[スポンサーリンク]

一般的な話題

有機合成化学協会誌2017年9月号:キラルケイ素・触媒反応・生体模倣反応・色素・開殻π造形

[スポンサーリンク]

有機化学合成協会が発行する有機合成化学協会誌。今月9月号が本日9月7日にオンライン公開になりました。

オンライン化が早くなったり、Review de Debutがオープンアクセスになったりと、有機合成化学協会誌がより読者フレンドリーになってから早一ヶ月。

さて、9月号も様々な分野から有機合成化学に関連する話題が紹介されています。今月号のキーワードは、

「キラルケイ素・触媒反応・生体模倣反応・色素・開殻π造形」

です。今回も、会員の方ならばそれぞれの画像をクリックすればJ-STAGEを通してすべてを閲覧することが可能です。それではご覧ください!

キラルケイ素分子の不斉合成とその立体選択的な変換


九州大学先導物質化学研究所 井川和宣先生

2012年度有機合成化学奨励賞受賞論文です。

キラルケイ素分子を不斉合成し、それをジアステレオ選択的に変換することで多様な官能基化キラルケイ素分子に誘導することに成功しました。総合論文では、本研究の発見と展開について詳細に紹介されています。近年、キラルケイ素分子の不斉合成法が盛んに開発されていますが、著者の成果はその先駆的な例といえます。生理活性を示すキラルケイ素分子合成にも成功しており、今後の展開も期待できます。

本論文は、キラルケイ素分子の不斉合成法の開発の難しさや魅力が大いに示され、大変興味深いものとなっています。

ケムステでも本総合論文とは別の研究ですが、井川先生の研究を紹介しています「ヘテロ原子を組み込んだ歪シクロアルキン簡便合成法の開発」。併せてお読みいただければと思います。

電子密度・分子軌道制御に着目した反応中間体の設計と触媒反応への展開


東京理科大学理学部 遠藤恆平先生:

本総合論文では、協同効果による求電子活性化を基本戦略とした数々の成果が紹介されています。たとえば、ジボリルアルカンを用いるクロスカップリング反応は著者の成果が発端となり、世界中で大きな広がりを見せました。著者の確固たる研究哲学が随所に散りばめられ、読み応えのある論文となっています。

生体模倣型オスミウム錯体を触媒とするアルケンの酸化的変換反応


大阪大学大学院工学研究科生命先端工学専攻 杉本秀樹先生・伊東 忍先生:
生体内酸化酵素の活性中心を模倣することでオリジナルなオスミウム錯体を合成し、そのアルケン酸化的変換反応での触媒活性などをまとめたもの。錯体のキャラクタリゼーション、触媒サイクルの解明まで緻密に行っており、今後のさらなる新反応開発への重要な知見を築いています。

チオフェン含有有機Donor–π–Acceptor色素の系統的合成と構造–機能相関解明


東京工業大学科学技術創成研究院 布施新一郎先生
2016年有機合成化学奨励賞受賞論文です。本論文では、有機Donor–π–Acceptor (D–π–A)色素の系統的迅速合成法の開発、得られた化合物群の色素増感太陽電池および有機薄膜太陽電池の材料としての評価、ならびにアルツハイマー病治療薬候補としての評価についてまとめられています。

ケムステでも布施先生の研究を紹介しています。「フローリアクターでペプチド連結法を革新する」「副反応を起こしやすいアミノ酸を迅速かつクリーンに連結する」。別途お読みいただければと思います。

ニトロニルニトロキシドラジカルを基盤とした開殻π造形

大阪大学大学院基礎工学研究科 鈴木修一先生大阪市立大学大学院理学研究科 岡田惠次先生

ニトロニルニトロキシド(NN)は有機ラジカルとして研究されていますが、その合成や反応は50年前からほとんど変更されていません。著者らはラジカルアニオン種(NN)を経由して、新しい開殻π電子系への合成アプローチである「開殻π造形法」を確立しました。本論文で、数多くの開殻π電子系分子の合成とその磁気的性質が紹介されております。

Rebut de Debut: アニオン–π触媒

先月号からオープンアクセスとなったRebut de Debutのコーナー。9月号の著者は、名古屋大学大学院工学研究科大井研究室荒巻吉孝助教です。

荒巻助教は、東京大学野崎研究室で博士を取得後、京都大学村田研究室(若宮淳志准教授)で博士研究員をされたのち、2016年4月より名古屋大学大井研究室で助教をされています。

本総説では、スイス・ジュネーブ大学のStefan Matile研で精力的に研究されているアニオン–π触媒について詳細に解説されています。ぜひご一読ください。

(ケムステの海外留学記の中にもアニオン–π触媒の研究話があります。合わせてどうぞ。)

荒巻吉孝助教

巻頭言:セレン原子発見から200年、自分を振り返る

こちらも先月号からオープンアクセス。今月号は岐阜大学工学部の村井利昭教授による巻頭言です。

巧みなギャグを炸裂させつつ、魅惑的な化学の世界に誘ってくれるブログ「村井君のブログ」で、もはや有機化学界で知らない人はいない村井教授ですが、今回の巻頭言ではご自身とセレンのつながりを熱く語ってくださっています。

今月号も盛りだくさんですね!ぜひお楽しみください!

有機合成化学協会誌 紹介記事シリーズ

Avatar photo

めぐ

投稿者の記事一覧

博士(理学)。大学教員。娘の育児に奮闘しつつも、分子の世界に思いを馳せる日々。

関連記事

  1. スケールアップで失敗しないために 反応前の注意点
  2. ノーベル賞への近道?ー研究室におけるナレッジマネジメントー
  3. X 線回折の基礎知識【原理 · 基礎知識編】
  4. 第54回複素環化学討論会 @ 東京大学
  5. 自宅で抽出実験も?自宅で使える理化学ガラス「リカシツ」
  6. e.e., or not e.e.:
  7. 化学者のためのエレクトロニクス講座~電解パラジウムめっき編~
  8. 日本発化学ジャーナルの行く末は?

注目情報

ピックアップ記事

  1. 製品開発職を検討する上でおさえたい3つのポイント
  2. 近年の量子ドットディスプレイ業界の動向
  3. フラーレン:発見から30年
  4. マーク・レビン Mark D. Levin
  5. 「進化分子工学によってウイルス起源を再現する」ETH Zurichより
  6. SNS予想で盛り上がれ!2020年ノーベル化学賞は誰の手に?
  7. 化学系企業の採用活動 ~現場の研究員視点で見ると~
  8. 辻・ウィルキンソン 脱カルボニル化反応 Tsuji-Wilkinson Decarbonylation
  9. ガーナーアルデヒド Garner’s Aldehyde
  10. 海外の教授にメールを送る-使える英語表現と文例

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2017年9月
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
252627282930  

注目情報

最新記事

第12回 野依フォーラム若手育成塾

野依フォーラム若手育成塾について野依フォーラム若手育成塾では、国際企業に通用するリーダー型研究者…

その酸素、“本当にその場所”の値ですか? ニードル式酸素センサーを使ってみた!

突然ですが、「培養の再現性がなんか悪い」「同じ条件のはずなのに結果がズレる」といった経験はあ…

有機合成化学協会誌2026年4月号:activatable型分子プローブ・DMAPO触媒・カルビノールアニオン・アミコラマイシンの全合成・構造指向スクリーニング

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2026年4月号がオンラインで公開されています。…

第37回仙台シンポジウム参加登録開始のご案内

これまで「万有仙台シンポジウム」は、MSD生命科学財団の助成を受けて開催されてまいりましたが、同財団…

デイビッド・サーラ David Sarlah

デイビッド・サーラ(David Sarlah、1983年X月XX日–)は米国の有機化学者である。米国…

第13回慶應有機化学若手シンポジウム

概要主催:慶應有機化学若手シンポジウム実行委員会共催:慶應義塾大学理工学部・理工学研究科…

ラジカル機構で一挙に環化!光励起PdによるPAHの合成

可視光励起パラジウムを用いたアリールハライドと末端アルキンのラジカルカスケード環化を報告した。得られ…

【産総研・触媒化学研究部門】新卒・既卒採用情報

触媒部門では、「個の力」でもある触媒化学を基盤としつつも、異分野に積極的に関わる…

励起状態での配位結合解離を利用して二重CPLを示す分子を開発!

第701回のスポットライトリサーチは、名古屋大学 学際統合物質科学研究機構(IRCCS, 山口茂弘研…

化学・工学・情報系研究者も応募可能! 上原財団の研究助成が40周年で進化

上原記念生命科学財団の助成金をご存知でしょうか。私も2014年に本助成をいただき、その後、研究室を主…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP