データ科学」コース 〜LLM・自動実験・計算・画像とベイズ最適化ハンズオン〜

1 開講期間2026年5月26日(火)、29日(金) 計2日間2 コースのねらい、特色近…

材料の数理モデリング – マルチスケール材料シミュレーション –

材料の数理モデリング概要材料科学分野におけるシミュレーションを「マルチスケール」で理解するた…

第59回天然物化学談話会@宮崎(7/8~10)

ごあいさつ天然物化学談話会は、全国の天然物化学および有機合成化学を研究する大学生…

トッド・ハイスター Todd K. Hyster

トッド・カート・ハイスター(Todd Kurt Hyster、1985年10月10日–)はアメリカ出…

“最難関アリル化”を劇的に加速する固定化触媒の開発

第 703回のスポットライトリサーチは、横浜国立大学大学院 理工学府 博士課程前期で…

「ニューモダリティと有機合成化学」 第5回公開講演会

従来の低分子、抗体だけでなく、核酸、ペプチド、あるいはその複合体(例えばADC(抗体薬物複合体))、…

溶融する半導体配位高分子の開発に成功!~MOFの成形加工性の向上に期待~

第702回のスポットライトリサーチは、関西学院大学理学部(田中研究室)にて助教をされていた秋吉亮平 …

ミン・ユー・ガイ Ming-Yu Ngai

魏明宇(Ming-Yu Ngai、1981年X月XX日–)は米国の有機化学者である。米国パデュー大学…

第55回複素環化学討論会

複素環化学討論会は、「複素環の合成、反応、構造および物性」をテーマとして、化学・薬学・農芸化学など幅…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP